南海南湖の2人会。2人で芸歴50年講談50席。

12日で、50席の講談を語る  in  ツギハギ荘。


旭堂南海の『藤十郎の恋』に感動・その2。お梶へのくどきが絶品だった。9月16日


旭堂南海の、藤十郎口説きの場面❗️


〈お茶屋で、藤十郎がお梶に久しぶりに会って〉

ごぶさたで。ごぶさたは意味が違ってね。20年以上前、手前が役者になりたての頃、20歳でそなたは16歳、宮川一の踊り手と言われたお梶と京一番色があると言われた手前と、どちらが色気がまさるか、祇園祭の宵宮で踊りを披露したことがありましたね。踊り終わって、すぐ帰るそなたの後ろ姿をじーっと見続けていた男がいました。それが、この藤十郎めにございます。(お梶の言葉:てんごう、ゆーてもうたら困ります。✴︎てんごう=ふざける)

情のうござる。

〈ここから、立て弁になり、盛り上げて〉

舞台の上で色気ある仕草をしてしまう役者のサガ、情けないものでござります。誠に想いを寄せている人がありながら、てんごう、と言われましては、とまどいます。いま40代半ばを過ぎて、あの時の想いをずっと胸に秘めたまま、墓場に行ってしまうと思うと・・。いま出会って、ごぶさたして、というたのは、我が想いを伝える機会がこれしかないと思ったので。そなたのことを忘れたことはありません。(てんごう、言わないで)

言い寄る女性がたくさんいるのに、想いを寄せているお方に見向きもされないのです。情けない。

〈お梶が振り向いて〉(そんなら、てんごう、やないのか)

都万太夫座を支えている藤十郎めでございます。恥を忍んで、お話しさせていただいたのが、すべてでございます。

(ほんなら、てんごう、やございまへんのやな)

【遠く離れた所で、にぎやかな宴会の声。目の前で、灯籠の油がチ・チ・チ、中腰になったお梶が灯籠の火を消して、真っ暗闇に!それが合図になって、藤十郎が近づいてくる。もう息がお梶の鼻っ先までやって来た】〜〜〜〜


〈宴席の中へ、藤十郎が戻って来て〉

酒じゃ酒じゃ、〈酒をグッと立て続けにあおって〉

安心をしておくれ。あと3日で幕が開くおさん茂兵衛のお芝居でございますが、人の女房に言いより、ともに丹波に逃れるという茂兵衛の心が腹に入りましてござりますよ。

【幕が開いた。超満員でございます。出て来た人が新しい藤十郎さまを見せていただきましたというので、人が人を呼ぶ。ライバルの江戸の役者は、藤十郎の人気に負けて江戸へ下った。

芝居10日目の朝、満杯のお客様、藤十郎がさあ舞台に出よかという時に】

(首つりだぁ、首つりだぁ・・誰や・・お茶屋の女房お梶殿でござる・・お梶がわざわざ芝居が始まる舞台の奥で首をつったか)

坂田藤十郎は、泰然自若としている。

(いやなことやな)(そうやな)

【一つの噂が都に出ている。藤十郎の迫真の丹波への道行きをする時の、人の女房を口説き落とすというあそこ、誰かで稽古したんやないか、ひょっとしてお梶殿やございまへんでしたやろか。】

〈藤十郎〉ハ、ハ、ハ、俺を誰やと思っている?

天下の坂田藤十郎やぞ。さぁ、行こか。

【舞台に出ようとする時、戸板に乗せられたお梶が、ツーっと楽屋口から出されて行く時に、朝の光が中に飛び込んでくると、お梶の体に陽が当たった。これで気がついた藤十郎が、ジーッとそれを見た時の目は、恐ろしいほど冷ややかであったと言われている。】

さ、行こか。

〈すっと明るい舞台に出ると、満杯のお客様から満座の拍手!!待ってました!

今日も、藤十郎は、渾身の舞台をした。


ほか、旭堂南海のネタ。

浪花侠客伝  濡髪長五郎放駒長吉

太閤記 藤吉郎時代


旭堂南湖のネタ。

赤穂義士伝  梶川与惣兵衛

明治奇談  蘇生の五兵衛