夕方…

仕事は スムーズに進み、少し休憩でもしようかと思った。

飯田さんを見ると… 
カタカタとパソコンに何か打ち込んでいる。


…オレだけ休憩っつーのもね、、



飯田さんを誘って コーヒータイムにしようか…
だが、仕事の手を止めるのも…な。


そんなふうに考えてる自分に おかしくなった。


…全く、、

オレはいつからこんなに
人に優しい人間になったんだ?




ピコン🎶

携帯に メッセージが届く。


オレの優しさのファクター…
楓から♡  だ。



そろそろ休憩の時間でしょうか?
飯田さんに確認したいことがありまして、
お伺いさせていただいてもよろしいでしょうか?










なんでわかんの?
オレが休憩したいと思ってんのが…

…ふと、、考えてみれば…


楓は いつもオレのお腹の減り具合や、疲れてコーヒー飲みたくなった時や 甘いものが食べたいとか…全部わかって、オレに提供してくれていた。


今までそれがあまりに自然すぎて
疑問にも思わずにいた。


なんでだ?
なんでわかんだろう?

不思議に思いながらも 


了解
待ってるよ


と返信した。

数分後、楓が会社の最寄り駅にある
人気のケーキ屋の箱を片手にやってきた…。

後ろから 上田も入ってくる。

楓は ケーキの箱に注がれたオレの視線に
すぐに気付くと

「…営業の方が、、みなさんで…と 差し入れしてくださって…人数よりもたくさんあったので……飯田さんと専務にもと。専務、ここのチーズケーキお好きでしたよね。」


確かにオレの好きなケーキだし。
めちゃくちゃ美味いけど。


……気に入らねーし!!


ほおおっ!そんなにたくさんのケーキを他の課に差し入れするなんて親切で気前のいいやつの お名前を是非教えていただきたいなっ!」


怒りの沸点が急上昇してるオレに…
楓は 眉一つ動かさない。


「…専務、ケーキに罪はありません。コーヒーいれますので、、食べませんか?」


(○`З´○)


クスクスと楓が笑いだし…

飯田さんや 上田まで…
声を押し殺して笑ってる


(○`З´○)

「ちぇっ。なんだよ。みんなで 笑って 」


楓が傍にきて、
ほっぺたをツンと つついてきた。


…無意識にほっぺを膨らませてたみたいだ///

けど、、んなの わかんねーし。


ここのところ楓の前だと調子が狂うんだ…


頭をポリポリしたら、飯田さんと上田は もう耐えられないかのように声をあげて笑いだした。


飯田「専務っ。楠さんの前では 子供みたいなんですね。」


櫻井「はあ? 子供じゃねーし。」


上田「いやいや、完璧 ヤラレてんすね。楠さん、すげーな。兄貴をこんなにしちまうなんて。」


  …… (-ε -  )))



楓「////////// 専務、いい加減機嫌を直してください。…ケーキ、持ってこない方がよかったですか…」


楓にトーンを落とした声で そう言われれば、

自分の嫉妬心が、楓を悲しませたのではないかと途端に心配になる。


櫻井「…食うよ。楓が持ってきてくれたんだから。…けど、、そいつは 楓にって……持ってきたんじゃねーの?…オレが食っても…」


まだ ガキみてーに駄々こねてるオレに、
楓は、にっこり微笑んだ。


楓「 大丈夫です。…実は昨日 営業に用事があって行った際、プレゼン前で緊張してらっしゃる方がいて、少し質問されたので…余計なお世話かと思いましたが アドバイスをさせていただいたんです。それが幸をそうしたらしく、とても上手くいったようで…先程 お礼に…秘書課のみなさんでと…いただいたんです。」


その優しさを… 
色んなとこで振りまくのはやめてくれ。

そいつ、楓に 完璧おちてんじゃねーかよ。


はあああぁ…

ダメだ。


工藤よりも そっちのほうが心配過ぎんだけど。

楓が 誰かに、、、
惹かれやしないかと…

その瞳に他の男を写されたら、、
オレは…


楓のことになると 
全く自分に自信のないオレが顔をだす。




楓が飯田さんと 2人で話をしたそうにしていたから応接間を使うように言い、


オレは 上田と2人、濃厚なチーズケーキを食っていた。


上田「…帰りは、どうしますか? 楠さんと一緒に帰られますか?」


櫻井「いや、さっき急な接待が入ったんだ。今日 明日は 一緒にいられない。」


上田「では、楠さんを自宅まで送らせていただきます。」


櫻井「ああ。よろしく頼むよ。」


上田「…それにしても 兄貴が、あんな顔するなんて。」


上田の顔が綻んでく。


櫻井「…オレも、、わかんねーんだよ。なぜだか 楓といると…素の自分になってる。楓の前では、カッコつけたくても…カッコつけらんねーし。…いつの間にか、、全てさらけ出してるオレがいて…正直戸惑ってる。」



