最近は、スマートウォッチやスマートグラスなど、身に着けるデバイスを見かける機会が増えているように思う。

そんななか、アメリカのノースカロライナ州立大学に所属しているロン・イン氏をはじめとする研究チームは、服に縫い付けられた繊維を“タッチセンサー”にすることに成功したという。つまり、服の一部をスマホのタッチパネルやPCのキーボード、ゲームのコントローラーにすることが可能になったのだ。

 

服自体を身に着けるデバイスにするアイデアはこれまでにもあり、様々な開発がなされてきたそう。しかし、開発されてきたものの多くは、それ自体が独立したデバイスで、既存の服と統合するには難易度が高かったという。

 

そこで今回、研究チームは刺繍ベースのタッチセンサーを作り出すことにしたそうだ。従来の服に特殊な糸を編み込むことにより、編んだ部分を「圧力を感知する操作ボタン」として機能させるとのこと。

 

実験では同技術を使用し、スマホに直接触れなくても音楽プレイヤーの再生・停止、音量調整といった6つの機能を使い分けることができたという。音楽プレイヤーの操作についてはイヤホンなどに内蔵されていることもあるが、直感的な操作がしづらいため、服の袖に操作ボタンが付くとより便利に思えるだろう。

 

また、同技術は単純にセンサーをクリックするのみではなく、ダブルクリックやスワイプなども可能とのこと。そのため、実験ではゲームコントローラーとしても機能することが確認されている。

 

今回開発された刺繍ベースのタッチセンサーは、比較的シンプルなメカニズムで動くという。センサー自体は異なる種類の物質が触れた時に静電気が起きる「摩擦帯電」式だそう。この現象を起こすために、2種類の導電性糸を編み込んでいるという。ここでのポイントは、2層の繊維の間に隙間を作ることだそうだ。

そうすることで、ユーザーが上から押した時のみ2つの層が触れ、「電気信号のオン・オフ」が可能になるという。

 

耐久性や正確性は特に問題なかったものの、服の洗濯に関しては課題が残っているようだ。水洗いは問題なくても洗剤には弱いという。

また、温度や湿度によっても正確に入力されない可能性があるそう。この問題については、機械学習を使えば誤操作を低減できるという。

 

このように、さらなる実験や調整が必要な段階ではあるようだが、それ以上に高いポテンシャルを秘めているように感じる。