「秘密」
東野圭吾
青春18切符を使って移動するにあたってきっと暇になるだろうなと思ったので、
ネットで知り合った子からおすすめされたこの一冊を読んでみた。
ーあらすじー
主人公である平介は妻子をもっていた。
しかし、スキー送迎バスに乗っていた2人がバス運転手の過失運転をうけ命に関わるような怪我をする。娘は脳を損傷し嫁は全身にガラスの破片が刺さった。結果妻はなくなり、娘だけが奇跡的回復をとげた。
しかし、意識を取り戻した娘の中身は妻だった。
いわば、見た目は子ども、頭脳は大人の名探偵コナン状態となったのだ。
娘の身体をもった妻。
平介は関わり方を悩む。
妻として接するのか、娘として接するのか。
そして同じように妻も悩む。
一人の女性として新たな人生を歩むのか
娘の人生の代行者として歩むのか
お互いが「新たな恋」に進むか悩んでいく。
また、なぜ事故が起こってしまったのかも深掘りされていき、
その背景も切ないものだった。
ー評価ー
★★★☆☆
東野圭吾が描く文章も魅力的で
読み進めていくごとに惹かれていった。
東野圭吾が作る日本語は「ぐわっと」「ゾクッと」「ドキッと」
させられることが多かった。
また、ストーリも奇妙で面白かった。
ただそのあとに読んだ住野よるさんの「また、同じ夢を見ていた。」
が印象強く、面白過ぎたため、そちらと比較してしまいこのような評価となった。
ー感想ー
Ⅰ
「男にしがみついてるしかない人生なんて惨めだと思わない?」
「俺の扶養家族になっているのが不満だったのか、後悔してたのか」
➡直子の考え方と私の考え方が似ていて共感できた。
夫に養ってもらうことで生きていけるという状況が
私も耐えられないと思ったので看護師を目指した。
自分自身の足で立てるような経済力が精神力が欲しかった。
家事も育児も仕事も同じ量だけパートナーと分けあいたい、
と私は考えているのですごく共感できた。
Ⅱ
「おまえは普通にする権利なんかない」
「お前が俺の妻だっていう事実からは逃げられないんだからな」
➡直子には直子自身の新しい人生を歩んでほしいと私は思った。
でも、平介はそれを拒んだ。
そして最後には直子も自分自身の新たな人生への道を閉ざし、
娘のための人生として生きていくことを選んだんじゃないか、と私は解釈した。
私はなんだか苦虫をかんだような思いになった。
Ⅲ
「このテディベアの正体は、二人だけの秘密ね」
「あの中に指輪が入っていることを藻奈美が知っているはずがないのだ。
あれは直子との間の秘密だった。」
タイトル回収&タイトル考察
➡私はこの小説のタイトルにも惹かれていた。秘密ってなんだろう。
藻奈美はお父さんのことを思って直子のフリをしているんじゃないかと思っていた。
でも実際はその逆で、直子が藻奈美のフリをしてい生きていくということだった。
その表現の仕方が凝っていて私は好きだった。
Ⅳ
直子が橋本多恵子の写真を見つけたシーン
➡ただただ「なおこぉぉぉぉぉおおお!!」ってなった。
その写真を見つけた時の直子の喪失感の気持ちにもなったし、
平介の見つけられてしまったことの焦りと罪悪感も感じたし、
一読者としての「平介なにやってんねん!!!」って気持ちにもなって
感情が忙しかった。
Ⅴ
「やっぱり長靴を履いていけばよかったと悔しがるに違いないと想像し、
傘の下で思わずニヤリとした」
➡この表現が好きだった。
Ⅵ
逸美が駅で二人の背中を見送って二人が手を振ると泣き顔に変わったシーン
➡切なくて、好きだった。
Ⅶ
最初の事故のニュースを私事として平介が見つめていたシーン
➡文章が読者を惹きつけるような、前のめりになるような文で面白かった。
Ⅷ
「逸美が伝えたいことをうまく伝えられない自分に対して苛立っているようだった」っていうシーン➡昔の私のまんまの心情で泣けた。
Ⅸ
直子の左手の薬指の指輪をいじる癖
➡本当に平介のことを愛していたんだろうなと思ったし、
そういった癖が出るほど平介が心の拠り所になってたんだろうなって思った。
Ⅹ
後半の平介、電話に盗聴器仕込んだり、勝手に直子宛ての郵便物開いたり、
勝手に直子の部屋に入ってファイルを探ったり、
すごいプライバシーを侵害していてイヤだった。
前半の平介の善人っプリが響いてなんだか何とも言えない気持ちになった。
完璧な人間なんていない。人には利点もあれば欠点もある。
それを体験させられるような文章だった。
ー最後にー
母にこの小説を読んだ後の感想を聞いてもらっていると
「ほんと親って損だよね、こんなに愛していっぱい面倒をみた我が子が
他の他人に持っていかれちゃうんだから」っていっていて
私にはまだその気持ちはわからないや
って伝えると
「そのうち子どもをもてばわかるよ、今に見てなよ」
って言われて
読者の立場や年齢層によっても
読み方感じ方が違うだろうなと思った。