上田「兄貴…。オレは 楠さんの前で素になってる兄貴が いいなって。…それだけ 気を許してしまえるって素敵な事だと思いますから。」 


櫻井「…サンキュー/////」


上田「…でも、、さっきの件で…楠さんが 飯田さんを庇って頭を下げたときの工藤の顔……殺気に満ちていました。楠さんの行動にイラついたんだと思います。…十分に、気をつけます。」


櫻井「そうか。なぜ飯田さんを狙ったのか、よくわからないが、、庇った楓が 更に疎ましがられる結果になったんだな。」



上田「はい。…工藤は 自分が気に入らないとか、目障りとか…そんな理由で人を虐めてるように感じられました。」


櫻井「…あとは、誰が共犯かってことか。秘書課の面々と、営業部長の青木も…な。」


上田「そうですね。…あと、気になったのが、、楠さんが…あ いや、、」


櫻井「…うん? なんだ?」



上田「……先程のケーキを持ってきた奴 もですが、、楠さんに近付いてくる男が 何人かいまして…それが、好意からなのか、工藤と関係してるのかが わからないので、、少し調べようと…」



櫻井「💢 誰だ? 名前と部署は?」


上田「兄貴、落ち着いてください。」


櫻井「昨日来てた奴らと同じだとしたら、絶対 楓狙いだ。オレが呼び出して 直接聞いてやる。」


上田「兄貴! それは マズいと 」


櫻井「楓にちょっかいだすとか、許せねーし。」


上田「いや、まだ ちょっかいまでは…」




カチャ



楓と飯田さんが 出てきた。


楓「…専務? どうかされました? 」


櫻井「…いや、別に。」


冷静さを装ってみたが、、きっとバレてる。


楓が 上田をみる。
上田は 視線を外し 困った顔をしている。


楓「…そうですか、、あ…今日明日と夜は接待と聞きましたが……村田社長ですよね、、、」


楓の…少し元気のない声。

でも、楓が 何を気にしているのか すぐにわかった。


櫻井「ああ。さっき、急に入ってな。……サクラとみなみは 雅紀に預けることにしたから 大丈夫だよ。」



楓「…そうですか。よかったです。…上田さん、そろそろ行きましょうか。」



上田「はい。」




えっ…

もう? まだオレ、全然 話してねーし。


「…楓。。」


出ていこうとしていた 楓を呼びとめた。


「……はい。」


楓に…触れたい。

手を伸ばして、、でも…出来ない。



「…専務?」


オレを呼ぶ綺麗な形の唇をみつめれば、
その唇に引き寄せられてしまいそうになる。


我慢して瞳をみつめれば、
気持ちを抑えきれない自分が映っている。


うん?
やっぱり…元気なくねーか?


気のせいだろうか?
帰り オレと一緒じゃないから 怖いんだろうか…


「…帰りは上田と一緒に、な。十分気を付けて。」



「…はい。」



「…あと、、ケーキ美味かったよ。ご馳走様。」



「…はい。よかったです。」



いつも通りを装っている楓。



「…どした?」


と聞いても


「…いえ。なんでもありません。では、失礼しますね。」




そんな顔したままの楓と離れるのは嫌で…出来るなら 胸の中に閉じ込めて ワケを聞いてやりたい。


けれど、そんなこと出来るわけもなく…
ただ 見つめていたら…



「…専務///// もう!そんなに見られていたら 帰りづらいです。それに、腕をどけていただかないと…通れません。」



いつの間にか 通せんぼしていたオレの腕。
離れたくないからだろう、無意識の行動だ。



顔を真っ赤にした楓に 少し安心して、
上田と一緒に出て行く楓の後ろ姿を見送っていた