37歳の春でした。
夏の新作を発表するため
素材の開発やデザイン
来て下さった方々へのお土産の手配まで
やる気に満ち溢れて
忙しくしていた頃
乳がんが見つかりました。
当時、周囲のがん患者たちは
ほとんどが亡くなっていました。
恐怖で
体が震えたのを覚えています。
目の前が真っ白になりました。
幸い
早期発見だったので
入院して治療を続ければ
助かると言われました。
よかった。
しばらく治療に専念しよう。
とは思いませんでした。
紫藤尚世は
担当医にこう言い放つのです。
紫藤) あの、
来月の新作発表会に
間に合いますか？
担当医) え
たぶん無理ですよ。
摘出手術しない限りは
長期入院になると思いますよ。
紫藤) え
とっちゃえば
間に合いますか？
担当医) 本気でおっしゃってるんですか？
紫藤) もちろん。
新作発表会には
30社以上の取材の予約が入っていました。
たくさんの来客予定もありました。
御礼の言葉とお土産も準備してました。
やらないわけにはいかない。
延期なんかできない。
10日で退院させてもらう約束を
こじつけて
夏の新作発表会のために
摘出手術を選びました。
もちろん怖かったし
目をつぶって寝てしまったら
もう明日が来ないんじゃないかと思って
眠れない日もあった。
でも
ここで終わる訳にはいかない。
まだまだやりたいことがたくさんある！
紫藤尚世にとって
作品たちは
自分の子どもと一緒なんです。
命懸けで
生み出しているんです。
手術は無事に成功し、
なんと
新作発表会は
予定通り
決行されるのでした。
つづく
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