将棋ポエム「投了」 | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。話題の豊島ブートキャンプを始めた雁木師でございます。今日は将棋ポエムの作品発表を行いたいと思います。早速作品を発表します。

 

 

投了

 

「負けました」

その一言を

言うだけで

 

全てが終わる

そして始まる

 

負けることで

全てが止まる

 

記録も栄光も

棋士生命も

そして夢も

何もかも

 

でも負けは

始まりでもある

 

新たな記録の始まり

新たな道への誘い

そして決別も

 

「負けました」

これはただの

終わりではない

 

終わりを告げて

始まりを迎える

 

投了は

終わりと始まりの

交差点

 

「負けました」

その一言は

終わりと始まりの

区切りとなる

 

 

 

解説:今回の作品はいかがだったでしょうか。ここからは詩と将棋用語の解説に入ります。

まずは詩の解説から。今回は、キーワードを散りばめて投了の瞬間を表現した作品です。具体的に言えば、「『負けました』」「終わり」「始まり」が今回の詩のキーワードとなります。

「負けました」にあえて「」を入れたのは、棋士の肉声を表現したかったという意味合いがあります。将棋の場合、決着をつけるときはプロアマ問わず対局者が「負けました」と言って決着するケースがほとんどです。将棋アプリやゲームなどでは、玉が詰めば自動的に負け扱いになるシステムもあります。ただ、人間同士の対局の場合、プロ棋士の多くは詰みが分かった時点で、自玉が詰んでいない状態でも投了することがほとんどです。

負けを認めることは辛いと聞きます。いわば自分の弱さを認めるわけですから。しかし、負けを受け入れることで次へのステップにつながる。そうやって教えられたという方もいらっしゃるかと思います。

さて、話を詩の解説に戻します。冒頭は短歌調の「五・七・五・七・七」で始めました。これは、短歌に凝っている私の特徴と考えています。良し悪しは別にして、ぜひ入れておきたかった文章です。主張点としては終盤の文章。

投了は

終わりと始まりの

交差点

という部分です。この部分は入れておきたかったのですが、だったら次の「『負けました』」から始まる文言は無理に入れなくてもと思ったのです。しかし、「『負けました』」で始まって「投了」で締めるのもどうなのかと考え、蛇足覚悟で最後の文言を入れてみました。

詩の分類でいえば「口語自由詩」です。使用した技法は特にありません。

 

※今回の参考文献のサイトはこちらから。

 

ここからは、将棋初心者の方のための将棋用語の解説です。今回は「投了」についてです。前述したとおり、将棋は人間同士の対局では負けたほうが「負けました」と言って決着がつきます。これを「投了」と呼ぶのですが、これは他のボードゲームでも同じで囲碁では投了に決着がつく場合を「中押し勝ち」などと呼びます。チェスでは自分のキングの駒を倒すことで投了の意思表示になるともいいます。

※参考サイトWikipedia

 

では将棋の場合において投了以外での決着は存在するのかと言いますと、記憶に新しいのは「マスク着用」をめぐる反則負けでしょうか。

以前、旧ブログ時代に名人経験者である佐藤天彦九段が、マスク着用義務違反による反則負けの判定が下されたことが将棋界の枠を超えて社会現象にまで発展したことを記事にしました。

また、今年に入ってから日浦市郎八段が「鼻出しマスク」をされていたことが原因で3度の反則負けの判定が下されました。のちに日浦八段は棋戦運営に支障をきたしたとして3カ月の対局停止の懲戒処分を受けたのですが、ご本人は先日、この懲戒処分を不服として日本将棋連盟を相手に損害賠償を求める訴えを起こしました。

なお、騒動の発端となった「マスク着用規定」は現在は廃止されています。

 

マスク着用規定以外での将棋の規則において、投了以外の決着方法が実現したことは私が見聞きした限り、1度だけあります。旧ブログ時代にご紹介した「入玉宣言法」という判定勝ちです。

入玉宣言法については上記記事リンクをご参照いただければと思いますが、相手の玉を詰ませば勝ちとなる前提のゲームにおいて、このような決着方法はプロ棋戦・女流棋戦を通して前例がなかったと言えます。

ちなみに二歩や王手放置といった盤上での反則負けを犯した場合は、その時点で反則をした側が投了することがほとんどです。アマチュアの大会では、第三者の反則の指摘で決着がつくケースもあります。

 

さてこの「投了」という作品ですが、書いたきっかけは今年の3月。棋王戦第4局で藤井聡太竜王が渡辺明棋王(いずれも肩書は対局当時)に勝利し、棋王を奪取された時に思いつきました。この作品は読んでいただいたらお分かりかと思いますが、敗者の視点から書いたものです。この詩の文言の中に

