東京フクロウ4 | 小説のブログ

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柏原玖実といいます

「何で知ってんだ」
「耳にした」
「やばいな。弟がいつも週末あそこでやってんだよ」
「それよっか今日いつもの所かかりが悪いんでここら辺流そうと思うんだけどいいかな」
「いいけど、だったら俺も一緒に、」
「あの、」
 翔は声を掛けて来た男の客を見回した。普段学生は取らない。だが今日は客の入りが悪い。
「どっちにする」
「え?」
 男は翔にそう聞かれて少し戸惑いの顔を見せた。
「初めて、なんで優しい方にって言うか…」

そう聞いてヒロムがぷっと吹き出しかけた。
「じゃあ翔に譲るよ。俺、弟の様子見に行って来るから」
 ヒロムはそう言い残して消えた。翔は煙草を捨てた。
「金あんのか」
 学生らしいその男は慌てて財布を出そうとした。
「馬鹿、こんなとこで出すなよ。場所は決めてあんのか」
 首を振る。
「来いよ」
 翔は首で促した。

 

 その夜、岩沢は自分の病院でミギコのカルテを見ていた。何度も何度も繰り返し。そして息を付く。

ミギコの心臓の雑音に気づいたのは、まだミギコが幼いころだった。それからは暗中模索の日々だった。

翔はそれを知っていてミギコと暮らし始めた.ミギコの痛み。翔の痛み。自分にはどちらも救ってやれない。

ベルの音。岩沢は受話器を掴んだ。ミギコのモニター画面を見つめる。ミギコにつけられている様々なチューブの数値を画面で確認しながら。
「ミギコか。どうした。苦しいか。水は?近くにあるか。少し飲め。そう、そうだ。雫を飲