将棋倶楽部24の実戦より。(▲向かい飛車(自分)-△三間飛車(相手) △55角まで)

この55角の狙いは単純で「こちらの受け間違い」である。相手もこれが正着でないと分かって指しているのである。

 

似たような問題が藤井先生の「相振り飛車を指しこなす本1」にも載っていて、それは以下の局面での次の1手である。

ここで先手が18飛と指せば、以下36飛56銀33角77角62玉88飛のように進行し、先手が1手手得をして有利となっている。

上の実戦譜では18飛とは指せないが、こちらが正着を指しても最終的に33角とでもしておけば、1手損で済む点は同じである。

つまり相手は、「多少の手損を賭けて、的中すれば即勝ち」というギャンブルの権利を行使している訳である。そしてここでの「55角→33角の手損」は、終盤で1000手損のような手を連発するこのレート帯において、ないに等しい。つまり期待値的にどう考えても得なので、このギャンブルを行使しない理由がないということである。

実戦は1枚目の局面から38金28角成同金39銀49玉28銀成同飛39金と進行。

こちらが38金と指したところで相手が穏便に進めれば、その後33角と引いて無に等しい1手損の参加料を支払い、このギャンブルは終了。以下、1局の将棋である。

ところがこの相手は38金に28角成とし、ギャンブルを続行してきた。ここまでくると前述した失敗しても大したことない気軽なギャンブルとは違い、指し切り負けを賭けたリスキーなギャンブルである。しかしこの攻めは単調すぎて、以下48玉で見るからに切れ模様である。

きっとこの相手はこういう指し方が疑問であることを分かっていながら、受け間違いを狙うために思考停止でこういう指し方を繰り返し、それでこのレートを維持しているのだろう。それにも関わらずこいつと自分がほぼ同じレート帯にいるということは、自分が今まで数千時間かけて培ってきた将棋の技術が、こういった指し方と大差ない無価値なものであることを意味し、怒りを通り越して呆れた気持ちになる。

あるいはこのレート帯ということを考えると、勉強も感想戦も一切しないからこの指し方が疑問であると認識していない可能性も0ではないが、それはそれで努力を一切せず、そしてこの指し方に疑問を持たないような頭の悪い人間と同じということになるので、いずれにしても呆れた気持ちになる。

そういった心境もあったため、相手に最大限の精神的苦痛を与えるため、全駒するぐらいの気持ちで辛く指した結果、上記局面で相手の投了となった。

この相手、最後の最後まで無理攻めを繰り返していてなかなか投げてこなかったが、その折れない心をもっと別の方向に向けたほうがいいのではないだろうか。それとも、壊れたテープレコーダーのように何度も繰り返してしまうほど、無理攻めギャンブル戦法というのは中毒性のあるものなのだろうか。