入院39日目 | ここから叫ぶ、呟く、書きなぐる。

ここから叫ぶ、呟く、書きなぐる。

車椅子バスケットをやっている、ブルーハーツを目指す、埼玉県人。特に意味はない。今を生きる、明日をおもう。

暇だ。相変わらず暇なんだけどなんだかんだで39日経った。経過は比較的順調と言っては良いと思うけど、車椅子に乗れる時間は一時間。自由度は低い日々を過ごしてなんだけど、これが高くなったら今度は退院してーってなるんだ。俺にはわかる。無い物ねだりだ。人間そんなもんだ。


昨日の話。
今俺のいる315号室は4人部屋。4人部屋なんだけど、今は2人。俺と対角線上に山口さん。俺と同じように車椅子使用者の上に両足が無い。義足はあるんだけど、脊髄損傷だから歩けない。体のバランスを取るためだけに作ったんだと。健常者の頃はトラックの運転手。
非常に気さくなおじいさんで、障害者歴は大先輩。話が大好き。看護師さんと色々と話して苦しみながらも懸命に、共にこの入院生活というものに立ち向かっている。
俺は看護師とはほとんど話さない。理由は無いけど何と無く話す気になれない。だから俺の知っている情報のほとんどは山口さんからの受け売り。しかし最初は山口さんとすら話をしてなかった。
イヤホンを両耳にして話しかけんなっていう雰囲気を全開にしているんだけど、それでも関係なしに話しかけてくる。それを無視出来るほどの神経を持ち合わせていない俺は結局会話を始める事になってしまう。いやいや。

そんな山口さんの奥さんが昨日面会に来ていた。看護師と言っていたかな、確か。
そんな奥さんが山口さんのステンレス製のマグカップを洗っていた時のこと。マグカップの取っ手の部分が折れてしまっていたことに気づいた奥さん。
実はこのマグカップ、看護師さんが誤って落として破損させてしまったものなんだ。看護師は一生懸命謝っていて、山口さんも一切怒る事なく気にすんなと言っていた。まったくナイスガイにもほどがあるなーと思いながらその時俺はコーヒーを飲んでいた。
しかも、このナイスガイ山口さんときたら今日奥さんに聞かれた時も自分が壊したとか言い出すんだよ。ムラムラしてて我慢していたエッチな動画を観ようとした自分を恥じたよ、この時ばっかりは。いやー、こんなんだからダメなんだ俺は。ナイスなガイになれないわけだ。

でも奥さんは少し笑った後に、
「信用出来ないなー、その言葉は」
って言った。それでも山口さんは自分が壊したと言うんだけど、ハイハイと言わんばかりに洗ったマグカップを拭きながら、あなたがそんな事するわけないでしょって言ったんだ。
誰だって物を落とす事はあるだろうに、そそれが山口さんかもしれないのに微塵とも疑わずに。

そんな2人がすごく良いなって思った。愛だよ、これが。この絶妙な2人のバランスこそが愛なんだって、その時思った。


最近の暇潰し手段がまた一つ終わってしまった。ミニ四駆のアニメ、レッツ&ゴーMAX。
マシンが壊されて、それを復活させるシーンはいつも感動する。勿論最終回も感動する。泣かせないでくれ、クールでいたんだよ俺は。