ヨーロッパ、特にフランスにおける臭いの歴史を社会史的な視点から研究した書。18世紀から19世紀までを中心に、様々な言説を参考に分析を加えている。医学や法律の言説などの中において、匂いが社会の中でどのように理解され、影響を振るってきたかを辿っている。

 

 詳細な分析は、対象となる時代を細分しながら、匂いに対する科学的な理解の変遷や、悪臭に対する社会的な認知、悪臭に付随した社会的な意味などを概観する。悪臭漂う18世紀パリを始点に、学者や医者たちが様々な意見を交わしながら、社会の中の匂いという難問に取り組み、そこに様々な人々が関わっていくプロセスが語られている。悪臭と香水という相反する評判をもつパリの歴史を紐解く興味深い研究書である。

 

(2024/03/07読了)