今年8月1日で、開業丸14年がたつので、

15年目に突入ですニコニコ

事務所廃業せずに済んでいるのは、ひとえに

お客様によるものです。ありがとうございます。

 

 

士業は仕入れ=勉強なので、ブログで、裁決例や裁判例を書いてきたいと思います。

 

※当事務所との関係がない事件であり、

裁決集から勉強のため記事にしています。

 

  裁決例

では、さっそく、裁決例。

 

本日届いた、月刊社労士からの、社会保険審査会裁決例です。

厚労省のホームページにものっている裁決です↓。

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/syakai/dl/05-h30_31/17_01.pdf

 

難しい内容となります。

 

法定免除と国民年金保険料納付

 

まず、前提として、書きたいことがあります。

大事なことなので、長くなります。

 

障害年金2級以上に該当すると、国民年金第1号被保険者の場合、「法定免除」

といって、国民年金保険料を支払わなくて良くなります(国民年金法89条1項1号)

 

 

もっとも、法改正が行われ、平成26年4月1日分以降に関しては、納付を選択することもできます。

(国民年金法の一部を改正する法律(平成24年法律第62号)。国年法89条第2項)

 

これは、将来、障害が軽減して障害年金がもらえなくなった場合において、

老齢年金の受給額が減らされることを防止するためのものです。

 

法定免除だと、保険料が2分の1納付した扱いとして

(実際は、被保険者が保険料は負担していないのですが、国庫が負担するためです)、

老齢年金額が計算されますが、

納付しておくと、当然のことながら保険料全額納付扱いになるためです。

 

 

 

障害年金は、障害認定日(原則初診日から1年6ヶ月時点)において、

障害状態が障害等級に該当すれば遡及受給できます。

 

たとえば、令和5年に障害年金請求した結果、

障害認定日である平成25年7月1日に2級該当となれば

平成25年7月1日に受給権が発生します。

 

そして、平成25年7月分以降の国民年金保険料が還付されるのですが

上述のとおり、将来病気が軽くなるかもしれないから、老齢年金減らされては困るとして

平成26年4月以降の部分について、

国民年金保険料納付の申出(免除ではなく納付することを選択)することができます。

 

 

国民年金基金の問題

 

 

ここで、問題。では、国民年金基金はどうなるのか??

 

 

 

以前、国民年金基金に問い合わせがことがあり、以下の回答を得ました。

 

平成26年3月以前に法定免除に該当するならば、基金は脱退扱いとなる。

そして、平成26年4月以降に国民年金保険料の納付を申出して、

国民年金保険料は納付することができても、基金は

平成26年3月前に脱退した(させられた)ことにより、

平成26年4月以降に遡及して加入はできない。現時点からの加入はできるが、とのことです。

 

 

つら・・・ですよね赤ちゃん泣き

 

 

国民年金保険料に平仄をあわせ平成26年4月以降部分に関しては

国民年金基金も遡及して納付したことの選択可能にしてよ、と思います。

 

 

以上、前提です。

裁決例 概略と一部引用

そして、これからみていく裁決例は、

裁決例は具体的な年数が「○」で不明ですが、内容から、

障害年金受給権発生が平成26年4月前になります。

 

では、裁決例をみていきます。青字が裁決例引用部分です。

結論から言うと、処分性を否定して却下した裁決となります。

 

 

裁決例から読み取れるのは、

 

黄色い花障害年金請求前から国民年金基金に加入。

 

 

黄色い花知的障害とてんかんで、障害年金2級の受給決定後も、

国民年金保険料と国民年金基金掛け金を納付。

 

 

黄色い花その後、「保険者は、保険料納付に係る事務手続上、

請求人を法定免除対象者として把握しておらず、

請求人に対し、所定の納付書を送付して保険料の納付を促していたものと推認される

 

 

黄色い花その20年以上あと、年金事務所は法定免除対象者と気づいたためか、

国民年金保険料の免除事由該当届を提出するよう促し、提出。

 

 

 

