少し忙しくて、更新が停滞しています。

 

近日中にレビューする映画・ドラマは以下です。

既に鑑賞済みです。

 

映画「ステップ」

映画「犬も食わねどチャーリーは笑う」

映画「CUBE」※日本版です

映画「ルームロンダリング」

 

ドラマ「I’s」ありきたりになるので、レビューしないかもしれません。

©︎2016 KOZUE NOMOTO

 【わたしが発芽する日】ネタバレ・考察

2016年の短編映画「わたしが発芽する日」を鑑賞しました、今回はストーリーは程々にして考察メインで行きたいと思います。冬の蝶に続いて短編映画です。

 

それでは考察したいと思います。

ネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

 作品情報・キャスト

公開:2016年

上映時間:27min
監督:タナダユキ

原作:平庫ワカ

 

キャスト

沙耶   :藤原麻希

優子   :堀春菜

父親   :松木大輔

沙耶の恋人:本間淳志

 

 

 あらすじ

結婚を控えた紗耶と、その妹で空気を読むのがニガテな優子は 2 人暮らし。年を重ねるにつれ、その生活は変化を強いられていく。

(C)2016 KOZUE NOMOTO 引用

 

出典:映画『わたしが発芽する日』予告編

 

 空気が読めない妹

みんなとはちょっと違う優子は、空気を読むのが苦手。

この先は工事をしているから通れないと言われても、どうしても通ろうとする。何故なら「通らないと家に帰れない」からだ。交通整理の人にこの先を迂回すれば行けますと言われて、う回路を進んでもその先どうやって自宅に行けばいいか分からず、ひたすらう回路をまっすぐ進んで迷子になってしまう。

 

そんな優子と一緒に暮らしているのが姉の紗耶です。

紗耶は優子の世話をしながら仕事をしていて、恋人もいます。ある日、恋人からプロポーズをされてOKの返事をします。しかし優子と生活を改めて考えた時、結婚なんてできるわけがないと感じて、プロポーズを断ります。

 

自分が優子の面倒を見なければ、誰が優子の世話をするのか。誰もいないではないか。だったら結婚なんてできないし、結婚しても上手く行くわけがない。現実を直視した結果の答えを出したわけです。

 

婚約指輪をしていない紗耶を見て、優子はどうして指輪を返したのかと言います。そして恋人にも指輪をお姉ちゃんに返してあげて欲しいと懇願しますが、上手く行きません。当然です、どうして指輪をしていないのか優子には理解できていないんだもの。そんな優子ですが何とか指輪を買うために、ホームセンターでバイトをしますが電話のメモを取れなかったり、商品管理ができないなど1日でクビになってしまいます。

 

 

ーー考察

このような映画を見ると難しいテーマだと思い人がいるかもしれませんが、これは確実に日本の一部家庭における現実です。自閉症、発達障害など一見すると何の問題もないように見える人が、実はという話は身近なところでもあります。

 

そしてそれは家族を縛り付ける原因にもなります。

自分が面倒を見なければ誰が見るんだ、というのは究極の答えです。

どうしてプロポーズを断ったのか「お前のせいだよ。お前がいるからだ」とは口が裂けても言えないですよね。たとえそれを言ったところで、優子は理解できないでしょうし何も解決しません。

 

「社会が助け合えば」などという言葉を口にすれば、何もかも解決するかのようにのたまうニュース番組のコメンテーターがいますが、そんなもの第三者の他人だから言える只の偽善でしかないと私は思います。

 

現実はもっとシンプルで残酷です。

 

 普通って何?

