※こちらのお話しは個人的な妄想を題材にした、恋愛妄想小説です。ご理解頂ける方のみお進み下さい。






「…………はぁ…。」


仕事に身が入らずに溜め息ばかりが口をついて出るのは、全てはあの男が原因だ
自分で会社を立ち上げ、一回りも二回りも大きくなって目の前に現れたのだ

それに比べて自分はどうなのかと考えてしまう
自分なりの信念を持って始めた研究も、思うような成果が得られていない
前に進む事も後戻りする事も出来ないまま、時間だけが無駄に過ぎている


自分の立場と翔との違いに、実験台に上半身を投げ出し手に持つ試験管を眺めながら、ふと本音が零れる落ちる


「… いい男になっちゃってさ…ズルいよ」


近づくことも、話し掛けることも戸惑うほど、眩しく遠い存在になってしまった翔に対して、溜め息と共に文句の一つも言いたくなる


「………クスクス………クスクス」

「………ん?」

「ははっ…相変わらず独り言がデカいよ」

「翔くん…!?」


研究室の扉に凭れ腕を組みスーツを着た翔が立っていて、突然現れた翔に対して少し不安になる


「何で…ここに…?」

「松本の親父さんと、お姉さんに挨拶に。で、お前が研究室に居るって聞いたから……へぇ…ここが潤の城か…」


ゆっくりとした歩調で部屋を見回し、潤の前で足を止める


「べ、別に…大したことしてないし…」

「そんな事はないだろう、…それにしても、」

「……ん?」

「メガネと白衣…って、……エロいな」


頭から足下まで流れるように視線を動かし、目を細めて言葉を口にする


「なっ///!」


頭の中ではあの日の事が鮮明に甦っていた

未だ消化仕切れない感情が顔を出し胸を締めつける

潤の気持ちなどお構いなしに、意味ありげに片方の口角を上げて微笑む翔を思わず睨んでいた



「…そんなに睨むなよ」

「何のために来たの?…わざわざそんな事、」

「話がある。お前にとって、とても…大事な話だ」

「………」


今までとは違い自分を見つめる真剣な眼差しに、言葉は愚か身動きさえ出来ないでいた