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私は,空港の建物内に飛び込み,
まずはチェックインカウンターに急いだ。
ビエンチャンにあるワットタイ国際空港は,
首都の国際空港であるにもかかわらず,
日本の地方空港ほどの規模の小さい空港だ。
チェックインカウンターも5レーンくらいしかないのだが,
そこで初めて,なんだか様子がおかしいことに気づいた。
私の乗るタイ航空のレーンの前が人だかりになっており,
係員に説明を求めたり,不安げに仲間内で話し合ったりする人たちで溢れている。
目の前の日本人らしきカップルに,話を聞いた。
「日本の方ですよね?どうかしたんですか?」
「バンコクで洪水被害がひどく,タイ行の便がストップしているらしいんです。
出発の目途も立たないらしく,チェックインもできないんですよ。困ったな~。」
「そうなんですか・・・。ありがとうございます。」
私は,そんなことはどうでもいい,とばかりにその場を抜け出した。
とにかく早く,国際電話をかけなければ。
公衆電話らしきものは見当たらないので,
唯一のお土産屋さんで,”国際電話は電話はないか?”と聞いてみると,
”これで掛けられる。”と,固定電話の子機を渡された。
後で金額が請求される仕組みらしい。
私は真っ先に,盗まれたクレジットカードの紛失連絡先に電話を掛けた。
”テュルルルル,テュルルルル,・・・,ガチャッ”
つながった!!!
一通りの事情を説明し,利用状況を調べてもらう・・・。
緊張の瞬間。
「お客様のカードは・・・,ここ数日間で使われた形跡はありませんね。」
「え!?本当ですか!?」
「はい。最後のご利用は,去年の6月XX日にビックカメラでのご利用になります。
こちらはご本人様のご利用でお間違いないでしょうか?」
「はい。」
「それ以降は使われた形跡はございませんね。
ただ,ショッピング等でご利用された場合,こちらに決済が届くのにお時間を要する場合がございます。
特に海外では,一週間ほどかかる場合もございますので,今のところ,まだ完全に利用されていないとは申し上げられません。」
「そうですか・・・。」
とりあえずカードの利用を停止し,電話を切った。
まだわからないとはいえ,ひとまずほっとした瞬間だった。
とはいえ,大使館のN氏の話からしても,使われていないとは,疑問が残る。
なんとなく落ち着かない心持ちのまま,どうしようかと周りを見渡すと,
タイ航空のチェックインカウンターが動き出したのが見えた。
戻ってみると,まだ時刻は確定していないものの,
出発の準備は開始したため,チェックインが開始になったとのことだった。
私もチェックインと諸手続きを済ませて,搭乗口に向かった。
---続く---