角換わり 角換わり腰掛け銀 後手△6五歩型02 | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

オールラウンドプレイヤーを目指す序盤研究ブログです。最近は棋書 感想・レビューのコーナーで、棋書の評価付けもしています。

今回は、アンケートのコメント返し強化月間中に頂いた、
「竜王戦第2局」というテーマで記事を書いていきたい。

竜王戦第2局と言っても、
最早何の事だか分からないくらい時が過ぎてしまったのだが(遅筆深謝)
要するに角換わり腰掛け銀 後手△6五歩型の事である。

この形については以前記事にしているのだが、
竜王戦第2局、というよりは第24期竜王戦で定跡が進化したので、
今回は追記という形で書いていきたい。

参考記事:角換わり 角換わり腰掛け銀 後手△6五歩型

初手から
▲2六歩 △8四歩 ▲7六歩 △3二金 ▲7八金 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △4二銀
▲9六歩 △9四歩 ▲3八銀 △7二銀 ▲4六歩 △6四歩
▲4七銀 △6三銀 ▲6八玉 △3三銀 ▲5八金 △5四銀
▲5六銀 △6五歩 ▲1六歩 △1四歩 ▲3六歩 △4二玉
▲7九玉 △5二金 ▲3七桂 △3一玉(下図)
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この戦型の重要なテーマは「手番」と「パス」と言われている。

重要な局面は下図。

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上図で、手番が後手ならば先手有利というのが定説。
詳しくは前記事 に書いたので、興味があれば読んで頂きたい。

しかし、△3一玉の局面から先手が自然に組むと、
▲8八玉 △4四歩 ▲2五歩 △2二玉 ▲4八金 △4二金右
▲2九飛 △4三金直(下図)
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と進み、局面は同じなのに手番だけが先手になってしまう。

よって、第24期竜王戦における丸山九段は、
形が決まってしまう前に「パス」の可能性を模索していく。

まず、第2局でのパス戦略は▲4八飛(下図)。
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記事内容の特性上「パス」という言葉を使わせて頂いたが、
▲4八飛自体は相手の手を限定している意味がある。

右四間飛車に振られてしまっては△4四歩が突きづらく、
後手は玉を囲うくらいしか手が残っていないのだ。

上図から
△4二金右 ▲8八玉 △2二玉 ▲4七金(下図)
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△2二玉のタイミングで▲4七金がきめ細かい。

この戦型で後手が目指すべきは、あくまでも「後手目標図」。
少しでも組み方を間違えると転落してしまうのだ。

例えば上図で△7四歩などと指すと、すかさず、
▲2五桂 △2四銀 ▲6五銀 △同 銀 ▲5五角で終了形。

ただパスすれば良いというものではなく、
先手の仕掛けを封じながら「後手目標図」に向かって行かなくてはいけない。
(この辺りの複雑さが、形勢互角の割に追随者が少ない理由かと思う)

よって、後手に残された手は△4四歩くらいなのだが、
そこで▲2五歩が手順である(下図)。
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△4四歩で王手飛車の筋が無くなったので、
▲2五歩と伸ばすのは自然な手だ。

この局面で△7四歩と突いたのは、佐藤康光八段。
平成10年の名人戦だから大分前の話なのだが、
今でも当時の仕掛けをベースに局面を組み立てられると思う。

上図以下
△7四歩 ▲6四角 △9二飛 ▲4五歩 △同 歩 ▲同 銀
△同 銀 ▲同 桂 △4四銀 ▲5六金(下図)
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最終手▲5六金の味が抜群に良い。

上図以下△5九角と打って難しい戦いが続いたものの、
当時の解説では先手ノリの声が多数だったと記憶している。

私は、この将棋から、
「△6五歩型で△7四歩を突くのはリスクを覚悟しなくてはいけない」
という認識になったと解釈している。

よって、別案を考えなくてはいけないのだが、
「後手目標図」を目指せる自然な手というのは案外少ない。

本来、▲2五歩の局面では△4三金直と指せなければいけないのだが、
▲2八飛と戻られると手が難しい(下図)。
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上図から△4二金引は
▲4五歩 △同 歩 ▲同 桂 △4四銀 ▲4六歩
と進み、2筋の歩交換が出来れば先手が指しやすくなる。

