真夜中過ぎ、翔は由樹に電話をかけていた。由樹は頷いた。
翔は今夜は帰れない旨を告げ、携帯をポケットに閉まった。
「綺麗なお顔に戻られましたよ」
看護婦が声をかけた。翔は礼を言うと部屋に入った。霊安室に横たわっているヒロム。
康平が頭を下げた。
「本職とモメてたみたいで」
翔は頷いた。
「あの女は」
「別の部屋に、家族が来てて」
しばしの沈黙。
「あの女とは・・・」
康平が静かに話し始めた。
「今年の夏位に知り合って・・・本職に借金があったみたいで、色々ソープとかで働いてたらしいんだけど、どんどんヤバイ仕事に手を出す様になって行って」
康平は涙を拭った。
「すんません、顔洗って来ます」
ヒロムの顔。
そこには苦しみも悲しみも無い。
翔は近くの椅子を引き寄せ、ヒロムを見つめた。
粋に生きような、ヒロムはそう言って去って行った。
いつかのヒロムの言葉を思い出す。
「女無しでは生きられない」
優しかったヒロム。
この世界のルールを一から教えてくれ、いつでも親身になってくれた。
冷たい頬。
もう礼も言えない。
翔はやっと泣いた。
ヒロムは父親と共に岩沢の病院の霊安室に並んで寝かされていた。翔がピストルで撃たれた二人を病院に運ばせた時は二人とも既に手遅れだった。岩沢が入って来る。二人の身体の銃創。
「わしにはその世界の事はわからんが、そういう商売の奴に殺られたんだろう。ど