分野を問わず進出している自立移動型ロボット。AIの進化と共により幅広く活躍するのではないだろうか。その中でも今回は「警備」するロボットの話をしようと思う。

2019年12月、セントラル警備保障がユニークなデザインの警備ロボットを発表した。それは今後、警備員の労働力不足への対応と、警備の品質を高めるには警備ロボットの活用が必須であると考え、高精度な自律移動性能と異常スクリーニング機能を装備した警備ロボットの開発を進めていたからのようだ。

 

警備ロボットに期待される機能は、警備の本質である“被害の未然防止”“被害の拡大防止”をどうやって実現するかということだろう。画像解析技術などの進歩によってロボットは警備員を補完する対象として期待していると同社は言っているようだ。

 

では、もう少しこのロボットのパフォーマンスについて話してみたい。

このロボットの“眼”にあたる部分は8台の高性能カメラで対応しているそうだ。その中の1台のカメラと超小型のAIコンピュータボード「Jetson AGX Xavier」が物体認識を担当しているそうだ。ここでいう物体認識とは不審者や刃物などの危険物を検知することだ。そしてこのロボットの物体認識にはCNNベースのディープニューラルネットワークを採用している。搭載されているAI推論をJetson AGX Xavierがもつ画像解析と連動することで、不審者などを検知するという。

 

多くの人びとが行き交う実際の環境下では、不審者などの物体認識を行うためには高度な演算能力が必要だろう。さらに、高度な演算にはかなりのバッテリー消費量がかかる。バッテリー駆動のロボットに搭載できるコンピューターの消費電力や大きさなどにはどうしても制限がつく。同社の開発チームが模索した中から選ばれたのがJetson AGX Xavierだったそうだ。

 

同社は長年培ってきた実績と経験に基づきオリジナルの学習データセットを作成。その充実のため現場を再現し撮影を行うなどより高精度に仕上げるための工夫もされているようだ。収集されたデータは最適な状態でJetson AGX Xavierにデプロイされるとのことだ。

また、実際にロボットが活動し始めると、毎日のように新しいシチュエーションに遭遇する。対応していくには新たなデータの学習をコンスタントに実施して、より高精度なモデルへアップデートしていく必要がある。そのために「NVIDIA DGX Station」を活用し、スムーズなAIモデル開発を実現しているそうだ。

 

同社は警備という自分たちが長い間専門にしてきた事業にAIとロボティクスを活かし、ロボットには将来的に人間以上の警備をさせたいと考えているようだ。AIのパワーを得たロボティクスの社会実装の加速はさらに進んでいくだろう。