夏目漱石による短編集。ひょんなことから飼った文鳥を死なせてしまう悲話「文鳥」やとりとめのない夢を描いた幻想的な物語「夢十夜」が表題となっている。しかし、その他の自伝的要素の濃い作品も見逃せない。

 

 「思い出す事など」は、病床に伏した作家が、臨死体験を含めた経験を物語る興味深いものになっている。また、徒然な日常の印象を描いた「永日小品」には、折々ロンドンでの留学生活の思い出が描かれ、明治期の留学の様子が鮮やかに甦る。

 

 漱石の代表作を読んだ後に、作家自身への興味を持って読むと興味深く紐解くことができる作品群である。

 

(2024/04/10読了)