前回の記事を9月下旬頃に書いて以降、将棋には一切触れていない。これは非常にいいことなので、今後も継続していきたいと思っている。さて、将棋をやらなくなると多少ではあるが自由時間が増えることもあって、その時間で最近はゲームをプレイしていた。

ゲームについては時間が確保できないこともあり、プレイする機会が歳を重ねるごとに減ってはいたが、それでも時間が取れる機会を見つけてはスポット的にプレイするような状態が続いていた。ところが今回ゲームに触れている中で、昨今のゲームに対する不満が爆発したので、今回はその不満について綴る。

 

年末年始にかけて、ロックマンエグゼアドバンスドコレクション(以下、アドコレ)というゲームをプレイしていた。おそらく20代後半~30代の方なら一度は遊んだことがあるだろう、ロックマンエグゼシリーズ各種を1本にまとめたゲームであるが、今回の私の怒りの矛先はコイツである。

 

対人戦を売りにしているゲームではあるものの、発売されたのは約20年前ということもあって当時はオンライン対戦の概念が存在せず、何人かで集まって通信ケーブルを利用して対戦を行う他なかった。

そういったことから「オンライン対戦の時代に発売されていれば更に評価されていた」という声が元々多くあり、アドコレにおいても当初はオンライン対戦非対応の予定であると言われていたが、これらの声の影響もあってかオンライン対戦実装のうえでの販売が決まった。

そしてこのオンライン対戦実装は私にとっても非常に期待できるものであり、そのため今回このゲームを購入したが、ゲームの上手い下手ではない部分における対戦環境構築のハードルの高さによって期待は見事に裏切られることとなった。

 

このゲームではバトルチップを集めて30枚1組のフォルダを構築し対戦するが、対戦における必須のバトルチップの一部はチップトレーダースペシャルを利用しなければ揃えることができない。

 

※各種用語の整理

バトルチップ:カードゲームにおける1枚1枚のカードとほぼ同義

フォルダ:カードゲームにおけるデッキとほぼ同義

チップトレーダースペシャル:いらないバトルチップ10枚と引き換え1枚バトルチップがランダムで入手できる機能(要はガチャガチャ)

 

チップトレーダースペシャルで排出されるチップの種類は非常に多く、目当てのチップが排出される確率は概ね1/2000(=0.05%)程度と言われている(まともな解析が行われているゲームではないので、通説による推定値)。そして多くの対戦用フォルダはこの方法でしか入手できないバトルチップを最低7~8枚は搭載しているので、目当てのチップが揃うまでに回すチップトレーダースペシャルの回数の期待値はファーストサクセス分布を考えることで14000~16000回にもなる。目当てのチップが出なかった場合、(原作ではオートセーブが障壁となり不可能であったが)アドコレではバックアップデータを復元することでリセマラが可能ではあるものの、それでも10連するのに1分程度はかかる。したがって1枚欲しいチップを入手するまでに2000回転させるとして3時間半程度は覚悟しなければならず、フォルダ完成のために7~8枚集めようとしたら30時間程度はガチャガチャを回すためだけのボタン連打に明け暮れなければならない訳だが、これはあまりにも非現実的な数字である。なお、私は正月休みを犠牲にしてトータル7時間程度リセマラを繰り返し、このゲームの対戦における最重要バトルチップ「エリアスチール*」の入手を試みたが、結局1枚も入手することができなかった。したがって実際の確率はより低く、必要な時間はより多い可能性がある。

 

という訳で正攻法で必要なチップを揃えることは実質的にほぼ不可能なので、必然的にこのゲームに用意されているチップのトレード機能を悪用した裏道を使わざるを得ない。具体的には何らかの方法でソフトを2つ用意し、片方のソフトAでバックアップデータを用意しておきもう片方のソフトBに必要なチップを送る。そしてソフトAをバックアップデータから復元して交換前の状態に戻し、以下この作業を繰り返すことで必要なチップを増殖させるという方法である。さて、ここで問題となるのはソフトを2つ用意する方法だが、

 

①自分でソフト(とハード)を2つ買う

②協力者に依頼する

 

