エーザイ
今の抗がん剤の開発は、欧米では免疫チェックポイント阻害剤が主流になっています。日本の薬品メーカーでは、小野薬品工業のみがオプジーボを上市し、メラノーマ、非小細胞肺がん以外の単剤での臨床試験や、メラノーマ、非小細胞肺がんへの多剤との併用での臨床試験が行われています。海外メーカーの免疫チェックポイント阻害剤の日本での臨床試験も実施されています。
しかし、オプジーボが効く患者はメラノーマ、肺がんについて、20~30%(奏効率)です。効かない人も多いですが、それが何故なのかは分っていません。これについては、今も研究が続けられています。
免疫チェックポイント阻害剤が効かない患者に対しては、従来の化学療法剤や分子標的剤が使われています。その中にも有力な新薬があります。
エーザイの「レンビマ」(一般名レンバチニブメシル酸塩)は分子標的薬という抗がん剤の1種です。分子標的薬は、1998年以降登場したものですが、がん細胞の持つ特異的な性質(例えば特定のたんぱく質や遺伝子を持つなど)を分子レベルでとらえ、それを標的として作用する薬です。がん細胞を狙って作用するため、副作用が従来よりも少ないと言われています。ただし、正常細胞に全く作用しないわけではなく、重い副作用の事例も報告されています。
免疫チェックポイント阻害剤が世に出るまでは、この分子標的薬が抗がん剤の新薬開発の主流でした。
エーザイの「レンビマ」のがん腫瘍に対する働き方(作用機序)は次の二つです。
がんは1mm以上の大きさになると、栄養や酸素を運ぶための新しい血管を必要とするようになります。そして、血管を作るための様々なたんぱく質を作り、新しい血管をがんの周りに作っていきます。これを「血管新生」と呼びます。「レンビマ」は、この血管新生のためのたんぱく質を標的にして、この作用を阻害します。
もう一つの働きが、がん細胞の増殖に関わる信号をブロックして、増殖を抑制することです。
「レンビマ」は、甲状腺がん(根治切除不能な甲状腺がん)に対しての効能が認められ、2015年2月にアメリカで、同年5月に日本で、同年6月に欧州で上市しました。医師からの評価が高い薬で、がん腫瘍の縮小やまれですが消失が認められています。
他のがんに対する適用拡大のために、臨床試験も行われています。肝細胞がん(フェーズIII、2017年3月期申請予定)、腎細胞がん(フェーズIIが終了し、2016年3月期に申請予定、欧州では申請中)、子宮内膜がん(フェーズIIb試験を準備中、2018年3月期以降申請予定)、胆道がん(日本でフェーズII試験中、2018年3月期以降申請予定)、免疫チェックポイント阻害剤「キートルーダ」(一般名ペムブロリズマブ、メルク)との併用(フェーズIb/II試験中)について進行中です。
以上
最新情報抜粋でした。
追伸:がんセンター中央では、非小細胞肺がんの治験も
開始したとの情報あり。
沼袋健太(キャンサーを生き抜く仲間の会、代表)より