なにをどうすればよかったのか。
同じチームの先輩が会社を辞めた。
地方支社から異動して数ヶ月で突然会社に来なくなったのだが、つい1ヶ月前からちょくちょく出勤するようになっていた。
同業他社に転職が決まったのだが、周囲からは「職場変えても同じなのにね」「契約でしょ?厳しいだろねお金」と裏で随分な言われよう。
東京本社の雰囲気が合わなかったらしい。ドライな感じが拭えず、いつからかまったく眠れなくなってしまったという。
「同じチームなのに助けてほしかった」「いつもさらっと帰っちゃって寂しかったよ」送別会の隣の席で彼は3回くらい言っていた。僕に対してである。
僕にも呵責できる良心はあるので、それから半日ばかりどうすればよかったか考えたりして、答えはないことに気づいた。他人に助けを求めることが間違いなのである。問題文そのものが間違っていた。センター試験ならニュースものである。
生き残りたかったら、傷つきたくなかったら、傷つかないようにするしかない。他人は絆創膏を貼ってはくれない。他人を助ける余力は到底ないし、他人は期待するもんじゃない。
別れ際、彼には「どこに行っても理不尽なことは言われるし、悪い人はいる。でもいちいち取り合っていたら自分がもたない」と伝えた。
「君はやっぱり頭いいよなあ」弱々しく笑いながら彼は二次会に消えた。これが限界だったと思う。精一杯の優しさだったけれど、「そんなスタンスじゃあ次の職場でも潰されますよ」と言えるほどの親切を分け与えるくらいの余裕は僕にはない。
転職先では契約社員として3年、それも札付きの部署配属だそうである。