読者の皆様こんにちは。雁木師でございます。今日は当初の予定より1週早いですが「将棋ウォーズ戦記」のコーナーでございます。
実戦の紹介の前に、最近のウォーズの近況をお話しします。最近は指せば指すほど弱くなってる印象があります。得意形でも負けるようになったり、そもそも得意戦型にさせてくれない時点で苦戦を強いられているという悪循環で達成率が低下。二段は維持していますが達成率はついに1桁台に突入しました。
そんな中ではありますが、今回取り上げる実戦譜は得意型と見せかけての将棋を見ていくことにします。今回は初手から振り返ります。(持ち時間設定は10分切れ負け、後手番が私でお相手の方は10切れ初段です)
初手からの指し手
☗7六歩 ☖8四歩
☗2六歩 ☖8五歩
☗7七角 ☖3四歩
☗6八銀 ☖3二金
☗2五歩
(テーマ図)
今回はこちらをテーマ図とします。手順は「親の顔定跡」と前後はしますが角換わりの出だしです。余談ですが「親の顔定跡」とはニコニコ生放送で生まれた言葉で、タイトル戦で角換わり腰かけ銀の採用数が絶頂期だった5年ほど前に生まれました。その由来は、角換わりの出だしの進行が何度もタイトル戦などの中継で見慣れた光景だったことから「親の顔より見た定跡」すなわち「親の顔定跡」と呼ばれるようになったのです。
本譜も角換わりの進行で進んでいますが、後手はここで1つの分岐点を迎えます。定跡なら☖8八角成と後手から角交換しますが、本譜の私は角交換をしませんでした。☖8八角成の代替策はもちろん用意しています。
(テーマ図からの指し手)
☖3三角 ☗同角成
☖同金 ☗7七角
(1図)
テーマ図からの☖8八角成の代替案は☖3三角。狙いは先手から角交換してもらい、3三の地点を金でカバーするというもの。こうすることで、後手から角交換したときと比べて早く3三の地点がカバーできる「手得」の受けで、ここから早繰り銀の攻めが狙いです。これは以前旧ブログ時代にご紹介した「サザンハヤクリ」という戦法で、実際に書籍もございます。
(詳しくはこちらの記事をご参照ください)
実戦は☖3三角に対し、お相手が☗同角成と角交換の誘いに応じたことで☖3三金型が成立。あとは、右辺の攻めを狙っていこうとしましたが☗7七角を見て少し考えました。1図の局面は私にとっては早くも未知の世界で、このまま早繰り銀を目指してもいいものか迷いました。そこで思い切った決断を下します。
1図からの指し手
☖2二飛
(2図)
相居飛車の将棋から一変し、私は向かい飛車に方針転換。阪田流向かい飛車の布陣です。
方針転換の理由は2つ。1つ目は先手の飛車先の歩が2五の地点まで伸びていること。向かい飛車の基本の1つは、相手の伸ばした歩を逆用することにあります。
2つ目はお相手が角を手放したこと。持ち駒の角を早い段階で打つことは、早くも手放すということなので、その瞬間に角を手放して得る戦果が乏しいと判断して飛車を振りました。ただし、先手の角のラインに後手の飛車が間接的に当たっているのは気がかりな部分です。
2図以下の指し手
☗1六歩 ☖1四歩
☗7九金 ☖9四歩
☗4八金 ☖6二玉
☗6九玉 ☖7二玉
☗3八銀
(3図)
2図からはお互いに陣形整備が続きます。しかし、3図の☗3八銀は後手にチャンスを与える形になりました。ここで持ち駒を使えば、後手が早くも優勢に立ちますが…。
実戦は3図から4秒の考慮で☖4二銀でチャンスを逸しました。正着は☖3九角で飛車金の両取りがかかります。いくら切れ負けとはいえ、持ち時間はたっぷりありますからもう少し読みを入れてもよかったと反省せざるを得ません。実戦は☖4二銀から駒組みが続き、次の局面からお相手が仕掛けました。
(4図)
お相手の囲いはelmo囲い。私は振り飛車ミレニアムに近い囲いを目指しましたが、その瞬間に相手が仕掛けました。4図は☗6五歩で☖4二角と引かせて仕掛けの糸口をつかむ局面。右四間飛車の攻め筋である4筋から仕掛けます。
4図以下の指し手
☗4五歩 ☖同歩
☗同桂 ☖2五歩
☗3三桂成 ☖同角
☗同角成 ☖同金
(5図)
結論から言えば、お相手の仕掛けは成功しています。私の応手ミスは、手順の☗4五同桂に対する☖2五歩が悠長すぎたことにありました。☖2五歩では☖4四歩で受けるのが最善手。実戦は☖4四歩を怠ったことで、5図からお相手の3手1組からの攻めがかなりの激痛でした。皆様は分かりますか?
