こんばんは。

先月末の日銀の利上げ決定を受け、先週金曜日~今週前半にかけて日経平均株価が乱高下する事態になり、投資経験や経済の知見に乏しい人々が騒いでいました

 

その中には新NISAなど政府の資産運用立国関連施策への批判も見られましたが、政府は元々短期的な相場変動による利益ではなく長期投資を促しており、全くの筋違いです。

 

そのため、一時的な運用資産の増減に一喜一憂して解約を考える方は投資に向いていませんし、政府の陰謀とまで言い出す人はまず精神病院に行くべきだと思います。

 

そんな投資も仕事も、はたまた人生も長い目で見た方が幸せに生きられるように感じた今日この頃です。

 

 

  モロッコ王国の概要

 

1 基礎情報

さて、遅めの夏休みのモロッコ旅行まであと1ヶ月半となったところで、今回から私自身の予習とおさらいを兼ねた海外旅行記予習編の連載を開始します。

 

まず、モロッコの正式名称は「モロッコ王国」であり、その政体は国王を元首とする立憲君主制です。

 

国名のモロッコは古都マラケシュに由来し、またアラビア語では「マグレブ(北アフリカ西部の呼称)の王国」と呼ぶように北アフリカ西部の西端部に位置しており、

 

東でアルジェリア、南で紛争地域の西サハラ、北でスペインの飛地(セウタとメリーリャ)と接し、西と北はそれぞれ大西洋・地中海に面しています。

 

西サハラとの直線状の国境が、旧植民地がほとんどを占めるアフリカらしいですね。

 

そして国土面積は西サハラを除いて44.6万㎢で、これは日本の約1.2倍で偶然にも昨年訪れたウズベキスタンとほぼ同じ広さです。

 

(CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=18347)

 

また人口は2024年現在では約3,800万人

上のグラフは1961-2003年の人口推移ですが、その前後を含め、独立以来一貫して人口が増加しています。

 

 

次に国旗は、深紅の色で預言者ムハンマドを象徴し、中央に緑の五芒星を置いたシンプルなもので、1912年までは五芒星のない赤一色の旗だったそうです。

 

一方、国章アトラス山脈と太陽の前に赤地と緑色の五芒星という構図をとり、 先端には国王の王冠、シールドのサポーターには二頭のライオンが採用されています。

 

国旗と違い、国章からは中央の赤地と緑色の五芒星、あとは下部のリボンのアラビア語の碑文くらいしかイスラム王朝らしさは感じられませんね。

 

(Pline - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8453006による)

 

続いて首都は北部のラバトですが、歴史的な首都ではなく20世紀初めのフランス保護国時代に政治的理由から行政的に整備された首都のため、その人口は約65万人と国内第5位に留まっています。

 

ちなみに国内最大の都市はラバトの西に位置する商業・港湾都市のカサブランカです(約400万人)。

 

民族構成はアラブ人が約2/3、土着のベルベル人が約1/3を占めており、王室を筆頭にアラブ人の多くが条件の良い平野部・海岸部に暮らし、ベルベル人はアトラス山脈周辺に多く分布しています。

 

また言語はアラビア語とベルベル語を公用語とし、旧仏領だった歴史から他の北アフリカ諸国と同じくフランス語も比較的有力です。加えて、スペインに近い地域ではスペイン語も第二言語としてよく用いられています。

 

(Marcin Sochacki (Wanted) - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15918による)

 

最後に宗教は、1961年に国教と定められたイスラム教スンニ派が国民の約99%を占めているそうです。

 

 

2 政治体制

(By Ministry of the Presidency. Government of Spain, Attribution, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=135539151)

 

次にモロッコの政治に関しては、上述のとおり立憲君主制をとっており、ムハンマド6世が現国王です。

 

また、王朝としては17世紀末からフランスの保護国時代を挟んでアラウィー朝が続いており、国王は政治・軍事・宗教に関する最高指導者たる権限を有しています。

 

そして国王の下に二院制の議会が設けられており、議会制民主主義が部分的に取り入れられているものの、国王が首相及び閣僚の任命権を有するため、今も穏健ながら事実上の絶対君主制が敷かれているそうです。

 

ちなみにモロッコでは国王や国内政治への批判は御法度で、特に公衆の場での国王批判は一発で逮捕・実刑判決になるレベルで厳しく監視されています。

 

ただ、逆にこうした公安・秘密警察による監視は国内の治安の良さも担保しており(写真:ラバト王宮)、観光客としてはありがたいところですね。

 

一方、国防ではモロッコ王立軍が国王の下に置かれており、陸海空合わせて現員約20万人・50歳までの予備役15万人と人口の約1%を占めています。

 

なお、現在は18ヶ月間の徴兵制が導入されていますが、国際協力のための海外派遣には消極的で、専ら国防と西サハラへの駐留・実効支配に従事しています。

 

 

3 国際関係

3つ目はモロッコの国際関係に着目すると、アラブ・イスラム諸国との関係に加え、アフリカ・地中海諸国の一員としてこれらの国とは密接な関係にあります。

 

