名人戦棋譜速報
【一日目の中継】
第73期名人戦七番勝負第3局(羽生善治名人 対 行方尚史八段)初日
【二日目の中継】
第73期名人戦七番勝負第3局(羽生善治名人 対 行方尚史八段)2日目
【当ブログ記事】
本日の中継 第73期名人戦七番勝負第3局 行方尚史八段-羽生善治名人 1日目終了時
本日の中継 第73期名人戦七番勝負第3局 行方尚史八段-羽生善治名人 2日目昼休時
本日の中継 第73期名人戦七番勝負第3局 行方尚史八段-羽生善治名人 2日目15時頃
本日の中継 第73期名人戦七番勝負第3局 行方尚史八段-羽生善治名人 2日目夕休時
【棋譜】 第73期名人戦七番勝負第3局 行方尚史八段-羽生善治名人 羽生名人勝利
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先手:行方 尚史八段
後手:羽生 善治名人
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲7八金 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △4二銀
▲3八銀 △7二銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲4六歩 △6四歩
▲4七銀 △6三銀 ▲6八玉 △5四銀 ▲5六銀 △4四歩
▲5八金 △5二金 ▲3六歩 △4一玉 ▲1六歩 △1四歩
▲7九玉 △3一玉 ▲3七桂 △7四歩 ▲6六歩 △3三銀
▲4八飛 △4二金右 ▲8八玉 △2二玉 ▲6八金右 △2四銀
▲4五歩 △同 歩 ▲同 銀 △5九角 ▲3八飛 △4五銀
▲同 桂 △4四銀 ▲2五歩 △同 銀 ▲6三角 △4七歩
▲5八金 △2六角成 ▲4七金 △2七馬 ▲4八飛 △4六歩
▲同 金 △3七馬 ▲4九飛 △9五歩 ▲同 歩 △7五歩
▲同 歩 △9五香 ▲同 香 △4八歩 ▲2九飛 △4六馬
▲2五飛 △3六馬 ▲4三歩 △2五馬 ▲4二歩成 △同 金
▲2七香 △5八馬 ▲6八金打 △7六歩 ▲5八金 △7七歩成
▲同 玉(下図)

上図は2日目夕食休憩時の局面。
ここまでの進行は過去記事を追ってきて下さい・・・
上図から△6九飛が好手という評判(下図)

対し、▲3一銀△同 玉▲2三香成が厳しい筋ですが、
△5二銀が最強の受けで、寄せが難しい・・・
角を渡すと△9九角▲8八合△7六歩で詰み筋に入るので、
先手負けかなぁ・・・という感じです(多分)
行方八段は、当記事最初の▲7七同玉を後悔していましたが、
この詰み筋が生じているのが理由の一つかなぁと思います。
羽生名人は「▲7七同玉は△6九飛で後手やれる」と読んで、
△5八馬 ▲6八金打△7六歩~という捻った攻めを組み立てている訳で、
これはもう全く敵わない、異次元の強さを感じます。
ソフトが苦手にしている、「詰みの一歩手前」の強さが凄いなと。
詰将棋は鍛えられても、こういう感性は鍛えにくいです。
こういうところを感性で何とかしようとするのが間違えてるのかな(笑)
で、本譜は、
▲2四歩 △同 歩 ▲2三歩 △同 玉 ▲2五歩 △同 歩
▲2四歩 △同 玉(下図)

行方八段は玉頭を連打していきました。
玉を釣り上げたからには、上図で▲3六銀と打てないとおかしいですが、
△1三桂と受けられて攻めが届かないんですね。
歩が2枚なら▲2六歩△同 歩▲2五歩なんですけど、一歩足りない。
持ち歩は5枚もあったのに、それでも一歩足りないんですよ。
羽生名人と他の棋士の差は、きっと歩一枚分くらいなんだろうな。
全く根拠は無いけど、何となくそんな事を思ったり。
行方八段▲7六銀(下図)

逆に△7六歩と叩かれて、▲同 玉△8九飛成って事になるとアウトだった。
(△7六歩に玉を引いているようでは大体ダメ)
この銀は凄く粘り強く、勿論良い手なんだけど、
「▲7七同玉は△6九飛で後手やれる」という事実を見落とした分、
行方八段の強さが後ろ向きに使わされている感じ。
ある筋に気付くか気付かないかで、これだけ差が開いてしまうんだ。
上図以下△8九飛成 ▲7一銀(下図)

悪い時は飛車をいじめろ、と言う。言わないか。
まぁ、逆転のテクニックである事は間違いないよね。
でも、羽生名人に掛かると、
まるで終盤講座みたいに勝ちを引き寄せてしまう。
いとも簡単そうに見えるから怖い。
上図以下△6九銀 ▲6八金右 △8六金(下図)

まず、この歩頭金が見えなくちゃいけない。
手拍子で△7八銀成としてしまうと、詰めろを掛け続けるのも大変。
6九の銀は金を取るためではなく、5八を抑える意味が強い。
(でも、うっかり金を取っちゃったりするんだよなー:笑)
上図以下
▲同 歩 △同 龍 ▲6七玉 △5五桂 ▲5六玉 △7六龍
▲8二銀不成(下図)

▲8二銀不成は形作り。
でも、棋力に差がある場合、
プロが形作りをした局面から指し継ぐと結構良い勝負になるから、
格上の人と練習する時に試してみると終盤の勉強になると思う。
まぁ、格上の方が四段以上ないと辛いけど。
実際、上図からの寄せも簡単そうに見えて、
ちゃんと読みきるとなると実は大変。
上図以下△4七銀▲4六玉△6六龍(下図)

合い駒は、先手の持ち駒が悪いから全部詰む。
興味がある方は確認してみて。
上図以下▲3七玉 △3六銀不成(下図)

△3六銀不成に対し、詰まない応接は一つだけ。
これも、興味がある方は確認してみて。
上図以下
▲2八玉 △2七銀不成▲同 玉 △2六龍(下図:投了図)

これは詰むパターン。手順は何でしょう?
・・・って事を、△6九銀と打つ時には読み切ってないといけない。
その局面になれば分かるけど、進めてみたらダメだったって事もあるから。
目分量で△6九銀と打つ習慣が付いてると肝心な時に負けちゃうんだ。
時間があるなら読み切ろうとする努力は必要だよね(自分に言ってます)。
勿論、行方八段がウッカリしている訳ではなく、
詰まされないように逃げていると形が作れなくなるから。
全体的には行方八段が指せていたはず。
どこで逆転したかは分からないけど、
発端が△5八馬である事は間違いないと思う。
△7七歩成に▲同 金なら先手が良かったかもしれないけど、
忙しい終盤で一手緩める技術と精神力が勝利を引き寄せたのかな、と。