バイト先をクビになるとき優子は「お前は普通じゃないんだよ、分かるだろ。明日からもう来なくていいんだ、どうして分からないんだ。」と言われます。

 

優子はその日、家に帰ってから辞書で「普通」を調べた後、姉と帰ってきていた父親に「普通ってなに?」と問いかけます。「お前は普通じゃない」って言われたことを明かすのですが、紗耶は答えられません。

 

そんな優子に父は「普通なんて誰かが決めるもんじゃない。優子は優子でいいんだ」と言います。そして父は優子に「田舎に行かないか。色んな野菜がいっぱいだ」と言って身支度をさせます。優子は楽しそうに身支度をして、車で実家に行くのでした。

 

それを見送る紗耶の姿はどこか寂しそうです。

優子がいなくなり負担が消えて楽になるはずの紗耶ですが、優子がいない事で寂しさを覚えてしまいます。優子は生活の一部になっていたのです。

 

そのことを恋人に打ちあけ、恋人は3人で暮らすことだってできると言いますが、やはり紗耶は首を縦に振ろうとはしません。

 

 

ーー考察

「普通なんて誰かが決めるもんじゃない。優子は優子でいいんだ」

はい、そういうしかないですよね。

 

「普通」っていう言葉は線引きが難しいですが、単純でもあります。

この場合、一般的にできることができなければ「普通ではない」という結論に、バイト先の上司は判断しただけのことです。

 

それを差別と取るのか、区別と取るのかは立場によって違うでしょう。

業務に支障が出てしまえば、大問題です。

それでもクビにするのは間違ってるというのは、他人事だからではないでしょうか。

 

また、優子がいなくなって紗耶が寂しさを感じるのは、優子がいる生活が当たり前になっていたからで、解放されたい気持ちと実際にそうなったときの感覚のギャップっていうのは、人を苦しめさせます。

 

望んでいたはずの生活が、実は自分に必要なものだったのかもしれない。

そう考えてしまうのは、単純に共依存関係です。

言葉でいうのは簡単ですが、解決するのは非常に難しいです。

 

そして二人は発芽する

優子が実家から帰ってきました。

紗耶は「ねえ優子。別々に暮らそ」と提案します。

それに対して「うん。」と素直に頷く優子の反応を見て、紗耶は驚いた顔をします。

 

優子は自分が働いて稼いだお金で指輪を買って姉に渡します。

「安いのになっちゃったけど、可愛いからいいよね」という優子に対して、紗耶は微笑みながら「ありがとう」と言います。優子は「これでも悲しくならないでしょ」と返します。

 

優子がいなくなって、紗耶と恋人が海岸を歩いています。

石ころを投げたりしながら散歩しますが、しばらく歩いたところで紗耶がしゃがみ込んで泣いてしまい、それに駆け寄り、寄り添う恋人。

 

 

暗転。

 

 

ーー考察

優子の「安いのになっちゃったけど、可愛いからいいよね」で号泣してしまいました。紗耶が「別々に暮らそ」といったすぐ後のシーンだったから、余計に。。。優子の純粋さにあてられました。

 

すみません、私は偽善者です。

結局、第三者目線でしか見れないのは私も同じだと実感しました。

 

最後に紗耶がしゃがみ込んで歩けなくなったのは、自分だけ幸せになってそれでいいのか。。という、その疑問への答えは出ないでしょうし、それすら偽善なのかもしれませんね。

 

事実は目の前にあることがすべて、だから残酷な結果でも受け入れなきゃいけないんだと、この映画を見て思いしらされました。

 

号泣した次の瞬間に「当事者でないお前に何が分かるんだ」と刺されました。

©︎2016 映画「冬の蝶」製作委員会

 【冬の蝶】ネタバレ・考察

2016年の短編映画「冬の蝶」を鑑賞しましたので、ストーリー含めて考察したいと思います。わずか19分の短編映画ですが、ゆっくり流れる時間を表現した作品だったので、30分ほどに感じました。

 

それではストーリーの紹介と考察をしていきます。

ネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

 作品情報・キャスト

公開:2016年

上映時間:19min
監督:遠山昇司

 

キャスト

サチ(主人公):Una

サチの兄   :五十嵐靖晃

サチの母   :岩崎幸代

サチの祖母  :大西靖子

 あらすじ

人里離れた山奥の集落で育ったサチは、実家を離れて都会で一人暮らしをしていた。
ある朝、認知症の祖母から電話がかかってくる。
「おばあちゃん、さっきね、蝶々をつかまえてきたの。今ね、手の中に隠してるの。今度、サッちゃんと会う時に見せてあげるわね。」

