いつもより早く目が覚めた。
体調も 驚くくらい 良くなっていた。




早めに出社すると、楠はもう来ていた。




けれど…


いつもなら直ぐに オレに気付く楠が、心ここに在らずで…空(くう)をみつめ、考え事をしているようだった。





名前を呼ぶも…



気付かない













様子がおかしい…


まさか、何か…された?



既に?    …朝から?





楠の肩を軽く叩くと…




ハッとして、、オレをみた。




「あっ………おはようございます。専務。」




そう言いながら、、視線を外される。




「…おはよう。どうした? 何かあったのか?」



「えっ、、、いえ。何も。」




……明らかに動揺している。珍しく、わかりやすい。




「……何があった?」 




視線を合わせようとしない楠の顔を覗き込む。




その時、、スっと…
楠が 心を閉じたのが、、わかった。





「…何もありません。体調が戻られたようでなによりです。今日のスケジュールの確認ですが」



ファイルを手に オレにスケジュールの確認をしようとしてくる。


何事もなかったかのように、通常業務に徹しようとしているんだ。



それは…ダメ、、だ。



「楠」



楠の言葉を遮るように、
低く 強く…名前を呼んだ。



「…はい」



「…オレの質問に答えろ。何か、あったんだろ?」



「いえ、何もありません。…先程から、なぜ、そう思われるのですか?」



顔色一つ変えずに、そう話す 楠。




なるほど。

やはりそうきたか…

何かあっても、絶対 オレには話さないだろうと、思っていたよ。







どうせ 嫌われてるんだ…



しつこい奴だって、思われたっていい…




「…おまえが 好きだから。いつもと様子が違うのが、わかるんだよ。」



「///// なっ…」




「…斗真から色々 聞いた。…結婚してないって話も。もう誰にも遠慮することなく、いかせてもらうから。…迷惑なら、早めに言えよ?」



「/////////…迷惑です。」



「そんな真っ赤になって言われても、信憑性ないけどな。ま、一応 会社では セーブしとく。」



「会社では? …プライベートで 専務と会うことは 」



「…デートしよ。今夜 空いてるか?」



「////////// 空いてません!!」



「ちぇっ。…誰と、、あっ…斗真か? なら、オレも一緒に」



「嫌です。」



「……斗真と2人で デートは ズルいだろ? …斗真に連絡して、オレも入れてもらおう。」



「専務!!」



「…いやなら、話せよ。…何か されたんだろ?」



「……」



「…心配で、おまえのストーカーになるぞ?」



「……わかりました。」




そう言うと楠は 携帯の画像を見せてきた。




めちゃくちゃになってるロッカー内。


「…愚問だが、楠のロッカーだよな?」



「はい。」



「…何か盗まれたりは?」



「いえ。…確認はしていませんが、盗まれたりは…ないかと。大事なものは…普段から入れていませんし。」




楠の手に、手を重ねた。


直ぐに 逃げようとする手を…
引き留めた。




「…すまない。」



「えっ?」



「…斗真の言うように、コレがオレの秘書に対する嫌がらせなら、全てオレの責任だ。」



「……専務のせいでは、ありません。そんなこと思っていません。」




手を、強く 握った。



「楠、なるべくオレと一緒にいろ。帰りも家まで送る。それに もし、、また何かされたら、必ずオレに話してくれ。」





楠の瞳を捉える。
視線を外させない。




抱きしめたいのを 精一杯我慢した。



その代わりに握っている手を、胸に抱いた。



心配で 心配で、、たまらない。
このまま胸に閉じ込めてしまいたい。



今まで 嫌がらせされた秘書は どんなことをされたんだろう。



同じことを、楠にも?



いや、あのメール主と同一人物なら、楠と付き合ってると誤解してるんだ。


より、酷いことされるんじゃないか?







ん…?




楠が……

真っ赤になって…る。



そう言えば、、さっきから…だ。
頬を赤らめて…俯いてる。




なぜ? 




胸の中の手を指先で 優しく撫でると

楠は顔をあげて…
オレを見つめて 瞳を揺らしている



その瞳は……




えっ、、、



いや、だって…/////




「……あ、あのさ。オレの…勘違いじゃなければ」





RRRRR 🎶





ポケットの中の携帯が鳴り、楠が慌てて 離れていった…