「牡丹の花が咲く春のお彼岸にはぼた餅を、
萩の花の咲く秋のお彼岸にはおはぎを、
おばさんは作ってくれた。
学校帰りに皆でごちそうになって、
おはぎ論争をして」
「おはぎ論争って?」
愛が尋ねると、涼は、
「おはぎとぼたもちの違いさ。作り方も
違うんだよね。おばさん」
「まあ、そんなことまで覚えていてくれたの。
おはぎはね、もち米とうるち米を半々にして
半つぶしに、ぼたもちは、もち米だけを
よくついて、あんこをまぶすのよ」
「秋の七草を教えてくれたのもおばさんだ。
萩、桔梗、撫子、女郎花、薄、葛、藤袴
だったっけ」
「おばさんはね。涼君とおしゃべりをして
いると、亡くなった透と話しているような
気がするわ。
共通の思い出が多くて、血がつながって
いなくても家族のように思えてね」
おばさんの言うように血がつながっては
いないが、涼の感性は、どこかしら
おばさんの感性に近いものがあると愛は
思った。
涼が采女祭りの夜、九月のことを寝覚月と
いったことも、涼とおばさんとの会話で
うなづけた。
つづく