しばらくして今度は母からさっきまで電話で話していた祖母が危篤であるという連絡が入り、サチは信じられないまま実家へと向かう。
冬の山々。生まれ育った実家。眠ったままの祖母。幼い頃、兄と見つけた不思議な蝶の思い出。
実家に到着したサチは兄から”あの時の蝶”を今朝見つけたと知らされる。
サチは自分の記憶とともに、故郷を巡り始める。

 

映画「冬の蝶」公式サイトより抜粋、引用

 

出典:映画『冬の蝶』予告編

 

 第1章:夢?現実?

寝ているサチに祖母から電話が掛かってくる。

「おばあちゃん、さっきね、蝶々をつかまえてきたの。今ね、手の中に隠してるの。今度、サッちゃんと会う時に見せてあげるわね。」と言われ、その場はすぐに電話を切るが、しばらくすると母から電話があり「祖母が危篤である」と告げられる。

 

そんなわけはない、さっき祖母と電話で話をしたばかりだ。

母に告げても、祖母はずっと眠ったままで電話なんてしていないと言われ、サチは電話が夢だったのか?と錯覚してしまう。

 

急いで車に乗って実家に戻るサチ。

冷たい空気感のある山に囲まれた場所に実家はあった。

 

 

ーー考察

ゆっくりした空気感で始まったので、短編映画なのにどんな展開をするんだろうと少し心配になりましたが、容易に想像できるひんやり感がこの映画には大事なんだと後になって分かりました。

 

 第2章:蝶の存在

実家に到着して部屋に入っていくと、祖母は眠ったまま。ここ数日眠り続けていて食事も食べていないと母から聞かされ、死期が近いとサチは悟りました。

 

兄と話がしたくて炭焼きをしている兄のもとに行き、たわいもない話をしながら峡谷にかかる「吊り橋に行きたい」と言って兄と一緒に向かいます。

 

兄と一緒に吊り橋を渡って世間話をしている最中に、母から祖母が目を覚ましたと電話があり、急いで実家へ戻る二人。

 

祖母はサチの母親のことも忘れてしまうほど認知症が進んでいたが、サチのことは覚えており「サっちゃんに渡したかったんだよ」といって、両手で大事に持っていた「冬の蝶」をサチに渡します。

 

祖母の手の中には何も入っていなかったが、サチは大事そうに「冬の蝶」を受け取り、祖母の気持ちを汲みました。昔、「冬の蝶」を見つけたとサチが言っても、母も祖母もそんなものがいるはずないでしょと否定したのを思い出すサチ。

 

 

ーー考察

手の中には何もなかったが「冬の蝶」を受け取ったサチの優しさが沁みます。

昔、そんな蝶なんていないよと否定された、まさにその「冬の蝶」を祖母からサチは受け取ったのです。

 

今まさに最後の時を迎えようとしている祖母から「冬の蝶」を受け取るのは、サチにとってはぐっとくるものがあったのではないでしょうか。

 

エンディングへと続きます。

 

そしてエンディングへ

サチは兄から「今朝見つけた」ガラス瓶に入った蝶の死骸を受け取ります。

そうです「冬の蝶」は本当にいたのです。

あんなに否定されたけど、本当にいたということをサチが実家に来たタイミングで受け取り、そして祖母からも気持ちとして受け取りました。

 

サチは祖母に挨拶ができたので、自宅への帰路につきます。

途中で車に轢かれたのか、清で道に横たわる鹿を見つけて車を止めるサチ。

サチはその死骸の腕を持って道路の脇へ引きずるのでした。

 

 

暗転。

 

 

ーー考察

嘘じゃなかった、私の見たものは間違いじゃなかった。

そう確信できる証拠が兄から手渡され、祖母からも(心が)手渡されたわけです。

そして帰路に就く途中で死んでいる鹿を見つけ、脇へ移動させる。

 

