【Day69 Camino de Santiago】2025.11.11 サンティアゴ(1) | ちびタンクのひとりごと

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長くなったので二話に別れています。

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【Day69 2025.11.11 Dornelas→サンティアゴ30km】 


朝7時15分

支度を済ませコーヒーを一杯飲むとカーリーンと一緒に出発した。

宿では昨夜一緒だったアイルランドのおじさんと、ハスキーボイスでスラッとしたかっこいいオスピタレラさんが見送ってくれた。

アイルランドのおじさんは刻んで15km先に町までしか行かないため、8時過ぎに出発するのだという。


雨は降りそうで降らないため、ポンチョは出さなかった。

気温もそこまで寒くない。

早速タバコ休憩に入るカーリーンを横目に先を歩いた。

どうせすぐに追いつかれるだろう。


朝からベゴが連絡をくれた。

自分のホタテ貝を出して今日はそばに置いている。

あなたと一緒に歩くからね。

そう、メッセージをくれた。

私は歩きながら撮った、雲間に見える日の出前の山間の写真を送った。


いろいろな思いが錯綜して複雑な気持ちになった。

まだ続くのだからと思っていたが、やはりサンティアゴはサンティアゴなのだ。

少しだけ涙が出たが、それもすぐに途絶えた。


カーリーンと私は抜きつ抜かれつしながら、休憩で合流した。

カーリーンは、今日は歩くのに素晴らしい日だとご機嫌だった。

林の中を抜ける途中、強風が吹いた。

なんだか木々たちが大騒ぎしているみたいだ。

前を歩いていたカーリーンは止まって、私を待っていた。

自然とコンタクトするのが気持ち良いわね、という。

全く同感だ。


この辺りは歩く人が多いせいか、ベンチが多い。

山間のベンチで雲間に青空が見える空を二人で眺めた。

全体を覆う雲は何層にもなっていて、一番低い雲は風に流れて凄い勢いで動いていった。

カーリーンは、嬉しい気持ちの後にすぐ寂しくなって、そんな風に感情がどんどん揺れ動くことがとてもFunnyだと言う。

私は、まるで今の空の雲のようだね、と言った。

彼女は、本当ねと笑った。


昨日、ジョンはサンティアゴに着いていて、写真を送ってきてくれていた。

カテドラルで私たちを迎えてね、とお願いすると、もちろんだよ、と返ってきた。


サンティアゴまでの距離を示す標識が20km、15kmと切れ目を示すたびに、私は写真をとってベゴとジョンに送った。

ベゴがマルセルにも連絡をしているようで、マルセルからもメッセージが届いた。


なんだか不思議な日だった。

カーリーン同様、私もご機嫌だった。

私たちは道上で休憩こそしたものの、バルにも入らずガンガンと歩いた。


実は昨日から痛み止めのイブプロフェンを飲むことをやめていた。

意識的にそうしたのではなく、単純に飲み忘れただけだった。

しかし私の膝の具合を心配するカーリーンにそのことを告げるとやたら嬉しそうだった。

彼女は看護士だったが薬品が嫌いで、自然療法を推奨していた。

昨日歩けたのでそのまま飲むのをやめてみた。

やはり痛みが響く。

その時、私は思った。

この痛みがあったからこそ、私はアルフセンに滞在して、たくさんの人と出会えたのだ。

そしてその後、カーリーンやジョンに出会えた。

私は痛みに心から感謝した。

ありがとう、と痛みに伝えてみた。

すると痛みがフッと和らいだ。

完全に消えたわけではないが、それはもう、自分の一部になっているようだった。

いくらでも歩けそうな気がした。


今までクールな印象だったカーリーンは、どんどんとはっちゃけた性格を見せるようになっていた。

今日は踊りたい気分なの、と珍しく音楽を聴いて歩いていた。

それはインドのラクシュミを讃える音楽だった。

ガネーシャのバージョンの音楽もあるわよ、という。

ガネーシャといえば私はお守りにガネーシャのカービングが施されたリビアングラスを持ち歩いていた。

ガネーシャなら持っているよ、とそれを見せると、彼女もウェストポーチの中の小さな小袋から、ずいぶんスマートなガネーシャを取り出して見せてくれた。

私たちはずいぶん共通点が多いわね、と二人でまた笑った。


いつもはそれぞれ勝手に歩いているのに、今日は示し合わせたわけでもなく、近くを歩いた。

3km手前のベンチで最後の休憩を取る。

その頃には言葉少なになっていた。


歩き出すと雨が降り出した。

Finally!

やっと降ったわね!

Blessing!

祝福だね!

と二人で笑った。


最後の3キロはカーリーンと一緒に歩いた。

徐々に街中に入っていき、家々の向こうに塔が見えると、ガンガンと前を歩くカーリーンに、

“カーリーン!、あれ、カテドラル!?”

と聞いた。

“そうよ。“

と、私の興奮にちょっと呆れた様子で返事が返ってきた。

その頃には、雨はどんどんと強くなっていった。


私は不思議と満ち足りた気持ちだった。

そして、明後日からまた歩こうとしていることが、正直嫌になった。

こんなに満ち足りた気持ちなのだ。

もう、これで終わりで良いのではないか。



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つづく