*こちらのお話しは個人的な妄想を題材にした、恋愛妄想小説です。ご理解頂ける方のみお進み下さい。







「だから…会社を…?」



うん、…会社は弟に任せると言ったのを覚えてるか?もうあの頃には漠然と考えていたんだ

何でも無いように話すこの人は、一体どれだけ先のことを見ていたのだろうか



「……ただ」


「ただ…?」



大学に進んでその後に起業するとしても、日本ではなく海外で…それは潤と離れる事を意味する



「それで良かった。なるべく早く日本に戻って、潤の成長と幸せを傍で見ていられたら…そう思っていたけど…」



…無理だった。

当たり前だよな?だって好きなんだから

まだ先の道も整わない自分の想いを、無理に押し付ける事なんて出来ない



苦しくなるくらい切ない顔で見つめられて、また涙が溢れてくる



「…で、日本を離れる前に俺は決めた。いつ戻れるかも分からない、お前の傍に立つことさえ出来ないかも知れない…ならばせめて…」



…記憶の中だけでも俺を忘れないで欲しい

自信なんて無かったよ、離れている間にお互いの環境も変わるから

でも俺は忘れなかった、だけどその選択が潤を苦しめてたんだな



「ごめんな…全ては俺の我が儘だ」


「…ううん」



…良かった。

一発や二発、殴られるのは覚悟してたんだ



「ありがとう潤…俺を忘れないでくれて」


「…翔…くん」



抱き締める腕の力が強くなり、肩口の口元から聞こえる声は少しだけ震えていた