まさに「生と死」がこの19分という短い映像の中に、詰まっていました。

多くを語らない映像は、言葉を超越したと言ってもいいでしょう。

 

・今生きている自分や兄、母。

・そして命を終わろうとする祖母。

・吊り橋という危うい存在。

・死んでしまった「冬の蝶」と「鹿」

 

山に囲まれた実家は、ひんやりと寂しくもあり懐かしい場所。

そこで見た生と死のありのままを粛々と描いた作品であると思いました。

 

ただ、サチのセリフが棒過ぎて。。。って思ったけど、ご愛嬌ということで。

©︎2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会

 【マイ・ブロークン・マリコ】ネタバレ・考察

2022年の映画「マイ・ブロークン・マリコ」を鑑賞しましたので、ストーリー含めて考察したいと思います。物語としてはそれほど濃いものではなく、数日~よくて2週間ほどの時間で起こるイベントをピックアップした感じです。

 

なので85分という短めの作品だから、疲れることなく観ることができました。

原作ありきではありますが、余計な事を語らないのが本作のスタンスなのかもしれません。

 

・現実逃避するしかない人生

・誰かに依存してしまう人生

・居心地がいい相手との人生

・だけど生きるしかない人生

 

そんな感じで自分にとっての人生って何なんだろうと思わせてくれる映画でした。

後味は悪くないです。むしろ良かったです。

 

それではストーリーの紹介と考察をしていきます。

ネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

 作品情報・キャスト

公開:2022年

上映時間:85min
監督:タナダユキ

原作:平庫ワカ

 

キャスト

シイノトモヨ :永野芽郁

イカガワマリコ:奈緒

マキオ    :窪田正孝

マリコの実父 :尾美としのり

タムラキョウコ:吉田羊

 

 あらすじ

ある日、ブラック企業勤めのシイノトモヨ(永野芽郁)を襲った衝撃的な事件。

それは、親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したという報せだった――。彼女の死を受け入れられないまま茫然自失するシイノだったが、大切なダチの遺骨が毒親の手に渡ったと知り、居ても立っても居られず行動を開始。

 

包丁を片手に単身“敵地”へと乗り込み、マリコの遺骨を奪取する。幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ、人生を奪われ続けた親友に自分ができることはないのか…。

 

シイノがたどり着いた答えは、学生時代にマリコが行きたがっていた海へと彼女の遺骨を連れていくことだった。道中で出会った男・マキオ(窪田正孝)も巻き込み、最初で最後の“二人旅”がいま、始まる。

 

ーーその日死んだイカガワ マリコという人は、あたしのダチだった
  あたしはマリコの幼馴染のシイノ トモヨだ
  刺し違えたってマリコの遺骨はあたしが連れていくーー

 

マイ・ブロークン・マリコ公式サイトより抜粋、引用

 

 

出典:映画『マイ・ブロークン・マリコ』90秒予告編

 

 ストーリー追っかけ考察:絶対にマリコを奪う

ブラック企業で営業をしているシイノトモヨは、外回りで昼食を食べているときに掛かっていたテレビのニュースで、親友であるイカガワマリコが転落死したことを知ります。本人であってほしくないと願うシイノは、SNSで何度もマリコに連絡を取るもメッセージは既読にならず。

 

マリコの部屋を訪れますが、既に遺品は両親が引き取り遺体も直送になったと知らされます。マリコが日常的に父親から肉体的、精神的、性的な虐待を受けていたことを思い出し、マリコの遺骨がそんなクソな父親の元にあることが許せず、包丁を鞄に忍ばせてマリコの遺骨のある実家へセールスを装って入り込みます。

 

そして父親が遺骨の前で座っている隙を狙って遺骨を奪い、包丁を突き付けながらこう言い放ちます。

 

ーーあたしはマリコの幼馴染のシイノ トモヨだ
  刺し違えたってマリコの遺骨はあたしが連れていくーー

 

包丁にビビっている父親を後目に、マリコの遺骨を抱えたままシイノはベランダから飛び降り、川の中を渡って逃走したのです。

 

