※こちらのお話しは個人的な妄想を題材にした、妄想恋愛小説です。ご理解頂ける方のみお進み下さい。






時は遡り、二人が出逢ってから時は進み、初等科つまりは小学生となった頃からの話である

同じ様な階級の裕福な家庭の子供が通う学校など限られており
幼稚園より数倍に増えた生徒の中にいても、潤の可愛さは群を抜いていた


「ふぇ……ぐす……うぅ」

控え目で大人しい性格故に、少しおませな女子生徒からの覇権争いに巻き込まれ右に左にと連れ回され
挙げ句の果てには、それを面白くないと思う男子生徒にやっかみの対象になり揶揄われる
優しく穏やかに育った彼に訪れた、初めての試練でもあった


「お前ら、何してんだ!」

「……しょお…くん…?…ふぇん」


そこに王子様の如く現れる二つ年上の彼の存在に、今まで周りを囲んでいた同級生たちも驚き散り散りに離れていく
残されたのは涙目をキラキラさせて上目遣いに見る潤と、唇を尖らせ不満げな翔の二人


「…大丈夫か?」

「…うん、……ありがと…しょおくん…(*'▽'*)」


自分の名前を呼ばれ 可愛い笑顔付の『ありがとう』と言われたことに、さっきまで尖っていた唇は弧を描き嬉しそうに頷く


「カズくんだっけ?アイツはどうしたんだ?」

「カズくんは…違うクラス…」


初めて会ったパーティー以来、幾度となく同じ様な場所で顔を合わせていた二人だが、そこにはお互いを意識する気まずさがあった

しかし同じ年頃の二人は何となく一緒にいて、ぽつぽつ交わす会話の中でお互いの事を少しずつ知る
だから数少ない友だちの“カズくん”こと二宮和也の存在を翔も知っていた


「…そうか、なら…俺がお前を守ってやる。だから心配すんな…姫を守るのは俺の役目だ」

「しょおくん、ぼく…姫じゃないよ…?」

「いいんだよ、そこは…気にすんな」


自分の言葉に満足げに頷いて笑顔で頭を撫でる翔を見上げ、『まあいいか』とあまり気にもせずに助けてくれたヒーローにキラキラの笑顔を向ける潤
二人が交わす視線に何かが生まれそうなその時…


「しょ~ちゃん!」
「…翔…くん、」

「雅紀に、智くん」


翔の背後から現れた二人に潤の視線が移る
一人は元気の塊ようなニコニコ笑う男の子、そしてもう一人は…ん?何だか眠そうだ


「か・わ・い・いー!!ねえねえ君だれ?翔ちゃんのお友だち?ボクは雅紀、よろしくね」
「雅紀!潤が壊れんだろう、その手を離せ!」


ガシッと握られた手をブンブンと振り回している雅紀、その反動でくらくら揺れる体に目が回りそうになる潤の手を翔が振り解く


「大丈夫か…?」

「…うん、(@_@)」


粗雑でちょっと乱暴でガキ大将な翔が、誰にも見せたことの無い優しい笑顔に驚いたのは二人の方で、何かを察した二人は顔を見合わせ頷いた


「潤ちゃんだっけ?これからは僕たちとも仲良くしよう、ね?よろしく!」
「そうだぞおチビ、その内においらがお前の可愛い絵を描いてやる、だからよろしくな」

「ちょっと待った!潤は俺の姫なの、だから俺だけでいいんだ!」

「ちっちぇ心だな」
「へっ?」
「そんなんじゃ嫌われるよ?」
「はあ?」


やいのやいの騒ぐ三人を、あんぐりと口を開けて見つめていた
けれども暫くするとクスクスと笑い始める、このお兄ちゃんたちはボクに笑顔をくれる
何でだろう、 胸の奥がぽかぽかと温かくなるのを覚えたのだった


こうして一人また一人と、潤の周りには出会うべくして出会った仲間たちが揃っていった









…潤が零した涙の跡に小さな花が咲いていた