モノづくりの意味を問いただす

上羽陽子 山崎明子 フィルムアート社 2020

 

土浦市図書館 594.0げ  で発見して 2024現在購入検討

 

本書は 医療や福祉の中の手工芸ではなく市井の人々の手芸や工芸活動の歴史や現代社会におけるハンドメイドブームに触れている論文や対談集である。民博の研究員も書いている。民俗学としての編み物や縫い物などの手芸が中心である。ふつうの生活の中の時間の使い方である。時間の使い方も社会の変化に伴う。震災後の人々のつながりの中に手芸活動、グループの形成、販売や復興支援活動がからむこともあったという。

 

障害者も普通の生活を目指し、またはそこに戻るときに手工芸にこだわる人も居る。が、昔ほどではない。社会も文化も変わった。社会的回復としてのリハビリテーションと手工芸について考えるのにこの本も参考にしたい。

 

かつて手工芸はリハビリテーションの作業療法プログラム種目であった。生業につながる裁縫技術や生活技術が慢性の療養病棟で訓練として施された。アメリカでは結核療養施設で陶芸絵付けを取り入れ、その後廃止された。その焼き物はアンティーク骨董として珍重されている。作業処方、種目の提供という考え方がなくなった。

 

今の手工芸はというと短期入院中の機能回復の手段としての手段になっている。作業療法士も作業技術にすごく精通した人が少なくなってきた。かつては玄人並みの技術を持っていることが誇りの人が何人もいた。

今は不器用で手工芸をよく知らない人、できない人でも作業療法資格が取れる。長期入院や施設入院者を減らそうと国は動いている。一時的な社会への帰属や時間の過ごし方は一時的に提供されるテレビや音楽や運動、SNSなどのほうが個人の利便がよい。

 

 準備や指導に手間暇かかる作業訓練は施設や病院の外に置かれるようになり、独立した福祉事業所が担うようになってきている。就労前準備の目的で手工芸などの活動が用いられることは少なくなり、直接得られるスキルの学習や賃金発生しやすい請負の仕事が作業所では主流である特別支援学校で デューイの教育影響から美術や制作活動を通しての教育訓練の延長上の作業提供に昔の作業療法の面影を見ることがある。