2手目△8四歩の現状・矢倉編-加藤流と森下システム | 2手目△8四歩の世界

2手目△8四歩の世界

将棋倶楽部24で三段の居飛車党が2手目△8四歩から始まる定跡の歴史および現状について簡単にまとめます。観戦時にガイドとして使っていただければ幸いです。記事中では棋士の敬称は省略します。

 矢倉における先手側の主力戦法といえば4六銀・3七桂型、加藤流、森下システムの3つだといえます。現在はこれに脇システムや藤井流早囲いも加わるかもしれません。

4六銀・3七桂型に関しては以前記したので、本ページでは加藤流、森下システムを扱います。

 加藤流は、▲4六銀と出ずに▲1六歩~▲2六歩と様子を見る指し方で、加藤(一)が長らく愛用していたことから加藤流と呼ばれています。森内が得意として、大舞台で何度も採用したことがよく知られています。

 森下システムは森下が体系化した戦法で、居飛車は玉の移動を優先することで、右辺の形を決めずに相手の動きを見て、対応しようという戦法で、長らく矢倉戦の中心となった指し方でした。


対加藤流専守防衛型

 加藤流に対しては主に専守防衛型、一歩交換型(△7三銀と上がって、7筋交換を狙う)、棒銀(△7三銀~△8四銀~△9五銀からの総交換を目指す)、クイック一歩交換型(6二銀型のまま、7筋交換を狙う)の4つの対策があるが、最有力とされているのが専守防衛型。

 専守防衛型は△5三銀と上がる形で、▲森内-△羽生(2004年6月・名人6)、▲森内-△羽生(2005年6月・名人7)と名人戦で2年連続で登場した形でもある。

 その後、▲1七桂~▲2五桂に△4二銀を省略して△3三桂と迎え撃つ指し方(▲片上-△松尾、2007年2月・銀河)が主流となり、さらに△3三桂▲同桂成に△同金上の村山(慈)新手(▲佐藤(慎)-△村山(慈)、2009年6月・銀河。棋譜データベースに棋譜なし)が現れて、加藤流が減少する傾向がある。

 ▲畠山(鎮)-△行方(2012年11月・順位)でも村山(慈)新手を前に、先手が敗れている。


対森下システム9五歩・4三金右型

 森下システムに△6四角と指すのが初期の対策だが、▲3七桂~▲3八飛から右銀を自由に使っていくのが森下システムの骨子で、盤面全てを使う戦いとなり、互角の戦い。

 森下システムが玉を早く移動する点を狙って、雀刺しが一時期有力な指し方となったが、今度は▲3七銀~▲4六銀から中央を狙っていく深浦流が現れて衰退した。

 現在、最有力とされているのは△4三金右~△9五歩とする指し方。森下システムが後手の動きを待つ指し方なので、後手も動きを見せずに先手の動きを待とうという狙い。以下、先手には▲3五歩△同歩▲同角、▲3八飛、▲3七銀、▲2六歩、▲1六歩など様々な選択肢があるものの、どれも後手が十分力を発揮できる展開になるとされる。

 近年のタイトル戦では2009年の▲木村(一)-△深浦の王位戦で2局(第1局、第6局)で現れている。