「負けることで

全てが止まる

記録も栄光も

棋士生命も

そして夢も

何もかも」

 

という言葉を用いたのですが、「記録も栄光も」という部分は渡辺明九段を想像して書きました。当時の渡辺九段は棋王戦の連覇記録を更新していたのですが藤井聡太竜王名人に奪取を許し、連覇記録も止まってしまいました。のちに渡辺九段は名人のタイトルも藤井竜王名人に奪取を許し、2004年に初の竜王位を奪取して以来20年近くタイトルを保持していたのが無冠になりました。

「棋士生命も」というのはこれは将棋界の引退規定の中にある、「強制引退規定」と呼ばれる規定にさらされた、負けたら引退となる棋士を想像して書きました。引退の規定については下記リンク記事をご参照ください。

※順位戦についてと書いてありますが、フリークラス棋士の引退規定について書かれています。

 

「そして夢も」についても書いてありますが、これは退会が決まった奨励会員を意味します。いずれ奨励会についてもポエムの作品を発表したいと思いますが、奨励会には年齢制限があり、26歳までに四段昇段を果たさなければ原則として退会となります(勝ち越し延長規定で29歳まで在籍できる場合もあり)。「夢」とはもちろんプロ棋士のこと。地獄とも呼ばれる三段リーグを勝ち残るのは至難の業とも言われており、長く在籍できる奨励会三段は一握りと言えます。

 

こうした、敗者の思いと負けを昇華する希望を込めてこのポエムを書きました。ここまで読んでくださった皆様には、この作品はどう感じたのでしょうか?ぜひ、ご意見やご感想、リクエストなどをコメントでお寄せいただけると嬉しいです。次回の作品紹介は8/13(日)を予定しています。次回の作品もどうぞお楽しみに。

 

 

 

 

近況:豊島ブートキャンプ

最近Twitterの将棋界隈で「#豊島ブートキャンプ」というツイートを見かけます。私もこの言葉の由来については正確には把握していませんが、とある方のnoteの記事に詳しく書かれております。

 

記事によれば、豊島ブートキャンプ誕生のきっかけは先月18日放送のNHK将棋フォーカス。豊島将之九段が4月から講師を務められているNHK将棋講座内での視聴者の方からの質問コーナーから

 

5手詰を解くコツを教えていただけないでしょうか?

 

というご質問への回答にありました。豊島九段の答えは

 

「とりあえず3手詰を見た瞬間解けるようになるところまでやりこむことが大事

 

というもの。この発言に、アシスタントを務める山口恵梨子女流二段が

 

「いきなりブートキャンプきたぞ」

とツッコミ。豊島九段はさらにこのような発言も。

 

「5手詰と言っても2手+3手みたいな感じなので、

3手詰を見た瞬間解けるまでやっていって、

1分くらい考えて解けなかったら答え見て200問くらいやってください

 

この放送の夜、豊島九段がこんなツイートをされました。

 

 

翌日、山口女流二段もキャンプへの参加をTwitterにて表明。

 

 

 

これに豊島九段が反応。

 

 

ここまでが「豊島ブートキャンプ」の誕生とトレンド入りまでの経緯です。

 

豊島ブートキャンプブームで注目された本がこちら。

 

詰将棋ハンドブックシリーズの3手詰の書籍です。かつて旧ブログ時代に詳細を書きましたので、内容はこちらでご確認いただければと思います。

 

 

 

 

また、豊島九段がツイートでご紹介された村田顕弘六段の「2手詰」という書籍ですが…。検索をかけて見たところ、こちらの書籍かと思われます。

 

3年半ほど前に発売された文庫版の書籍です。残念ながら旧ブログ時代には取り上げてなかった書籍ですが、amazonレビューの評判は上々のようです。1手詰を卒業された方、3手詰に抵抗がある方は1度こちらの書籍を試してみてはいかがでしょうか。

 

 

で、私もこのブームに乗っかって(?)、再び詰将棋ハンドブックシリーズのページをめくった次第です。ここで、私の豊島ブートキャンプのやり方を説明したいと思います。1手詰と3手詰は1冊をどれだけの時間で読破できるかやってみるという感じでした。5手詰は趣向を変えて制限時間30分で何問解けるかという方式でやっています。

 

 

 

しかし、最近はサボり気味なので反省しなくてはいけません。豊島ブートキャンプをやってみたいという方は、まずは前述の豊島九段のツイートを参考に進めたほうがおススメです。重要なことはサボってもいいので、継続できるかどうか。豊島九段もツイートで「少しずつでも続けていれば、大体何とかなります」と発言されていますので、少しずつでもと詰将棋の本を読むといいでしょう。いきなり私のような一気読みに挑戦するのは避けたほうが良いかと思います。

 

 

さて、長々と話してきましたが今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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