 

ーー考察

親友の死を知るという絶望感からの怒涛の行動ですが、シイノの性格を上手く表しているように感じました。今までクズな父親からマリコを救ってあげられなかった無力さも相まって、遺骨であれば奪ってしまえば救えるというのは何とも表現が難しいですがイイですね。

 

 ストーリー追っかけ考察:初めての二人だけの旅行

マリコの遺骨をもってヨレヨレになりながらも帰宅したシイノは、最後にマリコにしてあげられることは無いかと考え、マリコからもらった大量の手紙を引っ張り出して読みます。マリコはことあるごとにシイノに手紙を書いていたのでした。

 

ーー中学生時代の回想シーン

シイノがマリコに「海へ行こう」と誘うと、マリコは「行きたいけど無理だよ。お父さんが怒るから」と断ります。

 

シイノはマリコの遺骨に向かって「もう怒られっこないよ」とつぶやいて、海へ連れて行こうとします。しかし海と言ってもどこがいいのか分からず悩んでしまいます。

そんな時に思い出したのが、マリコが「自分の名前に似てるんだよね」と言っていた「まりがおか岬」の話を思い出しました。

 

シイノは「まりがおか岬」へ行く事を決心し、必要なものを鞄に詰め込んで深夜バスに乗り込みます。マリコとの思い出を振り返りつつ、バス、電車、バスと乗り継いでようやく「まりがおか岬」にたどり着きました。

 

 

ーー考察

マリコが行きたいと言ってたけど、結局行くことができなかった海。

そして思い出した「まりがおか岬」へ行く事を決心するシイノですが、モヤモヤした思いを抱きつつもその段階で自分も死ぬことを考えていたかもしれません。

 

二人の形は違ってしまいましたが、それでも二人だけの旅行いわばマリコとの約束を果たすための場所が「まりがおか岬」であり、そこしかなかったわけです。

 

ちなみに「まりがおか岬」そのものは実在しませんが、ロケ地は「青森県八戸市種差海岸」です。「まりがおか岬」とマッチするロケ地の候補として、イイ感じの「海沿いの崖」と「ススキ原」が必要だったのでかなり苦労したものの、最終的に種差海岸が選ばれました。

 

バス、電車、バスと乗り継いでいかないとたどり着けないというのも、二人だけの旅行を表現するのにベストマッチと言えるでしょう。すぐに到着してしまったら、ちょっと白けますからね。

 

 ストーリー追っかけ考察:共依存関係な二人

シイノは「まりがおか岬」に到着しましたが、道路を歩いているところで後ろから来たバイクに大事な鞄をひったくりされてしまいます。スマホ、財布、そしてマリコからの大事な手紙の全てを一瞬で失ってしまうシイノ。

 

そんなシイノのそばを釣り人の男性が偶然通りかかり、声を掛けます。シイノは鞄を取られたことを話すも、手紙を取り返したい焦りからマリコの遺骨を置いたままバイクを追いかけていくのでした。

 

当然ですがひったくり犯は捕まえられずシイノは戻ってきますが、何と釣り人の男性がマリコの遺骨のそばで座って待っていたのです。そして無一文になったシイノにたいしてお金を渡して去っていきます。シイノが名前を聞くも「名乗るほどの者ではありません」と言い残して消えます。なお、釣り人の持っていたクーラーボックスには「ナリタ商店」「マキオ」と書いてありました。

 

その日の夜、マキオからもらったお金で食事をし酒をたらふく飲んだシイノ、マリコの幻覚を見てしまい居酒屋で大絶叫し他の客に絡みまくります。

 

翌朝、海岸沿いの船で寝ていたシイノは偶然マキオに再会し「ご自分を大事にしてください」と言われます。シイノは自分も同じことをマリコに言っていたこと、暴力男に何度も殴られているマリコのことを思い出しました。

 

