中飛車 第65回NHK杯2回戦第8局 飯塚祐紀-戸辺誠 棋譜検討(超速 対 △4四銀型) | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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オールラウンドプレイヤーを目指す序盤研究ブログです。最近は棋書 感想・レビューのコーナーで、棋書の評価付けもしています。

過去の実戦例や定跡を紹介しているので、
少し長めの記事になっています。

【棋譜でーたべーす】
第65回NHK杯2回戦第8局 飯塚祐紀-戸辺誠

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先手:飯塚祐紀
後手:戸辺誠

▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲4八銀 △5五歩 ▲6八玉 △3三角 ▲3六歩 △4二銀
▲3七銀 △5三銀 ▲4六銀 △4四銀
(下図)

超速対△4四銀。

上図以下
▲7八玉 △6二玉 ▲6八銀(下図)

上図では△7二銀と△7二玉がある。

△7二銀には▲7七銀・▲5八金右・▲3七桂が考えられる。

▲7七銀以下、一例は
△6四歩 ▲3七桂 △6三銀 ▲4五銀 △1五角 ▲3八金
△4五銀 ▲同 桂 △7二玉(下図)

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参考棋譜:
行方-森内戦小林裕-近藤戦松尾-久保戦船江-伊藤真戦
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▲5八金右以下、一例は
△7一玉 ▲9六歩 △9四歩 ▲7七銀 △6四歩 ▲6六銀
△6三銀 ▲3七桂 △5四銀(下図)

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参考棋譜:
田村-北浜戦中田宏-北浜戦富岡-近藤戦
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▲3七桂以下一例は、
△7一玉 ▲7七銀 △5六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲6六銀
△5一飛 ▲4五桂 △4二角(下図)

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参考棋譜:
広瀬-渡辺明戦増田-杉本戦
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この辺りの変化は、漠然と後手もやれそうだなーと思っている。
それほど深く研究した訳では無いけれど。
しかしまぁ、日進月歩過ぎるので現在の結論は良く知らない。

本譜は▲6八銀以下
△7二玉 ▲7七銀 △8二玉 ▲6六銀(下図)

上図から後手は、
美濃・穴熊・木村美濃を選ぶ事になる。

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美濃囲いの参考棋譜:
里見-西山戦中村太-遠山戦阿部隆-阪口戦松尾-杉本戦桜井-西尾戦

穴熊囲いの参考棋譜:
澤田-佐々木慎戦田村-戸辺戦長岡-阪口戦羽生-広瀬戦森下-久保戦
村田智-村田顕戦片上-佐々木慎戦高野-戸辺戦屋敷-久保戦

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しかし、圧倒的に多いのは本譜の木村美濃コースである。
▲6六銀以下△7二金 ▲5八金右(下図)

細かいところではありますが・・・
上図では△5一飛の実戦例が多いのだけど、
戸辺先生は△6二銀が多い(下図)。

これは▲3七桂には△5六歩と行く意味だと思う。以下
▲同 歩△同 飛▲5五歩△3五歩・・・
この時、▲2六飛に△1五角があるのがポイントだ。

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参考棋譜:対中村太戦
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△1五角を防ぐなら▲2四歩か▲1六歩と指す事になるが、
これらの手を戸辺先生は「振り飛車得」と判断しているのだろう。

本譜は上図以下
▲1六歩 △5一飛 ▲3七桂 △1四歩(下図)

上図△1四歩は大きな手ながら、少し早いタイミング。
何故ここで△1四歩なのか。あまりに複雑すぎる。
放送時、何か解説があっただろうか?

上図以下▲4五桂と仕掛けるのは、
△4二角 ▲2四歩 △同 歩 ▲5五銀左 △同 銀 ▲同 銀(下図)

類例の戸辺-高野戦 では、▲5五同銀に△3二金。
また、単に△3三桂と捌いても後手まあまあかと思う。

気になるのは、△1四歩に▲2九飛(下図)

▲2九飛は次に▲4五桂と跳ねる意味。以下
△4二角▲5五銀左△同 銀▲同 角の時、
△同 飛~△3七角の飛銀取りを防いでいる。

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参考棋譜:木村-鈴木戦渡辺大-荒木戦
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もし後手陣が△7一銀△3二金型なら△2二角が定跡。
しかし、上図で△2二角と引くのは
▲2四歩△同 歩▲同 飛△3二金に▲2三歩が嫌な手で、以下
△3三角▲2九飛△1二香▲4五銀△同 銀▲同 桂
△4四角▲2四飛の進行は先手持ちか。