また、△9二香と手待ちするのも、
▲4八金 △4二金引 ▲2九飛 △4三金直 ▲1八香 △9三香
▲2七飛 △4二金引 ▲2九飛 △5二金 ▲4五歩 △同 歩
▲3五歩(下図)
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で、先手が打開出来そうだ。

この時、仮に△9一香型、あるいは△9二香型ならば、
△8六歩 ▲同 歩 △8五歩 ▲同歩 △9三桂
で、十分対抗できる。

△9二香は、玉周辺の条件を変えずに先手に手を渡せる「便利な手」だが、
早い時期にこのカードを使うと、後の手待ちが「△9三香」になり、
△9三桂の活用を失う事になるのだ。

そこで、後手は「後手目標図」を放棄し、
新たな型を模索する必要が出てきた。

それが本譜△1二香である(下図)。
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この手は当然穴熊を見せた手で、
いかにも「渡辺印」の一手なのだが、
それと同時にあまり指したくない手でもある。

というのも、次の仕掛けが見え見えだからだ。

上図以下
▲4五歩 △同 歩 ▲同 桂 △4四銀 ▲4六歩(下図)
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▲4五歩から仕掛けて、△4四銀と上がらせれば、
△1二香自体の価値は消滅する。
ハッチを奪われては穴熊に出来ないからだ。

手を殺し、相手の無理を誘って咎める事は、
一番リスク無く優位に立つ方法なので、
ここでは丸山九段も手応えがあったのではないだろうか。

しかし、この将棋に関してはそう単純ではなかった。

上図以下
△6四角 ▲1七香 △3三桂(下図)
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△6四角が急所の一手で、
▲2八飛には△4五銀直を用意している。

先手も▲1七香とかわして、次の▲1八飛を見せるが、
更に△3三桂とぶつけたのが好手順だった。

先手玉は△8六桂が入ると薄く、
じっくりと攻めを組み立てる余裕が無くなってしまったのだ。

上図以下
▲1五歩 △2五桂 ▲3五歩 △同 銀 ▲6六歩 △8六歩(下図)
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▲1五歩からは苦心の手順。

△8六桂に対抗できる速度の攻めを組み立ててしまう辺り、
「流石に角換わりのエキスパートだなぁ」と感心していたのだが、
△8六歩が切り返しの妙手だった。

▲6六歩を△同 歩と取ると、▲1四歩~▲6五歩で後手が困る。

しかし△8六歩が突き捨ててあると、
▲6五歩に△8六角が利くのである。

上図以下
▲同 歩 △6六歩 ▲6八飛 △1七桂成 ▲6六飛 △6五歩
▲同 銀 △5五角(下図)
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▲8六同歩は利かされの意味があるので、
▲6五歩と指してみたいところでもあるが、
△8七歩成 ▲同 金 △8六歩 ▲9七金 △4五銀 ▲6四歩
△5六銀 ▲同 金 △8七銀 ▲7九玉 △8五桂 ▲8三歩
△同 飛 ▲8四歩 △7七桂成 ▲8三歩成 △3七桂成(下図)
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と進んだ局面は、
▲1八飛 △2七成桂 ▲4八飛 △3七成桂・・・の千日手の公算が高い。

よって本譜の進行は仕方ないようだが、
△5五角の局面は後手が戦えると見る向きが多いようだ。

第2局での▲4八飛は、途中までペースを握っているように見えたが、
渡辺竜王の△6四角からの構想が巧みで、
成功したとは言い切れないようだ。


そこで、丸山九段は第4局で更なる工夫を見せる。

△3一玉以下
▲4七金 △4四歩 ▲2五歩 △4三金右 ▲8八玉 △2二玉
▲4八金 △4二金引 ▲2九飛 △4三金直 ▲6九飛 △6二飛
▲5九飛(下図)
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△4三金直で「後手目標図」は完成したが、
▲6九飛 △6二飛 ▲5九飛という打開方法が斬新だった。

▲6九飛には△6二飛しかないが、
△6二飛自体は先手玉に響きが無いので、
最終的には△8二飛と戻したい。

しかし、
▲5九飛と途中下車されるとそうはいかない。
△8二飛には▲2九飛で、念願の「手番入れ替え」が叶うからだ。

上図以下
△9二飛 ▲4七銀 △8二飛 ▲6九飛 △6二飛 ▲5六銀(下図)
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複雑で申し訳ないが、
上図は、前図▲5九飛と寄る一手前の局面を後手番にする事に成功している。

