side翔



あの日から俺は松本くんに会うとなんとも言えない感覚に襲われるようになった


朝電車で挨拶すると嬉しそうに笑顔で返してくれる
その笑顔を見る度に俺はホンワカした気持ちになる
いつまでもこの笑顔見ていたいなって思う
勿論雅紀だって満面の笑みで俺らを迎えてくれる
(まぁほぼ和しか見てないけど)
雅紀になんかこんなこと感じないのに

なんだろうこの気持ち
可愛いと思うのは和も一緒だし
やっぱり年下だから可愛いのかな




「翔ちゃん!おれ今日ニノちゃん誘う!」

「おう、和ゲーム理由で断られないといいな笑」

「やっぱりそう思う?翔ちゃん後で一年生の教室付き合って~。」


情けない声を出しながら俺を見上げる

雅紀のしりを叩いてやる事一週間
今朝、教室に着いた途端雅紀が俺に宣言した

「今日部活休みだし、ニノちゃんと一緒に帰るの誘うから!」

「おう、わかった。」

「あードキドキするぅ。ニノちゃんおれのことどう思ってるんだろう…。嫌われてはいないとは思うんだけどなぁ…。」

「まぁ、頑張れよ。明日は休みだし少しくらい遅くなっても良いからさ。」

「翔ちゃん…まるでニノちゃんのお母さんみたい。ニノちゃんの帰宅時間遅くなるの許可してくれるんだね笑」

「あたりめーだよ。俺の大事な和なんだから遅くなったらちゃんと家まで送り届けろよ。」

「任せて!!」



昼休みランチを誘いに和たちの教室へ行って
学食で一緒に食べた

雅紀は和にゲームを買いに行きたいから付き合ってと誘い和は真っ赤になりながらも承諾した

松本くんがニコニコして二人を見ているのがまた可愛い

「翔ちゃんも部活休みでしょ?潤くんと帰ってあげてね?」
和が俺に話題を振る

「お?おお、そうだな。松本くんいい?」

「えっ!?あ、はい!宜しくお願いします!!」

こないだの水族館の様な感じで今日は別々に帰ることにした

 


「先輩、オレ本屋に寄りたかったんですけど良いですか?」
松本くんが校門を出たところで睫毛バサバサの綺麗な瞳をこちらに向けて言ってきた

「あぁ、良いよ。俺も本見よっかなー。何買うの?」

「今日発売の漫画があるんです!」

「コンビニじゃダメなの?」

「駅前の本屋さんで購入者特典が貰えるんです!」
嬉しそうにキラキラと瞳を輝かせている

…可愛い…

なんか俺マジ松本くんに可愛いってばかり思っていないか?
和が俺から巣立つから新しい和のポジションみたいな?
でも、和にはしないようなたまに…

「櫻井先輩?」
ドキッ

黙り込んだ俺を覗き込むように松本くんが見ている

そうこれ、和にはならないこのドキドキ

うん、俺

松本くんが好きなのかも…?

えー、マジか…

松本くん男の子だよ?
そりゃぁ
偏見は無いけどさぁ

いざ自分がって…

しかも身近に付き合いそうな男の子同士が居るのに…
あの二人に影響されすぎじゃないかな…?



ちょっと結論を出すのは保留だ

松本くんと今日もう少し距離を詰めてみて
それから考えようか

LINEも、交換しよう

落ち着け俺…



本屋に着いた俺らはお互いに目的の場所に行くことにした

俺はまず、参考書の棚に行き塾で勧められたのを手に取る(一応受験生だからね)

その後、ブラブラしながらコミックスコーナーに松本くんを探しに来た

「あ、いたいた。ふっめっちゃ悩んでるな笑」

松本くんは新刊コーナーでお目当ての漫画と他に
二冊手に取りどちらを買うか迷っている
近づいてみると

「うーん、迷う…。どっちも面白そうだけどそんなにお金ないんだよなー。」
と、唇をとんがらせて独り言にしては少し大きめな音量でブツブツ言っている

「ふはっ!」

「えっ!櫻井先輩!?いつの間にこんな近くにいたんですか?ビックリしたー!」

「アハハっ、松本くん悩んでるんだ?」

悩んでるのを見られて恥ずかしかったのか
顔を赤らめて

「そうなんです…なんか二冊で迷ってるんですけど三冊も買うとちょっと今月厳しいなぁって。」

「雅紀は買わないの?」

「まぁは、雑誌派だからコミックスはあまり買わないんです…。結局はオレの部屋で読んでるんですけどね笑」
 
「そうなの?笑じゃぁ俺がその一冊買うから俺読んだら貸すよ!」

「えっ!?いいんですか?嬉しい!」
二人でレジに行ってお互いの会計を済ませた

店を出てまだ松本くんと話がしたかったので
駅前のマックに誘ってポテトとコーラを買って席に座った
お金を出そうとしていたけど勿論断った
だって先輩カッコつけたいからね!
(マックだけど笑)


「櫻井先輩も漫画読むんですね!」

「俺だって読むよー!」

「意外です!なんか櫻井先輩って漫画よりも小説とか読んでそうだから。」

「小説も読むよ、漫画も読むしね。本はなんでも好きだよ。」

その後は持っている本や最近見た映画の話で
今までで一番楽しい時間を過ごした
目的のLINEも交換したし
呼び方も俺は潤って呼ぶことにした

さすがに俺のことは名前では読んでくれなかったけど…
いつか名前で呼んでもらいたい!

しかも次の休みに俺んちに来て漫画を借りに来る約束まで取り付けた!

もう今から楽しみでしかない!!



家に帰って買ってきた漫画を読み終わる頃
ピコンッ
とスマホが通知音を鳴らす


『今日は楽しかったです!
お付き合いありがとうございました"(ノ*>∀<)ノ
今、二冊読み終わりました!
面白かったので
次の休み先輩のお家いく時に持っていきますね!
お邪魔するの楽しみにしています(*^^*)
因みにまぁとニノ、どうなりましたかね??』

顔文字が可愛い…

『今日は俺もすごく楽しかったよ!
俺のも面白かったよ、さすが潤が選んだ漫画だね!
休みの日、弟と妹いるからうるさいかもしれないけど気にしないでね!
俺も楽しみにしているよ!
確かに、あの二人どうしたんだろうね?
まだ帰ってこないね。』

そう送り終わったらちょうど和が俺んちに入ってくる声が聞こえた

「しょーちゃーん!!」
バタバタと階段をかけ上がる足音

バタンッ
勢いよくドアが開いたと同時にベッドの俺に
ダイレクトにダイブしてきた

「ぐえっ」
潰されて変な声がでた…

「しょーちゃん!!しょーちゃん、しょーちゃん、しょーちゃーん!!」

和が俺に抱きついたまま
足をバタバタさせて暴れている


よし、これから
和のノロケを聞く時間だな笑

潤に、帰ってきた事をLINEして
スマホを一旦閉じた