http://book.asahi.com/review/TKY201102150198.html

■自分の愛だけに生きる切実な思い

 本書の著者、オルハン・パムクはイスタンブールという街を一つの文学的時空間にまで高めた功績で2006年にトルコ初のノーベル文学賞を受賞したというのだが、私はイスタンブールに行ったこともなければ、なんの関心もない。だから、たいして期待をせずに本書を読み始めた。ところが、上下巻の長い小説から目を離すことが出来なくなるほどひきつけられた。

 主人公ケマルは裕福な実業家の息子で、誰からも祝福される相手スィベルと婚約しながら、同時に遠縁の18歳の美しい娘フュスン




http://book.asahi.com/review/TKY201102150206.html

■集権型解釈を超え、心情を的確に描く

 近現代史の史実の見方は、二つのタイプが先導している。東京発信の中央集権型解釈とアカデミズムを軸とした史料主義的解釈である。そのために見落とされている視点と証言があり、それが史実の見方を狭めていることは否めない。

 近年の沖縄論も基本的にはこの構図があるのだが、しかし沖縄をめぐる教科書問題、普天間基地に象徴される戦後の未決算などにより、中央集権型や史料主義的な見方を超える書が発表されつつある。川平成雄の『沖縄 空白の一年 1945―1946』は前者を超え、




http://www.47news.jp/47topics/ningenmoyou/46.html

「個人的には、私の本を読んだ若者に問題意識を抱かせ、刑務所まで行った者もいて申し訳ないという気持ちがある。その一方で、知識人として、ある時期の歴史的な思想転換に、それなりの役割を果たしたと思う」
 李泳禧(リ・ヨンヒ)(80)は1970年代から80年代に掛け、韓国の社会意識を持った若者に最も影響を与えた知識人だ。保守勢力からは左派知識人の代表と批判を受けてもいる。
 李の人生は「文章を書くことは偶像に挑戦する行為だ。それはいつも、どこでも、苦痛を甘受しなければならない」という自身の言葉を実践したものだった。
 50年に得意の英語を生かし高校の英語教師に。だが、同年に朝鮮戦争が起こり連絡将校として入隊。7年間の軍生活について「残酷でむごたらしいところだった」と述懐した。除隊後、合同通信の入社試験を受け、記者に。外信部、政治部で活躍し、64年に朝鮮日報からスカウトされた。
 だが、同年、国連総会に韓国と北朝鮮が同時招待されるという記事を書き、反共法違反で逮捕され、

http://book.asahi.com/review/TKY201102080144.html

■フィールドワークと「うねる」思考

 やはり「音」に敏感なのだろう。アフリカ・無文字社会での、声や音による豊かな表現・伝達の研究でも知られる筆者ならではの書き出しが、印象深い。東京・深川に生まれ、昭和20年3月の東京大空襲で多くの親戚や知人を亡くした自身が、幼少時から耳にした歌の記憶で、戦前から戦後の日本が歩んできた道を簡潔、かつ鮮やかに、再現して見せる。

 月刊誌連載をまとめた本書は、そんな「音の年代記(クロニクル)」を基礎に、各章ごとに、少しずつ連環しながら、歴史、国民国家とアイデンティティー、戦争の記憶、差別、言葉などを巡る国内外の多彩な事象を拾い上げ、論じる。うねるような筆者の思考の流れを、