の2通りである。①の方法は馬鹿げているので避けたい。よって②の方法を取るしかないが、結局ここがこのゲームの詰みポイントである。ゲーム内のトレード機能は募集機能が非常に貧弱なので必然的に外部SNSを活用するしかないが、これが私のような人間にとってあまりにも苦痛すぎる。

 

そもそも私のように他人と上手く付き合えないような人間は、趣味を選ぶ際にも「他人と関わらなくていい」という点を非常に重視する。将棋にしたってこの条件をクリアしているから始めたという部分が少なからずある。そして従来のゲームもそういった要請をクリアするものだったので趣味となった経緯があるが、近年のゲームはオンライン技術やSNSの発展によりそれなりのプレイスキルよりも他のプレイヤーとの協力・談合の方が遙かに重要な傾向にあり、必ずしもその条件を満たさなくなってきている。アドコレにおいても、複数プレイヤーでの協力によるチップ複製行為はDiscord等、非常に狭いコミュニティの中で行われているものと思われる(少なくとも野良でSNS新規アカウントを取得せず、目的のために初対面の人間同士が集まっていきなり複製だけを簡単に行えるようなコミュニティはネット上に見受けられない)。そして私レベルの重度社会不適合者・人格破綻者ともなると実社会はおろかインターネット上の上辺だけの人間関係すらまともに構築することは不可能なので、アドコレをこれ以上掘り下げてプレイすることが不可能となった。

 

なお、談合・協力の重要度が極めて高い他のゲームとして、私がプレイした中ではFF14が挙げられる。このゲームも絶と呼ばれる最高難易度コンテンツをクリアしようとすれば、同じ人間と固定のパーティを組み、100時間単位でDiscordの音声会話を用いた協力を強要される。そしてその際に求められるのは中途半端に高いプレイスキルよりも、パーティが解散とならないように人間関係を維持できるコミュ力である(ただしよっぽどプレイスキルが高ければ話は別で、好き勝手言っても許される特別席が用意される。プレイスキルが滅茶苦茶高ければクリアするうえで必要な存在なので、多少人格が破綻している分には許容される)。私がFF14を深く掘り下げず、その1つ下の零式までで満足した理由はそこにある(零式レベルなら後発であれば野良の極めて希薄なその場だけの繋がりでどうとでもなる)。

 

加えてアドコレだが、本当に100万本売れたのかと思えるぐらい対人戦が過疎っている。Switch版はまだ人もいそうな雰囲気だが、私がプレイしているSteam版はおそらくほとんど人がいない。つまり対戦相手の募集においても外部SNSを活用しなければならず、これではオンライン対戦の本来の強みである「いつでも気軽に対戦」が活かされている状況とは到底言えない。

 

調べたところエグゼシリーズはシリーズ完結後~アドコレ発売前も一部コミュニティにおいて実機を持ち寄って定期的に有志によるオフ会が開催される形で存続していたようだが、今のアドコレの「一部狭いコミュニティでチップを増やし合い、その中で対戦し合う」という状況はハードの種類が変わっただけでアドコレ発売前の状況と大差ない。であれば、このゲームが発売された意義そのものに疑問を感じざるを得ない。

むしろ「実機+GBA」の方が「アドコレ+PS4 or Switch or PC」よりも金銭的な意味で一人で2台分のトレード用環境を確保しやすい分、トレーダー限定チップを揃えるという観点では発売されてマイナスの可能性まである(ただし実機はバックアップデータから復元できないので複製は不可。一方で対戦必須チップの多くはシナリオ上で1枚なら確定で入手できるので、片方のデータで目当てのチップを入手するまでシナリオを複数回進めれば事足りる。これでもチップトレーダーを回すよりかは遙かに楽)。

 

アドコレやFF14は一例かもしれないが、他のゲームにしたって近年はコミュ力の要求水準が高くなっており、我々社会不適合者のコミュ障はゲームにおいても居場所を失われつつある。

大体今回挙げたアドコレの例のように、大学の定期試験における過去問集めみたいな苦行を何故バーチャルの世界(あるいは趣味の世界)でまでやらなければいけないのか。

このような状況と、そもそもゲームをプレイする時間の確保が困難になってきている状況を鑑みて趣味からゲームを外す案が自分の中で元々出ていたことを踏まえて、いい歳なのでゲームとはそろそろ距離を置くべきであると考えている。