EXTRAVAGANZA!!! -8ページ目

EXTRAVAGANZA!!!

命題:興奮覚めやらぬ毎日を送る事。人との時間を大切にする事。なにより地球に生きる事。

変だなとは思っていた。

私が到着したその夜のパーティーで、もうお酒は飲まないはずだった彼がワインにシャンパンに普通に飲んでいたから。
でもまあ嗜む程度までならいいのかな、とそこまで気にも留めなかった。

2日空けて今度は自宅に人を招いてのホームパーティーの時、彼はかなり大量の赤白ワインを買ってきた。
そして彼女が先に寝て、来客達が全員帰った後、開けたワインは飲んでしまおう!と私が赤、彼が白で飲み続けた。

ボトルも空いてさて寝るか、となったら彼はついでだからこれも、と何故かもう一本新しい白を開けた。
流石に私は眠かったので先に寝てしまったが、翌日も仕事のハズの彼はどうやら1人でまた一本空にしたようだった。

それでも私はまぁ彼らにとってはワインなんてジュースみたいなもんなんだろうなと思ってしまった。
最後は彼もかなりろれつが回らなくなっていたにも関わらず。

次の日の夜、外出から戻ると彼女は丁度今赤ん坊を寝かせたところだと言いながら1人で私を待っていた。

彼がこんな時間に家にいないのはおかしいと思い聞いてみると、他愛ない事で喧嘩して、彼は友達のところで寝るらしいとの答えが返ってきた。
まぁ夫婦喧嘩なのかな、と思いながらも、もしや私がソファを占領しているから彼は出ざるを得なかったのかな、と申し訳なくて仕方なかった。

でも次の日もその次の日も彼は昼間にチラッと着替えに来るだけで夜は戻ってこなかった。

私には関係のない夫婦の事だとは思いながらも一応再確認してみると、彼女は実は追い出したんだと打ち明けてきた。

酔っ払った状態で家にいて欲しくないから出て行ってもらった、と。

ピンときてしまった。
再発したんだ、と。

その昔、彼はアルコール依存性だった。

アル中だった。

身体を壊し、入院せざるを得ないほどの重症で、それでもそれをきっかけに以来、スッパリとお酒とタバコは辞めたらしかった。
というか辞めざるを得なかったと言うべきなのかもしれないが。

だから私が初めて彼に会った四年前は私達がいくらお酒を飲んでいても彼は一滴も口にはしなかった。

それがどうやら彼女と結婚して、いろんな事が居心地が良くなり過ぎて少しだけ飲み始めて以来、際限がなくなってきてしまったらしく、実は昨年から既に色々と問題を起こしていたらしかった。

今日、来週彼女が5日間程ドイツに遊びに行くため赤ん坊と犬を彼女の両親に預けに行った帰りに涙をこらえながらポロリポロリと話してくれた。

生後三カ月の赤ん坊を連れて出たまま夜になっても戻らず、警察沙汰になり、夜中の3時に泥酔した状態で乳母車を押しているところを発見されたという話にはもう呆れるを通り越して怒りを覚えた。

久々に2人きりになったフラットで、彼女は堰を切ったように涙を流しながら話し始めた。

ワインの日の前も後も彼は一日中飲んでいたらしい。平日は夜にちょこっとしか会わないから私にはわからなかったけれど。

愛だけではどうにもならない、愛だけなんて全然十分じゃない、と彼女は言った。

でも彼女は他人には何もできない、彼が自ら気が付かないとどうにもできない、だから追い出すしかできないと言った。

が、彼は未だに自分で自分をコントロール出来ると思っているようだった。
電話口で追い出すなんて、なんて冷徹なんだ!と彼女に対して腹を立てていたから。

彼女は専門医に見てもらえば良いと言うが、私にはリハビリ施設に入れるしか無いと思える。
通いなんて無理だ。
一定期間、ある意味閉じ込められないと治せないと思う。

リトアニアにそういう施設があるのかわからない。彼女も知らないと言う。
でもあったとしても彼女にとってもそれは大きな決断になると思われる。だから探していないのかなとも思うし。

彼女の両親はこの結婚に反対だった。あんなに仲の良かった家族の形が変わってしまうほど反対していた。
だからこれが明るみに出たらどうなることかわからない。

私は、私はそれぞれ全員の事が大好きである。彼女も彼も彼女の両親もみんな。
でも、こんなにawesomeな彼女をこんなに苦しめている彼に対しては今は物凄く失望し、嫌悪感すら抱いている。

どうにかしてリハビリ施設に入れたいと思っている。


本当は明日の夜Londonに飛ぶ予定だったけれど、今、彼女をたった一人、このフラットに置いて行く事はできないから、ドタキャンします。
彼女が一瞬たりともひとりぼっちにならない事が確認できるまで延期。


人生、本当にいろんな事が起こる。
きっとこれもいつかネタ話になる時がくるに決まっているよね。


お酒片手にアル中についてを語った若干シュールな金曜夜。
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