ーー回想シーン

男の暴力で腕を骨折してしまったマリコをみて「どうして会いに行くんだよ。おかしいよ!あんたどっか壊れてるんじゃない!」と激怒するも、マリコは「そう私は壊れてるんだよ。シイちゃんが本気で怒って、心配してくれるのがうれしい」と言い放ったのでした。

 

他の回想シーンでは以下のようなやり取りもありました。

マリコ:「シイちゃんに彼氏ができたり、私より大事な人ができたら私死ぬからね」

シイノ:「マリコは彼氏ができると連絡してこないけど、別れると私に連絡が来る」

 

 

ーー考察

はい。二人は共依存関係にあったと言えるでしょう。

シイノにとっては放ってはおけない存在であり親友である、自分がいないとダメ。

マリコにとっては自分が苦しい時に助けてくれる存在である。

 

マリコにとってシイノは自分に都合の良い存在であったのは間違いありません。

親、彼氏など関係する男からことごとく暴力を受けてしまうシイノは、全部自分が悪いと思い込むことで心の安定を図りつつ、マリコに相談して怒られたり守ってもらえることで自分の存在を確かめられたのでしょう。

 

マリコがシイノの目の前でリストカットする姿などは、まさに「構って欲しい」の典型的な行動だと言えます。シイノからすれば一人にさせられない存在となるわけですが、都合の良い時しか連絡してこないことには腹を立てていたと思います。

 ストーリー追っかけ考察:散りゆくマリコ

シイノは自分に何も言わず死んでしまったマリコに対して苛立ち、衝動的に崖から海に飛び込もうとしますが、その場を目撃したマキオに羽交い絞めにされて止められます。シイノとマキオがもみ合っているところに、女子中学生の「助けて!!」という叫び声とともに、ヘルメットをかぶった男が女子中学生を追いかけているのが目に入ります。

 

その「助けて!」という叫びを、マリコの叫びに重ねたシイノは無意識に体を動かしてヘルメット男のところまで走り出し、マリコの遺骨が入った骨壺で男を殴り倒します。衝撃で男は倒れますが、同時に骨壺も割れてしまい中からマリコの遺骨が飛び散ってしまいます。

 

シイノは飛び散ってしまったマリコを掴もうとしますが、勢い余って崖から落ちてしまいます。浜辺に打ち上げられたシイノのもとに、マキオがやってきて「ここでは死ねないんだよね。自分もやったことがあるんだ」と自分も自殺を試みたことがあると打ち明けます。

 

そしてマキオはこう言います。

「いない人に会うには、自分が生きていくしかないんじゃないか」

「想いでの中で生き続ける彼女は、君が死んでしまうと永遠に消えてしまう」

と語りかけたのでした。

 

ちなみにヘルメット男はシイノのカバンをひったくった男と同一人物で、シイノはマリコの手紙を取り戻すことができたのです。後日、助けた中学生から手紙を受け取り「ご恩は一生忘れません」と書かれていたのでした。

 

 

ーー考察

ヘルメット男が出てきたシーンはちょっと唐突感があって、そんなところで襲われるってどういうこと?と思いましたが、まあいいかなw

 

キラキラと光るマリコの遺骨は、必死になって生き抜いてきたマリコ自身を表現しているかのように見えました。結果的にマリコは行きたいと言っていた海に行くことができ、そこで眠りについたことになります。

 

あと「ご恩は一生忘れません」という手紙の文章は、シイノにとっては大きな一言だったに違いないでしょう。

 

ここからエンディングへと進みます。

 

そしてエンディングへ

シイノはマキオとの別れ際に「このご恩は一生忘れません」と言って、電車に乗り込みマキオに顔を向けることなく渡された弁当を一心不乱に食べ始めるのでした。電車が動き出して、ようやくマキオの顔をみて一瞥しました。

 

シイノは自宅へと戻ってきた際「シイノトモヨ、恥ずかしながら戻ってまいりました」と挨拶し、マンションへと入っていきます。

 

シイノはブラックな会社を辞めるために、辞表をクソ上司に提出しますが「辞められるわけねえだろ!」と言われ辞表はビリビリに破られてしまいます。

 

