たまにはマジメなやつも(^^;;
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私はその時、マカオを歩いていた。
海岸沿いの歩道は幅広に作られているたが、人通りは少なく、天気はさほど良くなかったものの、時折吹く風が気持ち良かった。
ちょうど広場のようなところにさしかかった時だった。
歩道の中心に、レシートに挟まれた紙幣のようなものが見える。
拾ってみると、人民元だった。
辺りにはドリンクスタンドのおばさんと、広場に腰を掛けた若い女性が二人居るだけ。
落としたと見られる通行人は居ない。
どうしよう?
人民元はここマカオでは使えない。
明日から行く中国本土の紙幣だ。
貰ってしまおうか。
立ち止まって思案していると、座っていた女性二人が動き出した。
罪悪感を感じて貰うくらいなら、お姉さんに預けよう。
思い切って声を掛ける。
すると女性たちは「私たちではない。スタンドのおばさんに預けたら?」
と言う。
素直に聞き入れ、スタンドのおばさんに預けた。
マカオでは使えない紙幣であったが、おばさんは快く受け入れてくれた。
うん。これでいい。
※※※
翌日、私は中国本土、広州の街を歩いていた。
中国では少額紙幣をポケットに入れて使用するのが主流。財布は持たない(出さない)と聞いていたので、私もそのようにしていた。
歩道橋を渡る。
登り側の交通量がやたら多い歩道橋を、私は逆行する形で階段を降りていた。
「おい!おい!」
誰かの怒鳴り声が聞こえる。
「お前だ、お前!」
振り向くと、中国人のおじさんがこちらに向かって何かを訴えていた。
「え?わたし?」
私は人差し指を自分を向けると、おじさんは"そうだ、そうだ"と頷いた。
「○✖️◻︎△!!!」
なにか怒られているようだが、言葉が分からない。
"なに?何か悪いことした?
こっち側歩いちゃ行けないとか?"
ハテナと言う顔をしていると、おじさんは何か言いながら、振り返って歩道橋の中段を指差した。
お金が落ちていた。
ハッとしてポケットに手を入れる。
突っ込んで置いた紙幣がない!
落としたんだっ。
慌てて登りなおして紙幣を拾う。
おじさんにお礼を伝えようと振り返るが、もう人混みに紛れていた。
多くの通行人が見ていたが、誰も私の紙幣を拾わなかった。
自分のした事が、
ただ、
自分に返ってくる。
世の中って、それだけだと思う。
そしてやはり、
自分の目で見て、感じること、
それが真実だ。
中国も、来てみないと分からない。
そう、思った。
中国本土に入り張り詰めてていた緊張が、
少し、溶けていくのを感じた。
END