よって、上図では△3二金が自然だろう。以下
 ▲4五桂 △2二角 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △3三桂
▲同桂成 △同 角 ▲2九飛 △2三歩 ▲3九飛(下図)

上図以下は△4二金・△2四角が考えられる。

△4二金以下
▲3五歩 △同 歩 ▲4五桂 △2四角 ▲3四歩

△2四角以下
▲2五歩 △1三角 ▲1五歩 △同 歩 ▲3五歩 △5四桂

前者はやや先手持ちなので、後者で勝負したい。
△1四歩が利いた展開なので、味も良い。
なお、△2四角に▲5五銀左も有力だが、
△同 銀▲同 銀に△8四桂、あるいは△6五銀の要領でどうか。

本譜は△1四歩▲9六歩。以下
△3二金 ▲9五歩 △1二香(下図)

先手は▲2九飛と引かずに端を詰める。
この形は桂交換がほぼ確定次項なので、
△9四歩と受けるのは端攻めを誘発する意味がある。

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参考棋譜:横山-田中悠戦
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桂交換の筋が駒組に影響を与えているのは、後手だけではない。
将来△8四桂があるので、先手も▲6八金上と指しにくい。

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参考棋譜:中座-佐藤和戦
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よって上図は、駒組が飽和状態である。

△1二香以下
▲4五桂 △4二角▲5五銀左 △同 銀 ▲同 銀 △3三桂(下図)

▲2八飛型の場合、
▲4五桂に対する角の引き場所は4二である。

上図までの進行は部分定跡。
△1一香型なら▲4六銀もあるが、△1二香型だと指しにくい。

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参考棋譜:有吉-田中悠戦中村太-戸辺戦  
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上図以下
▲4六歩 △6五銀(下図)

▲4六歩は一番多い応接かと思う。
対する△6五銀も重要な手筋。

△6五銀に▲4七金△7六銀▲5六歩としたのが佐藤康-谷川戦
しかし、難解な形勢と裏腹に、少数派の指し方である。
玉が薄くなるのが気になるのだろう。

そこで本譜は▲3五歩(下図)

羽生-阿久津戦 でも現れた、この形の一番人気の手。 
△3五同歩には▲3八飛△4五桂▲同 歩△7六銀▲3五飛・・・
これは先手の飛車が軽いだろう。

上図以下は△7六銀 ▲2六飛(下図)

▲2六飛が良い味の手。
この手に換えて▲3四歩は、△4五桂▲同 歩△7七桂で後手ペース。
▲2六飛は△4五桂▲同 歩の時に7六銀取りになる工夫だ。

本譜は上図以下△5四歩(下図)

△5四歩は飛車先が重たくなる手だが、
▲6六銀には△4五桂▲同 歩△6四角、
▲3三桂成には△同 金▲6六銀△4四金といった要領で、
角金は軽く捌きやすくなる。

本譜は上図以下▲3四歩(下図)

ここで△5五歩も有力な手で、以下
▲3三歩成△同 金▲同 桂成△同 角▲3六飛△3二歩・・・
こう進めば△5六歩を切り札に後手が指せそうだ。

上図以下、本譜は爽やかに
△4五桂 ▲同 歩 △8七銀成 ▲同 玉 △5五歩(下図)

駒の損得は無いが、先手は玉が不安定なのが難点だ。

▲7八玉には△5四飛が良い感じの手で、
3四・7四・8四への転回を見せて振り飛車ペース。

よって、本譜は上図から▲7六銀。以下
△5四飛 ▲3六飛 △3五歩 ▲2六飛 △3四飛 ▲5五角(下図)

振り飛車が気持ち良く指し回しているようでも、
▲5五角が好所への飛び出しで、形勢は互角だろう。
飯塚先生のバランス感覚が素晴らしい。

ただし、いかんせん▲8七玉が不安定なので、
アマ同士なら後手が勝ちやすそうだ。

本譜は戸辺先生の捌きに対し、
飯塚先生がコッテリと受ける展開だったが、
少しの隙に乗じて戸辺先生が勝ったように見えた。
持ち時間の長い将棋でジックリ見てみたかった。

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