逆転将棋 1980年A級順位戦 米長邦雄-加藤一二三戦02 | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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オールラウンドプレイヤーを目指す序盤研究ブログです。最近は棋書 感想・レビューのコーナーで、棋書の評価付けもしています。


前記事 の続きです。

コメントで相手の学生の棋力について質問があったのですが、
とりあえず、将棋倶楽部24で4~5段と答えておきます。

ただし、得意分野が割とハッキリ分かれており、
展開によっては6段上位クラスの力を発揮してくるので、
そうなると、今回のルールで勝つ事は難しくなります。

さて本記事も、先手を学生、後手を私が持って、
米長邦雄-加藤一二三戦 を指し継いでいきます。
形勢は先手良し。リードを維持する事は出来るでしょうか。

第3局

△3七竜以下▲6八香(下図)

▲4四香・▲6八金引の時も先手十分の分かれでしたが、
結果が付いてこなかったので、更に堅く受けてきました。

この手を見た当初は、
「香車を使ってくれるなら」と思っていたんですが、
読みを進めていくと、やっぱり先手が良いんですよね。
そう簡単に差が縮まる局面じゃないですかー。

上図以下
△4七歩成 ▲4四金 △4一歩(下図)

△4七歩成△4一歩は、甘い指し方だった気がします。
△4七歩成では△4三銀と埋めて長引かせる方が良かったかも。
先手玉があまりに堅いので攻めを見せたくなったのですが、
この辺りに私の弱さが出ていますね・・・

上図以下
▲3四金 △同 銀 ▲5四歩 △同 歩 ▲同 龍(下図)

▲5四歩が好手でした。
▲3四金に△同 竜は▲4七角があったとは言え、
王手竜のキズが生じたのは痛かったです。

上図▲同 龍は底歩を無効化する着想ですが、
▲同 角~▲6三角成の筋も相当嫌でした。

上図以下
△6四金 ▲同 龍 △同 歩 ▲5五角 △3三銀 ▲3七角(下図)

△6四金は被害を最小限に食い止めたものですが、
それでも王手竜は厳しかったです。

上図は成銀取りになっていますが、
攻めが遠ざかるので△同 と、とは指せないですよね。

上図以下
△6五歩 ▲2八角 △5八飛 ▲6四角(下図)

仕方なく△6五歩でしたが、
銀の食い逃げを許してしまいました。

上図で△5七とはしつこさに欠けるので、
局面が分かりやすくなると思いました。
既に大きな駒損をしているので、と金は大事に使わないといけません。

上図以下
△5五桂 ▲5六銀 △6七桂成 ▲同 銀 △5四飛成 ▲7三角成
△5七と
(下図)

ここは大分挽回したと思いました。
銀が取れても駒損なので、まだ先手良しだけど、
先手が勝つのも大変だろうと。

とは言え、▲4六桂は厳しいですね・・・(下図)

いやー、やっぱり悪いなー。

上図から
△5三竜▲3四桂△同 銀▲4六馬△6七と▲同 香も、
△6七と▲同 香△5三竜▲3四桂△同 銀▲4六馬も、
全く同じ局面なので、手堅く指すなら△5三竜なんですが、
私はあえて△6七と(下図)

前述の通り▲同 香で、どうって事の無い局面ですが、
「取れる竜を取れなかった」「取るべきだったかなぁ」
という後悔を相手に植え付けられる分、精神的に得という判断ですね。
どうあれ局面は苦しいので、盤面外の要素で勝ちに行きます。

汚くないよ、当然だよ。

なお、▲同 香と取られた場合、
△5八竜は▲6八金打、△5九竜は▲3四桂~▲6八銀打の要領で、
先手陣が復活してしまうので、竜はなかなか近づけない。
よって、先手はもう暫く攻めに専念できる(はず)。

上図以下
▲5四桂 △7八と ▲同 玉 △4五角(下図)

▲5四桂と踏み込んできましたが
△4五角まで進んでは、気分は逆転でした。

しかし、実際はそうでもなく、
まだまだ大変と気を引き締めなくてはいけない場面でした。

上図以下
▲5六歩 △5四角 ▲4六桂 △4五角 ▲3四桂 △同 角
▲3五銀 △5六角 ▲6七金
(下図)

されるがままに指していたら、▲6七金でウッ。
△4七角成は▲3四歩で負けてしまいます(▲9六歩大きすぎ)。

平凡に指していたら、また差が広がってしまったようです。
こうなる前に変化しなくてはいけなかったですが、
形勢を読み間違えていたので、変化球を出し損ねました。

上図以下
△同角成 ▲同 玉 △4五金 ▲3四歩(下図)

角を逃げて悪いなら叩き切るしかない。
△4五金もこんなところかと思いましたが、
▲3四歩の局面が難解すぎます。

ここでも色々案を練ったのですが、
どうも勝つイメージが出てこないんですよね。
最後の最後に▲9七玉で負かされてしまう。

ちなみに、▲同 玉では▲同 香の方がもっと悪いと思いました。

上図以下
△5六銀 ▲7八玉 △3五金 ▲3三歩成 △同 桂 ▲5五馬
△4五金打 ▲5四馬 △4三銀 ▲6四馬
(下図)

