天敵現る⁉ 「雁木破り」をご紹介します | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。雁木師でございます。今日は書籍のご紹介を行いたいと思います。今日紹介するのは、「雁木」に関する書籍でございます。

 

 雁木については3月末に書籍をご紹介させていただきましたが(3/30投稿:雁木の「復活」と「進化」に迫る書籍です)、先月、「雁木破り」という恐ろしい(?)タイトルの本が登場しました。最近採用数は減っているとはいえ、「雁木師」と名乗っている以上、この書籍は紹介しないわけにはいかないと思いまして、ここでご紹介しようかと思います。

マイナビ将棋BOOKS

急所を直撃!

とっておきの雁木破り

でございます。

著者は小林裕士(ひろし)七段、マイナビ出版より先月16日に発売された商品です。ここで、著者の小林七段についてご紹介したいと思います。

 小林裕士七段は1997年に四段昇段(プロデビュー)。2013年には竜王戦で1組に昇級されたことがあります。また、第14期銀河戦で準優勝。第74期棋聖戦でベスト8。叡王戦ではタイトル戦に昇格されたばかりの第3期で本選進出の実績があります。

 小林裕士七段は関西の所属ですが、関東に同じ名前の呼び方をする棋士の方がいらっしゃることから(小林宏七段:こばやしひろし)、「西のこばやしひろし」とよばれることもあります。なお、先日発表された第5期叡王戦段位別予選の七段戦においては、小林裕士七段と小林宏七段が同じブロックに振り分けられ、「こばやしひろし対決」が実現するかが密かな注目を集めています(第5期叡王戦段位別予選:日本将棋連盟サイト)。

 また、大きな体格(身長185cm)をされていることから、某インターネットテレビでは「デカコバ」「西の親方」と呼ばれることもあります。現在は竜王戦は2組、順位戦はC級1組に在籍されています。

 

 それでは、本書の構成に移ります。本書はタイトルの通り、雁木の攻略に特化した内容です。全部で5つの章に分けられています。第1章~第4章までは、相手の雁木に対して、戦法別に攻略パターンを紹介。最後の第5章は、「実戦編」として小林裕士七段の自戦譜を3局紹介しています。自戦譜では、あのニュースターとの対局が掲載されています。また、合間にはコラムとして、アマチュア時代の雁木と「枝豆会」についてのお話が掲載されています(「枝豆会」について気になる方はぜひ本書をお買い求めください)。本書の特徴をまとめるとこんな感じです。

後手番の雁木先手が対抗する形で紹介

・結果図のほとんどが先手有利雁木破り成功)の見解→先手不利の変化は参考図にて紹介

・第1章に約100Pを費やしている

・先手は左美濃に囲う局面が多い(相雁木を除く)

 これらを踏まえたうえで、実際に並べてみた感想はというと…、雁木を使う側としては、序盤の段階で慎重にならなくてはならないのかということに気づきました。私のイメージでは、あえて雁木に組ませてから潰すのかなという感じでした。第3章の相雁木はお互いに雁木に組み合ってから攻めるというパターンでしたが、それ以外は完成する前に攻略を目指すスタイルが多く、振り飛車を絡めた戦型選択も必要かなと感じました。私は三間飛車藤井システムも指すのですが、雁木への変化も良く指します。角道を止める振り飛車と雁木の進行は、途中までは駒組みが似ている部分もあるだけに、振り飛車に振って雁木破りの読みを外すという荒業もありかなと一瞬思いました。

 左美濃の変化については、最近左美濃が相居飛車戦で有力なのは見たり聞いたりしてきましたが、実際に並べてみるとその優秀さがよく分かります。詳しい局面は本書をお買い上げいただければ分かりますが、よく見ると堅くみえる感覚に陥りそうです。

 

 この書籍は、居飛車党の方、とりわけ雁木に苦戦されている方はぜひ読んでいただきたい一冊です。また、雁木を指す方も対策本としては有効かと思います。雁木を最初から学びたい方は、稲葉八段の雁木の書籍(詳細は、冒頭のリンク「雁木の『復活』と『進化』に迫る書籍です」をクリックしてください)を一度読んでから本書を読んでみるとよいかと思います。もちろん、両方熟読して雁木を完全マスターということもできます。将棋情報局のサイトによれば、難易度は中級~有段者向けとありますが、一度稲葉書籍に触れてから本書を読んでみる方法が堅実というところでしょうか(参考までに、稲葉書籍の難易度は将棋情報局サイトでは初級~中級だそうです)。

 

 この書籍を読んで、有益になった、将棋が好きになったというお声をいただければ、これほど嬉しいことはありません。読者の皆様が将棋本を読んで将棋が好きになる、将棋の力が強くなることを祈念して今日は終了したいと思います。本日も最後までお読みいただきありがとうございました。