「ユニクロ」ブランドはファッションか? これだけ巷間に浸透しているにも関わらず、これまで以外に語られてこなかったテーマではなかろうか(たぶん語られているとは思うが)。ファッション業界ではいわゆるファストファッションの1つと看做されているようだが、これは間違いである。ちなみに「ファストファッション」とは、すぐに手に入る手軽なファッションアイテムを総称する言葉で、マクドナルドのようなファストフードと同じ、「ファスト」=fast(早い)という形容詞が付く。「ファースト」ではない。時間、お金、手間暇を掛けず、ファッションを楽しむことができるブランドであるが、ファストフードを食べ続けても美食家になれるわけではないのと同様、着続けてもファッショニスタになれるわけではない。つまり、ファストファッションとは、ファッションと名乗ってはいるが普段着の事である。つまり、「ユニクロ」は実用衣料なのである。

 ジャスコやイトーヨーカドーのような量販店で売られている衣料品は「実用衣料」だ。いわゆる普段着である。賛否はあるが、「ユニクロ」ブランドはこの量販店の実用衣料市場をごっそり獲得し、急成長を遂げた。「ユニクロ」の成長と並行して、量販店の衣料品売り上げは下がっていった。SPA(製造小売業)という企画から生産・販売までを一社で行う体制をいち早く大規模に導入し、軌道に乗せた企業のひとつが「ユニクロ」だった。そもそも小売り店はほかのメーカーが作った衣料品や雑貨を仕入れ、そこへ自社の利益を上乗せして販売していた。SPAはそうした仕入れの段階を廃し、自らが工場を押さえて生産まで手掛けるため、利益率が高い。「GAP」が始めたSPAだが、ユニクロの柳井正会長兼社長は、アジアの「ジョルダーノ」からそのノウハウを学んだ。

 「ユニクロ」の成功は、品揃えを定番品=実用衣料に絞り込んだことにある。色々なアイテムを増やすと消費者には親切だが、手間が掛かって仕方がない。作るアイテムの数を絞り込めば効率も上がるし、当然、生産に掛かる経費も安くなる。そこを狙い、実用衣料の新しい基準を作った柳井正という業界人は評価に値する人物だ。

 しかし、「約束の時間より30分も早く来る」「10数人の大人数で大挙して押し寄せる」等、お行儀の面では良くない噂も聞く。真偽のほどは明らかではないので、わたしは柳井氏をみだりに批判はしないが。とかく、ねたみの多いファッション業界の事だ、「出る杭は打たれる」という一面はあるだろう。

 「ユニクロ」は単品の提案が色濃い。この秋でもウルトラライトダウンやネオレザーなど、単品(あるいは素材)の提案が多い。通常のファッションブランドはスタイリングを提案する。単品を全面に押し出すのは量販店が良くやる手法だ。以前、フランス・パリに旗艦店を開設した時、欧州のTVは「ユニクロ」のことを「GAP」や「ZARA」などと比較し、はっきり「ファッションではない」と評論していた。本場のメディアからは、「ユニクロ」はファッションと看做されていなかった。

 とはいえ、これだけ安価で品質の安定した実用衣料を買える店舗はなかなかない。大いに利用すべきブランドだと思っている。しかし、たまには全うなファッションブランドで買い物することを提案したい。そうでないと、いつまで経ってもファッションセンスは向上しないのだから。
 10月12日、髙島屋、J.フロントリテイリング、近鉄百貨店の第2四半期決算が発表された。各社ともに減収増益(近鉄百は経常黒字に回復)という結果だった。人件費や販売管理費など経費を削減したことによる効果が大きく、本業の店頭売り上げでは、軒並み苦戦傾向だった。売上総利益率も3社ともに減少した。髙島屋は連結で売上高4227億円、経常利益100億9900万円。J.フロントリテイリングは主力を占める大丸松坂屋百貨店の売上高が3143億円、経常利益30億9000万円。近鉄百貨店は連結で売上高1437億円、経常利益7億200万円。

 髙島屋は、今春に改装を実施した大阪店が増収。大丸大阪心斎橋店は北館の増床効果で2ケタ増をキープ。須磨店が2%増と健闘、札幌店も7・4%増だった。それ以外の店舗は軒並み前年比を下回った。ちなみに大丸松坂屋百貨店全体の衣料品は0・9%増だった。余程の特殊要因を除けば、純然たる増収はなかったといえるだろう。