何でこんな手順が成立したかと言うと・・・
▲4五歩からの仕掛けを見せた「後手目標図」における手番入れ替えと、
▲6六歩からの仕掛けを見せた上図における手番入れ替えを組み合わせる事で、
△4三金直~△4二金引(場合によっては△5二金)というパスを封じ、
後手に残された△9二飛~△8二飛~△6二飛という「奇数パス」を、
▲4七銀~▲5六銀という「偶数パス」で崩す事によって、
手番を入れ替える事が可能になった、というわけだ。

・・・とは言え、自分でも何を言っているのか分からないので(笑)
一手一手見ていきたい。

まずは▲5九飛の局面(下図再掲)。
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ここで△4二金引と指すと▲2九飛で困る。
△4三金直や△8二飛には▲4五歩で打開が可能となるから。

よって、後手は▲2九飛とされた時に「後手目標図」にするため、
「奇数パス」を準備しなくてはいけない。

それが上図からの△9二飛で、
一手余計な手を挟んで△8二飛と戻る「奇数パス」に成功。
今すぐの崩壊は防ぐ事が出来た。

しかし、そこで▲4七銀が▲5六銀と戻る手と二手一組の「偶数パス」(下図)。
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ここで△6二飛という手もあるが、
▲2九飛 △9二飛(△8二飛は▲5六銀でパスに成功) ▲6九飛 △6二飛 ▲5六銀
と打開する手がある。後手は▲6九飛に△6二飛が限定されているのが泣き所だ。

そこで△8二飛と指すよりないが、
▲6九飛 △6二飛 ▲5六銀で前出の図になる訳だ(下図再掲)。
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ごちゃごちゃしていて申し訳ないが、
要するに、△6二飛~△8二飛の「偶数パス」が
△6二飛~△9二飛~△8二飛の「奇数パス」に変わったタイミングで、
▲6九飛 △6二飛の交換を入れられると一手ズレるのである。

・・・まだ説明がごちゃごちゃしてるなぁ・・・日本語って難しいですね。
まぁ、ゴニョゴニョやってれば、いつか一手ズレるんですよ(笑)

そんなわけで、上図は後手が困った図。
「後手目標図」に帰る事は出来ない。

そこで渡辺竜王は△1二香(下図)。
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△9二香よりも△1二香の方が価値が高い、
っていうのが気付きづらいですね。

というのも、上図から▲2九飛 △8二飛と進んだ本譜は、
先手が有利と思われていた下図で、△1二香と指したのと同じ事なので(下図再掲)。
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上図で△1二香が有力なら、
「そもそもこれまでのパス合戦は何だったのか」って話になるので、
この形は先手を良くしたい局面なんですが、
現在の所、ハッキリした手順はわかっていません。

竜王戦は△1二香以下
▲2九飛 △8二飛 ▲1八香 △4二金引 ▲4五歩 △4三金直
▲4四歩 △同 金 ▲2八飛 △4三金引 ▲5八金 △4二金引
▲4八飛 △1一玉(下図)
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という、素人(私の事です)には難解すぎる進行。

渡辺竜王は△1一玉の局面を「まずまず」と見ていたようですが、
猛攻を食らうのが目に見えているので、私は先手を持って指してみたいです。

余程真理が追究されない限り、
竜王の穴熊感覚は、凡人では真似出来ません(笑)

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角換わり腰掛け銀 後手△6五歩型02
いかがだったでしょうか。

噛み砕こうと思っても、元の作りが難しすぎて、
私程度の筆力では簡単に書くのは難しいです。
(元々、丸山角換わりは複雑怪奇な一面があるし)

第4局の△1二香によって、
後手△6五歩型のパス合戦に終止符が打たれたと思うので、
穴熊を攻略出来るかどうかが今後のカギとなるでしょう。

今回の記事を動く盤面で見たい方は、
将棋 序盤チャート集 でどうぞ。

しかし、
動く盤面を準備したものの、
文章で理解した方がまだ分かりやすいかもしれません。
進行が絡み合っているので(苦笑)

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