コメ異変 | 詩はどこにあるか

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 コメの高騰が問題になり、政府が備蓄米を売り出すことになった。最初は入札。しかし、小売値が下がらないので、随意契約に。しかし、随意契約にしたって、小売値は下がらないだろう。随意契約で政府が売るのは古古米である。それを買う人は少ない。多くの人は昨年産米、さらに秋になれば出回る新米を買うだろう。なぜか。古古米はまずいからだ。
 コメの異変に私が気づいたのは、実は、昨年のいまごろ。生協で購入している福岡県産米がまずいのである。どうしてだろう。コメを見てみたら、白い部分がたくさんある。これは、一昨年が暑すぎて、コメの品質が落ちたのである。ふつうは透き通った灰色っぽい色をしている。しかし、天候のせいで、品質が落ちると、白い部分(白濁した部分)が増える。(私は農家の生まれで、家で田植え、刈り取り、脱穀、精米までやっていたから、精米を終えたコメがコメがどんなものか知っている。)それで、ためしに北海道産、岩手産のものを買ってみたが、やっぱり白濁した部分が多い。温暖化の影響で、もうおいしいコメはできないのである。
 で、私が異変に気づいた後、コメ不足が問題になり始めた。生協も「注文制限」を設けだした。それは秋に新米が登場してからもつづき、それがどんどん加速して、いまは「抽選販売」になっている。これは、今年の秋の収穫が始まって、新米が出回ってもつづくだろう。(あとで書くが、これは「うまいコメ」はだれかが買い占めるからである。「うまいコメ」を買い占めた後の、残りが一般小売向けに出回るのだが、「うまいコメ」を買い占めた分だけ量が少ないから、値上がりするのだ。)
 コメの品質低下は、私よりも、農家、あるいは農協、さらには流通業者、小売店の方が詳しいだろう。原因や、これからの傾向についても、もっとはっきりした見通しをもっているだろう。もちろん官僚も知っているだろうし、政府も言わないが知っているはずである。これからも、コメはまずくなる。コメをつくっている農家も知っていると思う。
 そして、問題は、ここから。
 まずいコメは売れない、というか、うまいコメは金のある人間(企業)が買い占める。実際に、もう、収穫を見越して「買い占め」が起きている。「うまいコメを買い占める」という言い方をしていないが、ニュースでは、すでにコメの産地での「青田買い」が始まっている。今だって、コメ不足が実際に起きているわけではないだろう。絶対的な量は足りているであろう。うまいコメを少数の人間が買い占めているために、売れ残った分が小売店(スーパーなど)に出回っている。いつもは小売店にもまわってくるはずのコメが制限されているために、結果的にコメが不足しているように見えるだけなのだ。それは操作された「コメ不足」なのである。これは、農家も知っているだろう。「うまいコメ」をつくって、「うまいコメ」を買ってくれる人に高値で優先的に売る。「青田買い」が成立するのは、それを「売る」農家がいるということでもある。
 こうした「操作」を解消しない限り、コメ不足はつづく。だれだってまずい古古米を食べたくはない。少しでもうまいコメを食べたい。だから、年金生活をしている私でも、福岡県産のコメを北海道産、岩手産のコメに変えたのだ。いまは、生協では同じ値段みたいだが、去年の夏、秋の時点では、北日本で栽培されたコメは5キロ換算で100円か200円ほど高かったと記憶している。一か月100円か200円の出費増なら、まあ、いいか、と思ったのである。しかし、「うまいコメ」の買い占めは、私の予想以上に進んでいるようで(つまりスーパーなどにならぶコメは予想以上に減っているようで、それが値上げを呼んでいる。生協の「抽選販売」にもつながっている。生協くらいの規模では、ふつうのコメさえ必要量を確保できない状態になっているのだ。流通中間業者がコメの流通を制御し、価格を操作し、大儲けをしているのである。
 もちろん古古米が店頭に並ぶことで、コメ全体の平均価格は下がる。しかし、うまいコメは、さらに高騰する。古古米がまずいとわかれば、うまいコメを求めるひとが増える。価格が分極化し、高いコメはさらに高くなる。まずいコメはさらにまずくなる。日本の労働者の収入が分極化し、どんどん低所得者が増えていったのと同じことが起きる。いったん高騰したコメは、これからも値下がりすることはない。少なくとも、いまのような政策がつづくかぎり下がらない。そして、きっと5キロ1万円というコメが店頭に並ぶときが来る。それは、そんなに遠いことではない。まずい古古米が、うまいコメの高騰に拍車をかけるのである。それはふつうのコメの価格を引き上げるのである。
 古古米は店頭価格が5キロ2000円かもしれない。しかし、絶対量が少ないから、だれでも買えるわけではないだろう。いまスーパーに並んでいるコメは、このままの値段が少しつづいたあと、再び上昇する。古古米はまずい、という評価が広がれば、あっと言う間に5000円になるだろう。選び抜かれたコメは1万円になるだろう。1万円でも売れることがわかれば、ふつうにスーパーで売られているコメも、それにあわせるようにしてじわじわ値上がりする。
 私の「予想」は外れるのが望ましいが、私は外れないのでは、とかなり心配している。
 岸田が退陣したとき、私は次の首相が小林と予測した。これは外れて石破になったが、その石破は不人気で参院選が心配されている。きっとまた首のすげ替えがあるだろう。石破の次がだれか知らないが、小林の声も聞かれる。私の「予想」は半分くらいは当たっているのかも。
 私は、身の回りの変化を手がかりに「予想」しているだけなので、まあ、外れて当たり前なのだが、「半分くらい当たる」ところが、ちょっと怖い。