石田流対策として、「こなたシステム」または「K塚システム」と呼ばれている作戦をご存じだろうか。
上図はこの作戦の理想的な成功図で、2筋攻めに飛車角金桂が集中し、先手は収拾がつかなくなっている。
この先手、実はプロ棋士である。
ニコニコ生放送の企画で指された10秒将棋のなかでの一局。
10秒将棋とはいえ、初見ではプロでも完敗することがある破壊力のある作戦だ。
さらにこの作戦のタチが悪いことは、後手側が必ず誘導できることであり、3手目に▲7五歩と突けばまず下図までは進む。
ここから漫然と駒組みしていては、上で示したように理想的な攻撃陣を構築されてしまう。
誘導率が高い割にそこまで知名度がないということはやはり少し無理筋なのだろうが、ネットで調べても対抗策が見つからないので将棋ソフト”浮かむ瀬”とともに対策を探ってみることにした。
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲7五歩 △8四歩 ▲7八飛 △8八角成
▲同 銀 △4五角 ▲7六角 △3二金 ▲3八銀 △6四歩
▲4六歩 (下図)
早めに▲4六歩と突いて角の動向を聞いてみる。
△2二飛と回る前では△7二角と引くこことができないため、①△5四角か②△6三角の二択になる。
①△5四角と角をぶつける手はこなたシステムの狙いである2筋突破4を放棄することになるため詳しくは触れないが、一例を示すと、以下
▲同 角 △同 歩 ▲4七銀 △6二銀 ▲3八金 △8五歩
▲7七銀 △4二銀 ▲3六歩 △4四歩 ▲3七桂 △4三銀
▲4八玉 △4二玉 ▲7九飛 △6三銀 ▲7八金 △5二金
▲1六歩 △1四歩 ▲2六歩 △5五歩 ▲2九飛 (下図)
上図のように右玉風に指すか、角交換振り飛車の力戦形にするか好みが分かれるところ。
②△6三角には、以下
▲7七銀 △3三金 ▲8六歩 △2二飛
▲6六銀 △4四金 ▲8八飛 △2四歩 (下図)
△2二飛のところ△8五歩(下図)には、
▲同 歩 △同 角 ▲8三歩 △同 飛 ▲8八飛 △8四歩
▲8五角 △同 歩 ▲6三角 △2八角 ▲8五角成
△8二飛 ▲7四歩 △4二玉 ▲7三歩成 △同 桂 ▲7四馬
△8七歩 ▲8三歩 △7二飛 ▲8七飛 △1九角成 ▲7六銀 (下図)
長手数進めて恐縮だが、香を取られても6四馬~7四歩から7三桂を取れることが見込めるため馬の働きの差で先手が良くなりやすい。
▲8六歩で▲6六銀もあるが、△8五角が気になる。
戻って△2四歩に▲4七銀(下図)が成立する。
△2七角成が気になるが、▲3六銀△2六馬とした形は、一歩持って▲1六歩と突けば馬が死ぬ形なので、後手もやりづらい。
具体的な手順を挙げると、
△2七角成 ▲3六銀 △2六馬 ▲8五歩 △同 歩
▲同 角 △8二飛 ▲8三歩 △6二飛 ▲7四歩
△同 歩 ▲同 角 △7二金 ▲4五歩 △5四金
▲1六歩 △7三金 ▲9六角 △9四歩 ▲2七歩 (下図)といった手順が一例。
なお、途中で△3五歩としてくる手には▲4五銀とぶつければ▲4三角成や8五に角が出た後の▲4一金が生じ先手が良い。
よって△2七角成はやりにくく、互いに駒組みを続けると
▲4七銀 △2五歩 ▲3八金 △2六歩 ▲同 歩
△同 飛 ▲2八歩 △2二飛 ▲5六銀 △4二銀 (下図)
▲2八歩に△2七歩はさすがに無理筋で、▲同歩△同角成▲同金△同飛成に▲2八歩と弾いて先手から▲6三角や▲8五歩など指したい手が多い。
上図では▲5五銀も有力だが、▲8五歩からシンプルに仕掛けてみる。
上図以下
▲8五歩 △同 歩 ▲同 角 △同 角 ▲同 飛 △8二歩
▲7四歩 △7二金 ▲7三歩成 △同 金 ▲8八飛 (下図)
▲7四歩に△同歩は▲6三角がある。
上図は金銀が分裂している後手がまとめにくい。実戦的に先手勝ちやすいだろう。
以下は一例。
△3三銀 ▲4八玉 △4二玉 ▲7五銀 △7六歩
▲8六飛 △2五飛 ▲6六銀 △2二飛 ▲5八金
△3五金 ▲7五銀 △2六金 ▲4五角
△5四角 ▲7四歩 △4五角 ▲同銀 △7二金
▲6四銀
~~~~~まとめ~~~~~
こなたシステムに対しては玉を囲うより攻撃陣を早めに整え、▲4七銀~▲3八金で2筋を受けてから8筋を狙えば十分な形勢が見込めるだろう。
▲5六銀では▲5八金などもあり、途中からの先手の指し方は自由度が広い。
後手は玉を囲いにくいため、実戦的に先手が勝ちやすい形になりやすい。