 しかし、髙島屋は大阪店の増改装工事が未完だし、近鉄百貨店も阿倍野本店の建て替え工事で売り場が半減している。大丸も梅田店が増床工事中で、完全な売り場ではない。本来の態勢で臨んだ上期でなかったことは確かだ。消費が冷え込んでいることは間違いなく、客単価の下落が影響したことは否めない。まだ3月期の三越伊勢丹や阪急阪神百貨店の発表が来月なので総括はできないが、こういうまとめづらい停滞した決算になることは恐らく間違いないと思う。

 それにしても、この消費の倦怠感はいつまで続くのだろう。政治がぱっとしないし、それを受けて報道するマスコミにも覇気がない(というより、目先の話題にばかり飛びついて、本質を報道しようとしないと言った方が的確か)。百貨店の現場には、例えば近鉄百貨店阿倍野本店のメンズ肌着のように、情熱を持ったバイヤーが存在する売り場も存在する。その反面、事なかれ主義を貫くサラリーマン社員も存在するが。

 これから2、3年間は、「百貨店とは何か?」ということを模索する時期になる。各社のトップも、この点は理解しているようだ。ドンキホーテが立ち上げた百貨店型の新業態「WR」(民事再生法を申請した個性派ショップではない)など、競合店舗も増えている(この店舗は内装は“百貨店的”な木目調だが、売り値が安いという点が特徴)。高付加価値品に特化するのか、大衆に迎合するのか、売れ筋を追い掛けるのか、包装紙を良しとする古い顧客を大事にするのか。これからの決算は百貨店の文字通り、生き残る術を検証する通信簿になる。
 去る10月1日、大阪市中央区心斎橋筋に日本初のグローバル旗艦店「ユニクロ心斎橋店」がオープンした。地下1階、地上4階の4層構造で、売り場面積は約800坪(約2640㎡)。メンズ、レディス、、キッズ、+Jまで揃えたフルラインナップである。入口付近は1-4階まで吹き抜けがあり、その空間を活かして円状に配置された6体のマネキンが間断なく上下に移動する「フライングディスプレー」が設置されている。1階から4階まで6体のマネキンが不規則に垂直に上下し、各階の来店客にコーディネートをアピールする仕組みだ。日本で初めて設置したらしいが、どこまで来店客にアピールできるかどうかは未知数だ。敢えて言えば、なくてもいいディスプレーだと思った。

 この新店は、ちょうど南に400m離れた場所にあった「ユニクロプラス」が移設・増床する形で開発された。日本初のグローバル旗艦店として生まれ変わった。グローバル旗艦店も旧「ユニクロプラス」も心斎橋筋に面している。大阪・心斎橋の目抜き通りと言ってもいい立地だ。ちなみに旧「ユニクロプラス」は22日に「g.u.」として再スタートを切る。多層階の売り場を持つ初の旗艦店である。

 新店は「ユニクロ」の最も新しい姿だ。新しい店舗は常にそのブランドの最新の姿・世界観を表現している。今までは日本で新業態を展開し、その後、国外へ出店するケースがほとんどだったが、グローバル旗艦店はその逆だった。2006年、米国ニューヨークのソーホーにグローバル旗艦店を開設。その後は07年に英国ロンドン、09年にフランスのパリ、今年5月には中国の上海にグローバル旗艦店を開設した。通算5店目でようやくお膝元の日本である。満を持してという面もあるのだろうが、その完成度は最も高いはずだ。実際、新店を訪れた柳井正・代表取締役会長兼社長は「過去の店ではムッとしたことがあったが、今回はそのようなことがなかった」と珍しく評価していた。勝手を知っている日本人スタッフのお手柄のようである。

 初年度売上高目標は公表していないが、大笘直樹取締役は「日本でトップクラスの額を目指す」と語った。月坪30万円で計算すると、年間28億8000万円。同40万なら、年間41億8800万円。同50万なら、年間48億円。年間40億円規模と見るのが妥当な線か。

 もう一つ興味深いのは、400mしか離れていな「g.u. 心斎橋店」との住み分けだ。柳井会長は「商圏は大きいので、近くても十分に可能だ」と語る。ただし、「少しでも互いの違いを出せるようにする」とも。取材する立場の者にとって、今秋の心斎橋地区の「ユニクロ」の新店開設は、今後を占う試金石になるため、興味が尽きない。