ある日、シイノが帰宅すると玄関のドアノブに袋が掛かっていて、中にはマリコの実家に脱ぎ捨ててきた靴とキョウコからの手紙が添えられていました。

「自宅バレてんじゃん」と言いながら、シイノは手紙を開けます。

 

開けた手紙にはマリコがシイノ宛に書いた手紙も入っていました。

「シイちゃんへ」と書かれた手紙を立ったまま読むシイノ。

手紙は2枚あり、1枚目を読んだところで微笑み、2枚目を読み進めると泣き崩れ手紙で顔を隠します。

 

暗転。

 

 

ーー考察

最後のシーンはちょっとヤバかったです。はい。

しかし手紙の内容を明かさないというのは、良かったと思います。

シイノの表情を見ればおよそ内容はわかりますからね。

 

映画全体として「綺麗」にエンディングを迎えたのではないでしょうか。

いてもたってもいられなくなって行動するというシイノの人物像、弱ったときにシイノ助けを求めるマリコ、それを助けてしまうシイノという二人の人間関係が随所で表現されていたように思います。

 

上映時間85分ですが、これ以上長いと間延びしてしまうでしょうし

逆にそれより短いと歯ごたえがないというか、物足りなさを感じたと思います。

ので、伝えたいことは映像の中に全て盛り込んだ結果、85分であると解釈しました。

 

©︎2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会

 

最後の手紙の内容は?マリコが死の原因は?

映画の中では最後の手紙の内容は触れられていません。原作でも同じです。

しかし映像化することによって、シイノの表情から内容は推測できます。

 

シイノは手紙を読んで微笑みました、そして涙しました。

つまり内容はいつものたわいのないものであったと考えて良いでしょう。

遺書のような強いメッセージが込められていたとは思えません。

 

でなければ微笑みません。

そして涙したのは、もう「マリコへ返事ができない」からではないでしょうか。

 

物語の中では「どうして私に何も言わずに死んだんだよ!」と叫ぶシーンがありますが、手紙へのリアクションからもマリコは自殺ではなかったと考えられます。

何かの拍子にベランダから転落してしまったと考える方が話が通ります。

 

もし自殺だとすればマリコの性格からして、シイノに助けを求めないわけがありませんし、何も残さないのも筋が通りません。

原作の表現はさておき、私個人は自殺ではないと読み取りました。

 

肉体的、精神的、性的な虐待、暴力を受けてきたマリコですが、自殺するときはシイノが私より大事なものができた時だ!と宣言しているので、このタイミングではないのは明らかでしょう。
 

それにしても父親のド腐れっぷりや歴代彼氏のクズっぷりには驚きますね。

父親からの虐待のせいで、類友な相手を吸い寄せてしまうオーラをマリコが纏ってしまった可能性が高いですけどね。

 

父親や歴代彼氏が何も裁きを受けないのは、モヤモヤしてしまいます。

(そんなシーンがないので勝手な戯言ではありますし、見たくはないです)

 

はい。マイ・ブロークン・マリコでした。

是非、みなさんも観て感想を聞かせてくださいね。

(C)2019「おろかもの」制作チーム

 

 【おろかもの】ネタバレ・考察

 

2020年の映画「おろかもの」を鑑賞しましたので、ストーリー含めて考察したいと思います。世の中にごまんとある浮気モノですが、切り口が斬新でした。タイトルにある「おろかもの」とは浮気をする人間の事だけを差しているのではなく、それに関係している人間の中にも「おろかもの」がいることを意味しています。

 

単純な浮気モノだとありきたりで先が読める展開になりますが、本作はそうならないように工夫した脚本と見せ方になっていますので「浮気するようなクズ人間なんて見たくないわ」という人にも一見の価値はあると思います。

 

そしてラストを自分なりに解釈するのが、W監督からの挑戦状だと思いますので、少々の間お付き合いください。

 

