ちびタンクのひとりごと -17ページ目

ちびタンクのひとりごと

大好きな旅のこと、心理学・スピリチュアル・ヨーガのこと、日々の気づきなどをつぶやいています♪

長くなったので2話に分かれています。


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【Day80 2025.11.22 ベレス・マラガ滞在】


11月22日

いい夫婦の日

ベタだが今日は私たち夫婦の12年目の結婚記念日だった。

なのに私はスペインにいる。


深夜に目を覚ますと、

「happy 結婚記念日

家にいなくてごめんなさい

これからもよろしくお願いします」

と夫にメッセージを入れた。


10年前に旅をした時は結婚記念日を意識して、それまでに帰る航空券を取っていた。

膝を痛めるというアクシデントがあったとはいえ、今回はまだ帰国日すら決まっていない。


いずれにしてもとんだ放蕩嫁である。

夫には、本当に感謝しかない。


昨日、ベゴから“明日は歩くよ”と言われていた。

予定のない週末は仲間と海外沿いを片道6km歩いて朝食を取り、また6km歩いて帰ってくるのが習慣なのだそうだ。

身支度を整えて朝8時には出発した。

カミーノを終えても歩き続けているところがベゴらしい。


空は曇っていたが海から昇る朝日が雲を照らし、それがまた美しい日の出を演出した。

つい先日、大西洋に沈む夕陽を見たのに今度は地中海から昇る朝日である。

贅沢にも程がある。


すぐに二人の仲間が加わり私たちは4人で歩いた。

溌剌としたタイプの英語が話せるイブと、聞けば概ね理解はできるが話はできない、優しい雰囲気のラケル。

会話は概ねスペイン語だが、ベゴとイブが時々気を遣って訳してくれたり、話しかけてくれたりした。


その頃にはもうすっかり雲は無くなっていて、今日も快晴である。

本当に、ガリシアと同じ国とは思えない。

晴れた空、暖かい空気、美しい海、のびのびと過ごす人々、健康的に歩く私たち。

何もかもが最高すぎる。


私は、三人がスペイン語で話すのを聞きながらカミーノのことを思い出したりしていた。

こんな風に、誰かと一緒にいるのに、会話を聞き入らなくて良いことが心地よかった。

ふと、Luckyペンダントのことが気になった。

彼女は元気にしているだろうか。

別れた日以来、サイモンから連絡はない。

私の意思であげちゃったけど、どうか元気でいてほしいと、今更勝手なことを思った。

しかしそれはもう私の物語ではなく、彼の物語の一部になったのだ。

それが悲しい物語でないことだけを祈るしかない。


6km歩ききると海岸沿いの気持ち良いバルのテラスで朝食を取る。

まるでどこか別の国の話みたいだなと思ったが、実際別の国なのだ。

そこに自分が参加しているのが不思議だった。


朝食を食べ終わるとまた4人で歩いた。

途中、土曜日に開かれるマーケットで少し買い物をして町に戻ると、二人は帰りやすいところであっさりと別れて行った。


果物を買ってベゴのお母さんのお店に顔を出し、明日のパーティの買い出しをすませると、ベゴが予約してくれたレストランに昼食に出かけた。

私たちが一番乗りだったが、テーブルは全て予約で埋まっているというから驚きだ。

テラスの脇では大きな鍋でパエリアが作られていた。

注文はベゴにお任せすると、レモンを絞って食べる赤貝のような生の貝、アサリのようなクラムのワイン蒸し、そしてパエリアが出てきた。

どれも最高に美味しかった。


部屋に戻って少し休むと、ドライブに行こうとベゴが言う。

お任せでお願いすると、フリヒリアナという山の上の町に連れてきてくれた。

そこは山に沿ってかなりの傾斜で建てられた家々がどれも真っ白に統一されていて、海とのコントラストが本当に美しかった。

町自体は坂道ばかりだが、真っ白な家々に色とりどりの玄関と窓、その前にたくさんの植木鉢が並び、どこを見ても息を呑む。

そうして歩いていると今度は丘の上に夕陽が沈んだ。

それがまた美しい。

一通り観て回ると、車に戻る途中でまた見晴らしのよい広場を見つけ、二人でそこでしばし佇んだ。


美しいものを見過ぎている。


そんな理由で涙が出てきた。

もう十分すぎるのだ。

美しいものを見るのにも、人には許容量があるのだと初めて知った。

サンティアゴからムシア・フィステーラに向かったとき、もう人とは充分出会ったと思った。

それはその感覚に似ていた。


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つづく