9月末に遅い夏休みをもらって、中山道の須原宿から太田宿まで、約93kmを歩きました。
GWに信濃路から木曽路へ突入しましたが、今回は木曽路から美濃路へ。
島崎藤村の作品にあるように、木曽路は本当にずっと山の中でした。
そんな木曽路を抜けても御嶽宿までは引き続き山の中。
特に大井宿→大湫宿→細久手宿→御嶽宿の30kmは中山道最大の難所。
大井宿をぬけた先の山道に入るところには、
“ここから先、御嵩までの30kmは電車がなく、飲食店や宿もありません。十分に計画してから進んでください”という注意書きがあるほどです。
我々は運良く、細久手宿で唯一営業している宿が取れ、その日は約20kmの歩き。
距離的には大したことないとタカを括っていたものの、大井宿から大湫宿までの十三峠は、その名のとおり13の峠とおまけに7つの坂道が。。。
歩いても歩いても距離が伸びず、辿り着けないのではないかと不安になりました。
そんな中、数少ない出会った方に「細久手に泊まる」というと返ってくるのは「大黒屋さん?」という言葉。
中には、「よく予約取れたね。」なんて発言も。
こんな寂れた山あい(失礼)に泊まるのは、はっきり言って中山道を歩く酔狂だけだろう。
毎日客が来るわけでもないだろうに、唯一やってる宿って、どんなんだろう。
正直かなり不安でした。
そうこうして、なんとかたどり着いた細久手宿。
大黒屋の建物はすぐに見えたけど、外壁はボロボロ。
ますます不安が募ったけど、クタクタの我らを迎えてくれるのであれば、もう、どんなところでもいい。
そんな気持ちで門を叩きました。
横から見えていた外壁の様相と異なり、正面から見ると江戸時代にタイムスリップしたかのような佇まい。
古いながらも綺麗に、大切に守られてきたことがわかります。
ご挨拶すると早速、店主のお父さんが2階の客間に案内してくれました。
古い作りのかなり急な階段を登ると、2階の二部屋がそのまま我々の客室の模様。
一部屋にはすでにふかふかの布団が敷かれていて、もう一部屋にはテーブルの上に和菓子が。
「お茶を用意しますね。」
と、お父さんは急な階段を軽快に昇り降りし、自家製の紫蘇ジュースと温かいお茶、そして栗の和菓子で迎えてくれました。
襖はフルオープンで、奥には掛け軸と生花、鳥の剥製が。
2方面から入る涼しい風と落ちかけたやさしい陽の光がなんとも気持ち良い。
冷たい紫蘇ジュースと甘い和菓子が疲れた身体を癒します。
お風呂にゆっくり浸かるとお夕食。
自家製の栗きんとんや里芋のお団子、岩魚の塩焼き、鯉の煮付けなど、地元ならではの食を頂くことができました。
どうやら階段を挟んで左右の二組しか客は入れない様子。
なるほど、予約が取れないわけだ。
営んでいるのはユーモアあふれるお父さんと、やさしいお母さんのご夫婦お二人。
とってもとっても、温かい気持ちになりました。
ああ、迎えてくれる人がいるから、旅人は旅ができるんだなあって、改めて思いました。
一人や、やりたい人だけでできるものではなくて、それを迎えてくれる人がいて、初めて成り立つんだなって。
どちらか一方では成り立たない。
それは、役割なのかもしれない。
あのご夫婦は、「旅人を迎える」って役割を全うするって、決めたように見えたんですよね。
私は、「旅をする」ことを全うしたい。
まだ見ぬ、旅人を待つ人のもとへ訪れたい。
そんなことを思わせてくれる、素敵な旅になりました🚶♀️🚶
だから旅は止められない。
多分、迎える人もそうなんだろうな〜。
まだ見ぬ世界に、逢いに行きたいです♪