ルビーの指輪が好きだ。特に好きなのは、最後のサビの部分。彼女と別れて2年が経っても、街中で彼女が纏っていたコートを見かけると、かつて自分があげたルビーの指輪を探してしまうのが、少し自分の経験とリンクする気がする。指輪なんてあげたことないけど。‬

‪本当に好きになった人はどうやっても忘れられないもので、最早毒だと思っている。特に強烈な経験は即日メモ帳にしたためていたのだが、この度スマホを替えたため、生々しい記録がなくなってしまった。それはそれで、形としてなくなって記憶の中にしか残らなくなっていっそ消えて欲しいくらいなのだが同時になんとなく勿体ない気もするので、ここに簡略版を残しておこう。‬

‪新幹線で何時間もかけないと会えない人を好きになったことがある。当時はお金もなくて高速バスで会いに行って、今日こそは気持ちを伝えようと決めていたのに、なかなか言えなくて、夕方のバスに乗るまでに言うチャンスはお昼の味噌煮込み屋さんしかなかったんだけどそこでも言えなくて、言わないと金輪際会えない気もしているのにすごくもどかしくて、でもバスの時間来ちゃって2人でバス停に向かう際にようやく言えたんだけど返事もらわないままバスに乗ってしまった。‬
‪バスが出発するまでまだ数分あって、放心状態で座っていたら、彼女がバスに乗り込んできて無言で僕の好きな味噌煮込みうどんセットを渡してバスを降りてしまった。‬
‪いよいよ出発の時間になって、せめて窓越しに手振ろうとしたら、人混みの中、彼女がうつむいて泣いているのが見えて、ああ自分はなんてことをしてしまったのかと強く罪悪感に苛まれて、道中はひたすらクリスマスキャロルが流れる頃にはを聴いていた。たしかクリスマスの前日くらいだったのだ。‬

‪結局なんだかんだあってその人とは付き合ったのだけどうまくいかなくて、今はどうしてるのかさっぱりわからない。‬

‪でも今でも、ベージュのコートと少し巻いた茶髪の小柄な人を見かけるとつい追い越して顔を確認したくなってしまう。やっぱり毒だと思う。‬

‪彼女からは色んなことを教えてもらって、それは今の僕を形成する根っこになっているし、彼女にいつ会っても恥ずかしくない自分でいようという気持ちがあったから、今日まで腐らずに生きてくることができた。結局毒なのか薬なのかわからない。苦い薬?‬