⇒この届けを出そうが出さまいが、

国民年金法第89条第1項第1号の規定に該当する事由が生じたときは、

 法律上当然に保険料を納付することを要しない

のではありますが、

 

この届けにより、

保険料免除事由該当の通知が届き、

また、国民年金基金が資格喪失書類提出を促した書類が届く、

これらに対して、不服申立てにいたった事案です。

 

 

そして、これら通知や促した書面について、

処分性無し、と社会保険審査会は判断をしました。

 

信義則・・・でも社会保険審査会は、救済せず

で、興味深いのは、裁決例のさらなる続きです。

 

 

本件のように保険料の納付義務がないにもかかわらず、

長期にわたり保険料の 納付を継続してきた場合の法律関係につ いては、

その経緯に照らし、信義則上、被保険者の期待の保護に特段の配慮がされてきたところである。

 

・・・(中略。裁決例や裁判例の番号記載)・・・・

 

本件においても、請求人は、法定免除対象者となって以降も

20年以上の長期間にわたり保険料を納付し、

保険者においてこれを収納する関係を継続してきたのであるから、

信義則上、このような関係を基礎とする請求人の期待を保護すべきものであったと考えられる。

 

しかるに、保険者は請求人に対し、請求人が上記のとおり保護される立場にあること、

本件届の提出がその保護を放棄する結果となることを何ら説明しないまま、

単なる事務処理上の過誤として請求人に対処し、

本件届を提出させたものと考えられ、不当といわざるを得ない。

 

しかし、この点について再審査請求手続により、請求人の救済を図ることは困難である。

 

 

 

なお、裁決中の、「しかるに」は「それなのに」、という意味です。

 

 

めちゃくちゃ格好よいこと、言っていたのに、最後に、

「再審査請求手続により、請求人の救済を図ることは困難である」

は、ずっこけました魂が抜ける

 

 

要するに、訴訟提起して、そこで救済を図ってもらってねってことだと思うのです。

 

ちなみに、裁判においても、社会保険審査会同様に

通知・促し文書は処分性無しとされる可能性があるため、

国民年金保険料を納付する地位にあることの確認を求める、当事者訴訟(行政事件訴訟法39条以下)

と国家賠償請求の併合提起、でしょうか・・・。

 

 

 

  裁判例

 

さて、このあと、

この裁決例内にあったた、裁判例もあわせて確認します。

東京高等裁判所昭和58 年10月20日判決・行政事件裁判例集 34巻10号1777頁

 

 

概略は以下です。

 

 

・控訴人は外国籍の方。なお昭和57年1月に国籍要件が撤廃されたが、

それ以前は、外国籍ならば強制加入、任意加入もできない。

(改正前国年法7条1項、8条、9条2号、751条1項但書、5項)

 

・なので、本来、加入できないにもかかわらず、

強制加入被保険者との手続がとられ15年、国民年金保険料を納付した。

その後、老齢年金裁定請求したが、国籍要件が発覚し、被保険者期間有しないため

却下処分がなされた。

 

・任意加入被保険者が誤って強制加入被保険者として資格取得届をした場合は、

任意加入希望しない申出がない限り、任意加入の申し出と見なすとする運用がなされている。

 

・信義衡平の原則によると、控訴人は、国民年金加入手続を取って

老後の生活を年金で維持すること期待していた、

これに対し国籍要件をあらゆる場合に維持・貫徹することが

やむを得ない公益上の必要性にあたらない。

 

⇒国籍要件が充足されたと同視する法律状態が生じているというべきで、

国籍要件充足しないことを理由として却下することはできない。

 

で、請求認容(控訴人勝訴)

です。

 

  社労士としての、障害年金業務上の注意点は、

国民年金第1号被保険者の方が障害年金請求する場合、

2級以上の決定になると、

国民年金保険料や国民年金基金、付加保険料はどうなるか、

の説明は依頼者に忘れずにすること、

 

障害認定日が平成26年3月以前で、遡及請求の場合、特に忘れないように、

が肝要だと思いました。

 

イチョウイチョウイチョウ

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