それでは正解です。正解は
☗4三飛成 ☖同金
☗3二角
これで飛車金両取りが実現する形になりました。実戦はこの両取りを☖4一飛打で受けましたが
☗2一角成 ☖同飛
☗3二銀
で両取りのおかわりを喰らい、陣形の差もあり先手優勢で進行します。そして迎えた6図の局面がこちら。
お相手の猛攻を私がなんとかしのいで迎えたこの局面。☗8四桂の王手を☖7一玉でかわしましたがかなり危険な逃げ方でした。この時点で持ち時間はお相手は7分32秒、私は7分10秒とハイペースの指し手です。先手はここで決めに行ってもいいものか、それとも一度持ち駒を補充するべきか…。
実戦は6図から☗7二金と決めに行きましたが、棋神解析では時期尚早との評価。代えて、☗1一飛成と香車を補充する手がよかったようです。☗1一飛成は☖2一香で受かりますが構わず飛車交換から☗3二飛車として攻めを継続させるのが一例。
また、6図から☗5二金で寄せを目指す手も有力で、要駒がない後手陣は苦しい受けを強いられることになります。
実戦は
☗7二金 ☖同飛
☗同桂成 ☖同玉
☗4二飛打 ☖6二金打
と二枚飛車を許しながらもなんとか防ぎきって反撃のチャンスを待ちます。
そして、お相手の攻めがついに切れたスキに私が反撃に転じました。
(7図)
7図は☖6六桂打と王手をかけた局面。この時点での残り時間は、お相手が5分37秒、私が5分34秒です。ここでのお相手の可能な応手は3択
①☗6六同銀
②☗6八玉
③☗8九玉
実戦は次の一手から後手勝勢の流れに変化しました。さて、先手の正しい応手は?
では正解です。7図からの最善手は③☗8九玉でした。理由としては、2枚の金の陰に隠れる格好となり、飛車がない後手は継続手に乏しくなってしまいます。
実戦は②☗6八玉でしたが、この一手は一手バッタリと呼ばれる一着。なんと☖5七銀から詰んでしまいます。以下
☗5九玉 ☖4八銀打
☗同飛成 ☖同銀成
☗同玉 ☖2六角
☗3七香 ☖同馬
☗3九玉 ☖3八香
☗4九玉 ☖3九飛
までの即詰みになります。
なお、①☗6六同銀は単に☖6六同桂から
☗6七玉 ☖8七歩成
☗同玉 ☖5八銀
で後手の攻めがつながります。ポイントは☖8七歩成と成り捨てを入れてからの☖5八銀で、単に☖5八銀では☗同金☖同桂成の瞬間に☗8五香の王手が受けにくくなります。☖8七歩成を入れることで☗8五香に☖8三歩で受けることを可能にさせているのです。
では実戦の進行に戻ります。実戦は7図から
☗6八玉 ☖4六角
☗5七香 ☖4八銀
☗4九桂 ☖同銀不成
☗6二金 ☖同銀
☗5二龍
と進行します。
(8図)
手順の☖4八銀は攻めを継続させる狙いでしたが変調でした。あっさり☖5七同角成からわかりやすく寄せに持ち込むのが最善手で、先手玉は受けなしになります。実戦の応手は☗4九桂と懸命の受けに、素直に☖同銀不成と応じてしまい、またももつれる予感に。持ち時間もまだ5分を切ったばかりだったので、もっと読みを入れるべきだったと後悔ばかりです…。
さて、8図の☗5二龍は次に☗6二龍が狙いですが、私はこのタイミングで一気に決着をつけました。
8図以下の指し手
☖5八金 ☗同銀
☖同銀成 ☗同金
☖同桂成 ☗同玉
☖6六桂 ☗6八玉
☖6七銀 ☗同玉
☖5八銀 ☗6八玉
☖6七金
まで130手で私の勝ちとなりました。(残り時間:お相手4分19秒 私4分31秒)
(投了図)
8図から一度6筋の駒を清算させてから再度の☖6六桂打が決め手です。あとは☖6七銀で誘導させてから即詰みに討ち取るという流れで先手玉を詰ますことに成功しました。
一局全体を振り返ってみると、序盤、中盤、終盤と要所要所で早指しゆえのミスが目立った印象のある将棋でした。こんな将棋を指しているから達成率が下がっていくのかと思うと、もったいない気もします。もう少し読みの精度を高めて、落ちないように頑張りたいと思います。
以上で将棋ウォーズ戦記を終わります。さて、来週は重大発表を行う予定にしています。詳細は当日にお話ししたいと思います。
今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。