また、地理的に隣接する欧州や歴史的に関係の深い米国とも良好な関係を有するなど、柔軟で多角的・現実的な外交を行っており、日本とも1956年の国交樹立以前から対立したことはなく伝統的に親密といえます。

 

ただ、隣国・地域との関係に限ると、地中海対岸のスペインとは歴史的・経済的な結び付きが強く移民問題などの課題を抱えつつも全般的に良好な一方で、

 

(Orthuberra at the English Wikipedia, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1236416による)

 

旧スペイン領西サハラの大部分を占める西サハラの帰属を巡り、西サハラの独立を主張する自称「サハラ・アラブ民主共和国(SADR)」と長い対立関係にあります。

 

 

西サハラは、スペインの撤退後はモロッコとモーリタニアが分割統治したものの、土着の武装勢力であるポリサリオ戦線がSADRとしての独立を主張

 

ポリサリオ戦線はモーリタニアの一部と西サハラ東部(全体の約25%)を実効支配し、残る約75%を実効支配するモロッコと長年対立を続けてきました。

 

この西サハラ問題は、モロッコを欧米諸国が、SADRをアフリカ・中南米・南アジア諸国が主に支持することから、国連の介入を受けながらも膠着状態が続き、今も解決のめどは立っていない状況です。

 

 

一方、隣国のアルジェリアとは互いに反政府勢力を支援しているとして長年緊張関係が続いており、2021年8月には国交断絶・国境閉鎖に至りました。

 

そんな近隣諸国との関係はイマイチなモロッコですが、一般にアラブ諸国と関係の悪いイスラエルとは2020年12月に国交を樹立しており、アラブ・イスラムの枠に留まらないバランス感覚が窺えます。

 

この点は、歴史的にアフリカ大陸本土よりもイベリア半島との縁が深いモロッコらしいですね。

 

 

4 経済・社会

(Nawalbennani - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=25245550による)

 

最後にモロッコの経済・社会について触れると、現在の通貨はモロッコ・ディルハム(MAD)を使用しており、硬貨は補助通貨のサンチームを含めて9種類

 

紙幣は4種類を発行していますが、紙幣の券面にはいずれも現国王ムハンマド6世が描かれている点からも、モロッコにおける国王の権威が窺えますね。

 

次に2023年の名目GDPは約1,400億米ドル世界第61位である一方、国民1人当たり換算では126位の4,000ドル弱と一気に落ちてしまいますが、それでもアフリカ諸国の中では14位と比較的高い水準です。

 

主要産業は、アトラス山脈よりも北側の大西洋・地中海沿岸地域では農業・水産業・工業・貿易業が発達し、アトラス山脈周辺では鉱物資源の採掘が盛んです。

 

ただ、エネルギー資源に関しては原油と天然ガスが少し産出する程度で、産油国とまでは言えません。

 

一方、アトラス山脈以南はサハラ砂漠が広がる砂漠地帯のため産業の発達は見られませんが、

 

 

 

(写真1枚目:Donar Reiskoffer, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=460780による)

(同2枚目:Adam Jones, Ph.D. - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27744667による)

(同3枚目:Anassbarnichou2 - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6154057による)

(同4枚目:barraquito - Flickr: DSC_0120.JPG, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=23370480による)

 

国全体で観光立国に取り組む中にあって、観光業で最近は砂漠の雄大な光景に注目が集まっています。

 

なお、経済成長率は足元の2022年は1.26%と途上国の中ではイマイチですが、2000年以降で見ると感染症流行期などを除いて平均では年率5%前後の成長を記録しており、安定した政治基盤も成長を下支えしてきました。

 

まさに独裁や警察国家といわれようと、途上国の発展には体制・治安の安定が第一ですね。

 

(By Mediacommunity - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=87053470)

 

あと、保険・医療分野では「性転換手術」のイメージがモロッコにある方も中高年層に多い気がしますが、これはマラケシュ在住のフランス人医師ジョルジュ・ビュルーがその技法を開発したことに起因しています。

 

そのため、1950~1980年代にかけて世界中から性転換手術(現在は「性別適合手術」と呼称)を求める男性がモロッコを訪れました。

 

ただ、1987年にビュルーが死去して以降は、すでに世界中に性別適合手術の技法が普及してきたこともあって、こうした流れは止まっているそうです。

 

(By Кирилл Венедиктов - https://www.soccer.ru/matches/galery/1067177/photo/730228, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=69983778)

 

締めはスポーツ関連についてですが、他のアフリカ諸国と同じくサッカーが盛んで、特に代表チームは2022年のW杯でアフリカ勢初のベスト4に輝くなど、アフリカ最強レベルを誇っています。

 

他には陸上競技のうち男子中距離走と長距離走では、同じアフリカのエチオピアやケニアと並んで世界的な強さを誇っており、優れた身体能力と厳しい環境の中で培ったハングリーさの賜物のように感じた次第です。

 

以上、モロッコ王国の概要を一通り紹介したところで、次回はモロッコの歴史を取り上げる予定です。
ではでは。