開幕から1勝4敗と降格圏内18位に沈むジュビロは、冷たい春雨の叩きつけるヤマハスタジアムに、目下7位と絶好調の新潟を迎えたミッドウィークのナイトマッチ、順位の差こそありますが、直近のジュビロはゲーム内容も良くなって来ており、後は得点さえ決めれば勝利が見えてくる。そんな予感の中でキックオフを迎えました。

今日のヤマハスタジアムは、ただでさえボールが走る仕上がりのピッチに大量の雨が降って超高速仕様になっていて、新潟は、なかなかパスの強さの感覚をつかめないようで、肝心なところでパスが合わず苦戦するシーンが見受けられました。対するジュビロは、ジャーメイン選手を起点に左サイドから松原選手、平川選手を中心に崩しに掛かります。また、左で相手を引き付けてから右サイドに展開するシーンもあり、幅と深みの取れた攻撃ができていたように感じます。ただ、両チームとも最後のシュートは決定的とは言えず、お互いに得点を奪えないままでハーフタイムを折り返しました。前半はボール支配率では新潟がややジュビロを上回ったものの、高い位置でボールを回収して手数を掛けずにボックスまで持ち込めていたジュビロの方が、数字とは裏腹に攻勢だったとの印象でした。

なかなか得点が奪えない状況を打開するために横内監督はハーフタイムにマテウス・ペイショット選手を投入すると、ジュビロは後半開始早々から猛攻を仕掛けて新潟をゴール前に釘付けにします。ただ、ハーフコートでサッカーをするということは、その分、使いたいスペースもなくなるというもの、なかなか決定的なシュートを打てずにいると、後半10分を過ぎたあたりから逆に新潟がボールを握り、あわやというシュートを浴びるようになります。なかなかマイボールにできず防戦一方の苦しい時間帯を耐えたジュビロは、後半21分に古川選手とレオゴメス選手を投入すると、レオゴメス選手が相手からボールを刈り取るようになり、次第にジュビロがマイボールにできる時間帯が増え始めます。

すると後半28分、自陣深い位置での相手のファールで得たフリーキックから、リカルド・グラッサ選手が最前線のジャーメイン選手に向けて裏に走らせるようにロングパスを入れると、新潟のDF2人を引き連れて落下点への競争がスタート、最初に落下点に近づいたのは新潟の遠藤選手、しかし突然、何をどう間違ったのか、今にも「キーン」という声が聞こえて来そうなほどの勢いで「アラレちゃん走り」になって両腕を広げます。恐らく風でボールが伸びて落下点がズレてジャーメイン選手の方に流れたため、とっさに腕を広げてしまったのだと思いますが、広げた右腕はボックスの中、その右腕に落ちてきたボールが当たりハンドの判定、今日はジュビロがPKを獲得します。それを目下J1トップスコアラーのジャーメイン選手が、飄々とゴール右隅に蹴り込みジュビロが先制します。

さらにその直後の後半34分、相手の強烈なシュートをキャッチしたGKの川島選手が、迷わず最前線のマテウス・ペイショット選手めがけてロングキックを入れます。ペイショット選手はジャーメイン選手の動き出しを確認しながら、ボールがDFから逃げる位置に丁寧に落とすと、ジャーメイン選手はノートラップで利き足とは逆の右足のインサイドを慎重かつ確実にミートさせて今季7点目となるゴールを突き刺します。ジュビロは歴代、数々の得点王を輩出して来ましたが、そういったレジェンドたちはみな、ゴール前で正確にシュートを打つ技術を磨いてその地位を築きました。ジャーメイン選手にそういう可能性を感じさせてくれる得点だったと思いました。

この終盤の2得点で、リードをもらったジュビロは最後まで無失点で守り切って、絶対に欲しかった勝ち点3をクリーンシートで手にすることができました。

ところで、今日のジュビロの得点シーンは2点ともストロングであるサイド攻撃では無く、最後尾からの長い縦パスでゴールを模索しました。これはジュビロが後半風上に立ったことで、その風を利用したためで、ゴールシーン以外でも長めのボールを意図的に入れていました。ロングボールを使うと中盤を飛ばしてしまうので、古川選手がドリブルで無双してシュートまで行くシーンを見たかったファンとしては少し物足りなさを感じたかもしれません。ただ、マテウス・ペイショット選手とジャーメイン選手の高さは、ジュビロの新たなストロングになるかもしれないという期待感を感じさせてもらった試合となりました。