――月曜日――





この会社に勤務して
初めて仕事に行きたくない…と思った。



仕事…というより、、



専務に…
会いたくない。




昨日の今日で、
どんな顔して会えばいいのか…




でも休むわけにも行かず、家を出ようとした時、斗真にぃからメッセージが届いた。




「 おはよう。昨日の件、今夜話そう。」



「…おはよう。…外で 会う?」



「うーん。話の内容が内容だしな。俺んちに来るか?仕事終わったら、連絡するよ。」



「わかった。あと、例のメール 携帯に転送してもらってもいい?」



「いや、、それは会った時に見せるよ。…あ、あとさ。」



「なに?」



「昨日 あれから、翔くんと会ってさ 」









昨日?
会った?


専務、具合悪かったはずなのに…




「…楓が 結婚してない話、しといたよ。その理由も含めて、全部。」










え!!!!!



な、なんで?!


動揺を隠せないまま、すぐに斗真にぃ に電話をかけた。



「もしもし」



「斗真にぃ!どうして 結婚してないこと話したの!!辞めるまでは 誰にも話さないって!!」



「…状況変わったじゃん。不倫だなんて、メールきてさ 」



「だから それは、私が辞めればっ…」



「辞める必要ないだろ? 不倫じゃないし。実は 結婚してないって言えばいい。」



「…斗真にぃが、、イジメのこと心配したんでしょ?」


「それは そうだけど。……言わなきゃいけないだろ?…翔くんにはさ。」



「えっ? どういう意味?」



「…告白されたんだろ?」



「……」



「……楓のこと、マジだって、、言ってたよ。」




…専務、、



胸が…    苦しい…





「楓、ちゃんと真剣に、翔くんのこと考えてみても」



「 生田部長、秘書の派遣登録 まだしてましたよね?」



冷たい声がでた。
感情が 内側に閉じこもっていく。




「え、、ああ。」



「私は 辞めさせていただきます。なるべく早めに次の方をお願いします。引き継ぎは ちゃんとしたいと思っていますので。」



「楓、、そんな言い方…」



「契約期間は 働きたかったんですけど、、もう専務と…一緒にいたくはありません。」




「……楓、、、わかった。落ち着いて。…続きは夜、また話そう。」



「……うん。」




電話を切った。


胸が押し潰されそうだった。



専務に、ずっと嘘をついて
そのことで、悩ませてた。




このまま 何も言わずに 離れたかった



私は もう誰も好きになりたくないから…




ますます、、
仕事に 行きたくなくなっていた。







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会社に着き、更衣室に入る。

私は 私服のまま 勤務しているし、鞄も専務室の自分のスペースに置くから 更衣室は 出社前に軽くメイクを直すのに利用するくらいだ。


ロッカーを開けようとした…



え、、、、?



鍵がかかっていない…



ゆっくり 開けると…

ロッカーの中が、めちゃくちゃに荒らされていた。化粧品のポーチ、折り畳み傘や、常備薬の類い、その他 雑多なものが ロッカー内にばらまかれていた。



何かヤラれるなら まずは ロッカーかな…と、
思っていたから、入社してから一度も貴重品や重要なものは 入れていない。



よかった…



すぐに携帯で 写真を撮った。
何かの時の為に。


幸い 周りに人はいない。
まだ出社には、時間がはやいから。




……けど、、犯人は


私より先に 来ているって、、ことだ。




ロッカーをそのまま閉めて、直ぐに 秘書課に向かった。











―― 秘書課 ――




既に 派遣社員以外の社員、5名は全員出社していた。



私を見ると…



「おはようございます。楠さん。」




と、全員 揃って 爽やかな挨拶をしてくれた。










「おはようございます」




こちらも笑顔で返しながらも、この中に…と思うと、、途端に背筋が冷たくなる。



コピー機で、わざとゆっくりコピーを取りながら全員の様子を伺う。



皆、それぞれに仕事を始めていた。



誰一人 動揺もなく、怪しい素振りもみせない。



コピーが終わり、専務室へ向かった。






昨日のメールと、今朝のロッカーは…
同じ人間?




今まで私を 既婚者だと思ってノーマークだったけど、専務と付き合っていると勘違いして、ターゲットにされた?




それに…そもそも、専務の休日を…見張っているのだろうか…




パソコンを前に 考えていたら



ポンと、肩を叩かれた。




専務…だった。



なんだか凄く心配そうな瞳で 私をみていた。