小学生のときに上巻を読んだもののよくわからず挫折したままになっていたが、ようやく読むことができた。猫の視点から人間の日常を語り、批評し、警句を飛ばす――小学生にはあまりにも難しい。

 

 名前さえつけてもらえない「我輩」こと、珍野苦沙弥先生の家に居住している。初めの方こそ、近所の猫との猫付き合いの話もあったものの、猫らしからぬ頭脳を持った「我輩」は珍野家の人間模様を面白可笑しく紹介する。苦沙弥(くしゃみ)という珍妙な名前に誘われるように、友人の美学者で詭弁を振り回して時を潰す迷亭が始終やってくる。家のそばの中学校(現在の高校)の生徒と苦沙弥先生の闘いや、近所の実業家金田家との不毛なからかいあい、泥棒に里芋と着物類を盗まれる話など、苦沙弥先生にとっては重大問題だが読者からするとコントのような小話が入り乱れて展開する。

 最後のあっけない悲劇さえなければ、本当に喜劇で済むのだが・・・。

 

(2024/03/11読了)