雅紀との約束当日

和の家に朝も早くからお邪魔する

「おはよーございまーす。」

「あらぁ、おはよう翔くん早いのね!今日は和也とデートなんでしょう笑?ご飯食べたの?」

「食べてなーい!いただきまーす!」

二宮家は俺を息子の様に扱ってくれる
勿論隣の櫻井家も和や和葉の事を同じく扱う

同じ時期に引越してきて同じ時期に子どもが産まれたふた家族は家族ぐるみで仲が良く子どもたちも産まれた時から一緒にいるので俺の妹、弟共に五人で兄弟の様に育ってきた
中でも俺は和を溺愛中の溺愛してきた
こんな可愛いくて構いがいのあるヤツが傍にいたらなかなか彼女を作ろうと思わない



でも、
別に、
俺は和と恋人同士になりたい訳では無いし勿論和も微塵も思ってはいない
俺は和よりも大事に思える人に出会えるのを今か今かと待っているんだ






「おはよーって、翔ちゃん僕の朝メシ食うなよ!」

寝起きの和がのそのそとリビングに入ってきて
俺を見てプンプン怒ってる
今日も可愛いなぁ

「おはよう、和。さぁ今日はデートだぞ!早く朝メシ食って和葉に可愛くしてもらいなさい!!」

「うぇ~ヤダなぁ…憂鬱…。」

猫背が益々猫背になってご飯を食べ始めた




「これこれ!!今日の為にお母さん買ってくれたんだよ!和也の為にアタシが選んだんだから!」

ワクワクしながら和葉はクローゼットから
服を取り出して和に着替えさせる

「何言ってんだよ、結局これが終わったらねーちゃんの物になるんだろ?何が俺の為だよ。」

「いーじゃんいーじゃん!ほら、翔!見て!
ウチのカズナちゃんは可愛いですね!」

「おぉ、カズナちゃんね!よし今日一日カズナにしよう!いやーしかし可愛いな!!」
 
「もーどこが可愛いんだよ!しかも髪の毛何したのこれ!?」

和の髪の毛は切りに行くのを面倒がる和のお陰で
襟足が長めだ
その髪の毛を和葉が編み込みを始めて
本当に女の子みたいになってきた
唇に色つきリップまで塗られてる

「よーし、完成!!」

「ありがとう和葉!!さっカズナ♡デート行こー!
行ってきマース!」

「あらっ!和也可愛い♡♡翔くん宜しくね!行ってらっしゃい!」

「はぁ…いってきます…。」

益々可愛くなった和を連れて俺はウキウキで
待ち合わせ場所まで歩いた

「ほらほら!和、はやくはやく!」

トボトボと歩いてる和の手を引いていく



待ち合わせ場所の駅前のオブジェで雅紀を待つ

「翔ちゃん手離してよー。」

「やだよ、なんでだよ、雅紀にラブラブカップル見せつけるんだよ。」

「はぁ…もうこんな姿同級生に見られたら僕明日から学校行けないよ…。」

和はうつむきながらも手は離さないでいてくれる
なんだかんだ言いながら結局和は俺のする事を許してくれるんだよなー

文句をブツブツと言う和をなだめながらいると


「しょーちゃぁぁぁぁん!!」

声のする方を見るとブンブンと手を振る雅紀がこっちに向かってきている

「あ、雅紀だ。」

声を上げると和が顔を上げて俺の後ろに隠れた

「何あの人、人いっぱいいるのになんであんなデッカイ声で叫んで手も大きく振って。はずかしくないの??信じらんない。翔ちゃん友達は選んだ方が良いよ?」

「ははっ、雅紀はアレでもすげぇいいやつなんだ
和もすぐに仲良くなれるよ。頼むよ?ラブラブカップルだぞっ!」

「わかってるよ、翔ちゃんこそゲーム頼むよ?」

雅紀の隣には彼女らしき子がいた
俯いて雅紀の服の裾を摘みながら歩いてきた子の
顔を覗き込むと少しふくれっ面だった

「おぅ、雅紀。コイツ、和。ほら、和でてこいよ
雅紀だよ。」

「…こんにちは…カズナです♡」

俺の背中から出てきた和は腕を俺に回したままで
和より背の高い雅紀に上目遣いで挨拶をする
(コイツマジあざといなぁ)

雅紀が固まってしまった
そりゃそうだ
ただでさえ可愛い和が更におめかししたんだ
見惚れるに決まってるさ
ざまぁみろ雅紀


「………カズナちゃん…可愛いね…相葉雅紀です…。」

「雅紀、和に見惚れるのいいけどお前彼女いるんだからいい加減にしないと彼女可哀想だろ。てか、紹介しろよ。」

「あ、あぁ!潤ちゃんゴメンゴメン!!」

雅紀は彼女に手を合わせて謝る

「もーまぁちゃん、嫌い。」

ふくれっ面だった顔が余計に頬を膨らませた

「本当にゴメン~!!ほら、潤ちゃん。友達の翔ちゃんだよ!」

「こんにちは、櫻井翔です。じゅんちゃん?」

「ジュンリです…。」

俯いていた顔を上げたジュンリちゃんを見て
俺は固まってしまった



「……見つけた…。」

「翔ちゃん?」

和が服の裾を引っ張る


見つけた!見つけた!!見つけた!!!


和に負けずとも劣らない子
めちゃくちゃ可愛い
身長は和よりも小さくて
重めの前髪にロングの髪の毛
意志の強そうな目の周りを囲む長い睫毛
薄い色のリップがついた唇には目を引くホクロ

でも、この子は雅紀の彼女だ

惚れちゃだめだ!!





4人で何をしようかと考えてたが
雅紀がイルカがみたいと言い出して
水族館にやってきた

まぁ、炎天下の中の動物園や遊園地よりいいか
和は完璧インドアだから長時間外にいて熱中症にでもなったら大変だ



「うわぁーまぁちゃん!ペンギンさんいるよ!
可愛いねぇっ!」

「そうだね、でも潤ちゃんの方が可愛いね♡」

「もーまぁちゃんったら、恥ずかしいよ///」

「確かにジュンリちゃんの方が可愛いな。」

ニヤニヤしながら少し離れた所にいる雅紀カップルを見てると

「翔ちゃん…まさか…。」

和からジトっとした目で睨まれた

「ん“ん“んっ!な、なんだいカズナちゃん?」

「翔ちゃん。ジュンリちゃんは雅紀さんの彼女だよ?横恋慕は絶対に、ダメだよ!!」

「………そうだよな……わかってるよ……わかってるんだよ…。」

わかってるんだけど、どうしても気になって仕方がない
だってみつけてしまったんだ……


産まれた時から自分の妹弟よりも溺愛してきた
和也よりも気になる存在に……