<日本沈没> | 眠れぬ夜に思うこと(人と命の根源をたずねて)

<日本沈没>

エドガー・ケーシーが日本沈没を予言して半世紀が過ぎる今日、映画の世界では二度目の日本沈没をむかえることになった。
小松左京原作、リメイク版日本沈没の公開である。
本作品はカタストロフを描いた作品として、映像はきわめて秀逸であった。このジャンルで、邦画は米国映画に比して稚拙に仕上がりがちなイメージがあったが、それを払拭する大作だといえる。
テーマは、自己犠牲。
刹那的、場当たり的に生き、今が楽しければよいという自己中心的な風潮に対し、アンチテーゼとしての熱いメッセージがこめられていた。

もっとも、大惨事で交通機関も麻痺しているはずなのに、主人公が遠く離れている場所に次々と難なく出没しているなど、設定に対する細かい突っ込みどころは多々あったが、それらは作り話として概ね許容範囲内であった。

残念だったのは、主人公小野寺と玲子との恋愛に違和感があったことだ。
出演者の演技のせいだけでなく、脚本にも無理があったように思う。
玲子が小野寺に惹かれた理由が不明で二人の恋愛が空々しいため、物語としての白々しさが最後までつきまとうことになった。
主人公の自己犠牲的精神発露にいたる原動力の一つが玲子に対する愛情なので、ここはもう少し丁寧に作りこんで欲しいところであった。

映像90点、ドラマ性60点といったところか。惜しい作品だと思う。