【Day35 Camino de Santiago】2025.10.8 折り鶴 | ちびタンクのひとりごと

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【Day35 2025.10.8 アルフセン滞在8日目】



明日出発しよう。

朝、なぜかそう思った。

カセレスまで歩くにしても、あと2日はこの町にいるつもりだった。

それなのになぜか、もうこの町には十分いた、そんな風に思った。

そもそもここ数日、足の状況にあまり変化はない。

3日間歩くだけなら、今日も明日も明後日も、そう変わりはないだろう。

それで本当に明日、歩くことにした。


明日出発すると決めるといろいろとやることが浮かんでくる。

パッキングを出来るだけしておいたり、お金をおろしに行ったり(ATMは休止中だったが)、商店に挨拶に行ったり、療養中のYouTubeを作りたり、心配している巡礼仲間に連絡したり。


ツンデレメガネねーさんと掃除のお姉さん、向かいの建屋に滞在するハビエールには、何かお礼をしたかった。

ああ、しょうもないけど、お手紙と一緒に折り鶴を添えよう。

いらないものは全て捨ててしまった今、出来るのはそれくらいだった。

紙類も全て捨ててしまっていた。

唯一の紙は処方箋の説明書だった。

それを四角に切って織り始める。


今日のアルベルゲは、中国人の女性とイタリアのおじさん、他にもいっぱいいたのだが、なんだか多すぎたし、それぞれマイペースに過ごしたので全員をつかみきれなかった。

それでも私がダイニングで折り紙を折っていると、何人かの人が興味を示した。


歩くと決めた朝は足の調子が良く、これならワンチャン、いけるのでは?なんて淡い期待を抱いた。

しかし夕方になるにつれてまた痛みが増してきて、いよいよあと3日なんだという実感がしみじみと増す。


この町の教会や商店やテラスやキッチン、ダイニングやベットルームが、今日で最後だと思うと、なんだか不思議な気持ちになった。

寂しい気持ちもあるが、嬉しい気持ちもある。


ああ、ここ町が好きだな。

古い教会があって、カラフルな遊具の公園があって。

お花がきれいな可愛らしい家があって、バルでおじさんたちが盛り上がっていて。

バルのお姉さんはいつも笑顔で、商店のお姉さんはいつもツンデレで。


そう思うと、ギリギリのところで留まっていた感情が揺さぶられ、ふとした瞬間に涙が溢れた。


今日は最終日なのでバルに行った。

こっちの鶏肉は薄切りにされて、まるで豚肉のように料理する店が多い中、ここはシンプルな鶏もも肉のソテーが味わえるのが嬉しかった。

ビールを飲みなら香ばしいチキンを味わっていると、イタリアの陽気なおじさんがやってきた。

今日のメンバーの中で、一番話が合う人だった。

彼はお遍路をやったことがあるそうで、日本の話に花が咲いた。

ビールがまだ残る私に対して、アイスクリームを食べ終わった彼がそろそろ帰ろうかと言う時、この町の話になった。

彼だけではない。

誰しもが口を揃えて何もない町と言う。

私もそう言っていた。

しかし、今の私にとってはもう、何もない町ではなくなっていた。


私にとって、この町は特別なの。

私はこの町で、特別な時間を過ごしたの。

自然と、人と、自分と向かい合ったの。

数日前、アルベルゲに来た巡礼者につまらない町だって言ってしまったことを、私は後悔しているの。


そう言いながら、涙が溢れてしまった。


おじさんは、意味がわからなかったのか、突然泣き出した私をめんどくさいと思ったのか、そうかそうか、また後で、と深入りせずに帰っていった。


それでも私は、巡礼者の誰かに、そのことを言えてホッとした。


私も宿に帰ろうとお会計を済ませてレシートをもらった時、ふと思った。

私がこの町を好きだということを、この町の人に伝えたい。

カウンターで立ちながら、受け取ったレシートで鶴を作った。

そしていつも笑顔がめちゃくちゃかわいい店員のお姉さんに、“あなたの息子さんに”って渡した。

(冷蔵庫の見える位置に写真が貼ってあって、以前、あなたに息子なの?と聞いたことがあったのだ。)


びっくりしたお姉さんと一緒にいたおばさんは、

Oh ムイ・ボニート(まあ、なんて美しいの!)

と、大袈裟に驚いてくれた。

レシートで今、作ったのと言うとさらに驚く。


やっぱり思いは伝えた方がいいんだな。

そう思った。


ああ、これまで私にいろいろしてくれた人たちに、なぜ鶴の一つも渡せなかったんだろう。

そんな簡単なことをしなかったことが悔やまれる。

あとどれだけいられるか分からない。

でも、たとえ捨てられてもいいから、必ず伝えよう。

そう思った。


宿に帰ってテラスにいても月はなかなか見えてこなかった。

やっと登って来た月は、昨日とは位置を変え、時間も変えてのやって来た。

時が過ぎるのはこんなにも早い。


テラスからダイニングを通り部屋に戻ると途中、さっきのイタリアのおじさんが日記を書いていた。


今、すごく月がきれいだよ。

そう言って外に連れ出したが、

朝、歩きながら見ているよと言われてしまった。

自分がどれだけ歩きから遠ざかっていたの実感した。


数日かもしれないが、明日からまた巡礼者に戻る。

その時間を大切にしようと心に決めた。