分からなくなって、
結局△5六銀を決めてから△3五金と取ったけど、
そこから相手の手順が上手かった・・・

▲5五馬からちょくちょこ馬を動かして、
金銀を消費させられたのが痛い。
後手玉は相当寄らなくなったけど、
先手玉もなかなか寄らないです。

後手玉を堅くさせる手順はやりにくいはずで、
発想に柔軟性があるなぁと、感心しましたね。

上図以下
△5五桂 ▲8二飛 △6六歩 ▲同 銀 △6七歩(下図)

△5五桂には▲8八玉と逃げられる方が嫌だった。
▲8二飛だったので、と金を作りながら香車が取れて、
逆転が見えてきたか、と思ったが・・・

上図以下
▲5五銀 △6八歩成 ▲8八玉(下図)

いやー、まだ寄らない・・・
寄らないという事は後手が悪いのか?

相手の学生、形勢に差があると読みが粗くなるけど、
泥沼化するほど力を発揮してくるんですよね。
(これが「展開によっては6段上位クラスの力」の真意)
形勢の変化に敏感すぎて、楽観・悲観が出やすいのかも。
泥沼で、形勢の事を深く考えずに済む局面だと、本来の力が出る感じ。

鈍感な方が得な事って、結構多いですよね。
人間なので、迷いが断ち切れている方が読みやすい。
アマの短い持ち時間で迷いを断ち切るのはなかなか難しいので、
「あぁ、悪くなった・・・」とか「良くなった、余裕~♪」とか考えずに、
淡々と読み進める事を意識するのが良いのかもしれないなぁ。

・・・と、相手の状況を分析しながらの対局でしたが、
長い間難解な局面を考えているうちに、
こちらのマイナス面が浮上していた事には気付いていなかった・・・

上図以下
△5二桂 ▲7三馬(下図)

△5二桂は、最善かどうかは分からないけど、
悪くは無かったと今も思っている。

問題は次の一手。

△7一香(下図)

5五の銀にヒモを付けている▲7三馬にアタックをかけるのは、
発想としてはまずまず、悪くない線だと思っていた訳です。

そこで相手は▲6二馬と切り返して来る(下図)

△5五金には▲3五馬を狙った手ですね。

でも、ここで△7二金と打って良し、というのが勝利のシナリオ。
大駒を持てば先手玉を捕まえやすい。5五の銀も落ちてる、と。

で、ホントに△7二金を打つ直前で恐ろしい事に気付きました・・・

後手の持ち駒が歩ばかりになったタイミングで、
▲2三歩△同 玉▲2一飛とされると、
合い駒無しでいきなり寄り筋になっちゃうんですね。
呼び込んだ馬も滅茶苦茶良いラインで働いてます。
自分の玉はいないものだと思っていたので、盲点でした。

しかし、御丁寧に最後の一歩が先手の駒台に乗っている辺り、
日頃の行いが偲ばれますねぇ。

こういうのは将棋脳の持続力があれば見落とさないんですが、
私の最大の欠点、体力の無さが表に出た形ですね。

上図以下
△3四銀 ▲7一馬 △5五金 ▲8五飛成 △4五金左(下図)

△3四銀は緊急回避で、2三と3五に利かす最善手だと思う。

しかし、▲8五飛成を見て、正直心が折れましたね(笑)
何しろ勝利のシナリオが地獄への道だったというショックで、
ただでさえ心がバラバラになりそうだったので・・・

△4五金左は▲2六桂が厳しいから指しちゃダメなんだけど、
折れた心で指すとこうなっちゃう、という例。

鈍感な方が良い、と分かっていても、
勝ちと思っていた局面から転落して平気でいられるほど、
鋼の精神は持ち合わせていないんじゃー。

上図以下
▲9三馬 △9二歩 ▲同 馬 △8六歩 ▲9七玉 △8七歩成
▲同 玉 △6五銀 ▲8六玉 △7三銀 ▲8四歩 △6六金
▲2六桂 △7六銀
(下図)

追いすがって上図。

先手玉は詰まないので、
適当に必死掛けられて負けだと思ってたんですが、
若さの特権で寄せを読みきられました。

上図以下
▲3四桂 △2三玉 ▲2一飛 △3四玉 ▲3八香 △3六桂
▲同 香 △2五玉 ▲4五龍 △同 桂 ▲2四飛成 △3六玉
▲2五角 △4六玉 ▲4七金 △5五玉 ▲4六銀 △6五玉
▲5四銀 △6四玉 ▲5六桂 △同 金 ▲6五歩 △同 銀
▲同 銀 △同 玉 ▲7六銀 △6六玉 ▲5六金 △同 玉
▲5四龍 △4六玉 ▲4七金
(下図)

途中、無様な手を指せば詰みまでは無いんだけど、
明らかに負け筋なので、実質即詰みみたいなものですね。
▲3八香に△3五金打なんて、ダメ過ぎて指せん)

第3局に関しては、最終盤での私の暴発が目立ちますが、
ハッキリ逆転した局面は無かったんじゃないかなぁ。
微差になってから、差を詰めさせない指し回しが見事でした。
これでまだ10代前半なので、恐ろしいですね。