それではストーリーの紹介と考察をしていきます。

ネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

 作品情報・キャスト

公開:2020年

上映時間:96min
監督:芳賀俊・鈴木祥 (W監督)

脚本:沼田真隆

主題歌:「kaleidoscope」円庭鈴子

 

キャスト

高城洋子 (健治の妹):笠松七海

深津美沙 (浮気相手):村田唯

高城健治 (洋子の兄):イワゴウサトシ

榊果歩(健治の婚約者):猫目はち

小梅 (洋子の同級生):葉媚

倉木宗介(健治の先輩):広木健太
安達真奈美(バーテン):林田沙希絵
吉岡秀子(洋子の担任):南久松真奈

 

 あらすじ

高校生の洋子は結婚を目前に控えた兄の健治が、美沙という女性と浮気をしている現場を目撃。 両親を早くに亡くし、2人で支え合って生きてきた兄の愚かな行為と、それを隠して何食わぬ顔で生活している様子に、洋子は苛立ちを募らせます。

 

一方、洋子は健治の婚約相手の榊果歩に対して、兄と2人だけの関係の中に突然入ってきた存在として言い様のない違和感と不満を感じていた。

 

衝動と好奇心に突き動かされて美沙と対峙した洋子は、美沙の独特の物腰の柔らかさと強かさ、そして、彼女の中にある心の脆さを目の当たりにして、自分でも予期せぬ事を口走ってしまう。


「結婚式、止めてみます?」

 

2人の女性達の奇妙な共犯関係がはじまる…。

 

「おろかもの」公式サイトより引用・抜粋

 

単なる浮気モノではなく、当事者の親族が積極的にそれに関わっていくスタイル

斬新ですし、リアルってこんな感じだよねと変に納得するかもですよ。

 

出典:映画『おろかもの』予告編

 

 ストーリー追っかけ考察:事の始まり

洋子は結婚を目前に控えた兄・健治が、婚約者とは別の女性・美沙と浮気をしている現場を目撃しカメラに収めます。その後も洋子は兄が美沙と密会しているところを尾行し、ついに美沙が1人カフェに入ったところで突撃し直接対峙します。

 

カフェで美沙を見つけ自分が健治の妹であることを伝えます。

美沙は飄々とした態度でパスタを食べながら、それでどうするの?水でもぶっかけるの?と洋子を逆に煽りかかります。

 

そんなつもりはないと洋子は答え、何となく気まずい空気が流れる中で美沙は「私は

健治が好きだから。婚約していても別れない」と突き付けます。

そして食事を終えた美沙は連絡先を洋子に伝えて、店を後にするのでした。

 

 

序盤ではありますが、カフェで二人が対峙しているシーンの空気感は凄いリアルさを感じました。何というか、実際にこういう場になるとこんな感じになるのかなぁとか、でも美沙も妹が来たからって相手するのはどうなの?と思ってみたり・・・

 

どちらにしても二人の会話もそうですが、「間」が凄い良かったです。

個人的には、美沙がパスタをずっとコネくり回しているのが超気になりました。

「はよ食えや!」ってね。

でもって半分以上残したまま出ていくんかい!ってw

 

 ストーリー追っかけ考察:不思議な共闘関係

洋子が美沙にショートメールで連絡を取ると、「もう一度会おうよ」ということになって、美沙が洋子の家にやってきます。※健治も果歩も住んでいる家です。

 

美沙は家の中に入ると、健治の寝室を見てショックを隠さなかったり素の自分を洋子の前で見せます。そんな美沙を見ているうちに「この人はもしかして悪い人ではないのかもしれない」と感じた洋子は「結婚式、止めてみます?」ととんでもない提案をぶち上げます。

 

美沙もその提案に驚きつつ、浮気している当事者としての熱量が上がったのか不思議な共闘関係が始まりました。

 

その後は洋子と美沙が二人で健治と果歩のデートを盗み見したり、どんな方法で結婚式を邪魔するかを考えますがその計画はなかなか捗りません。

 

ある日、洋子は美沙の家に泊まり朝帰りします。帰ってきたときに健治と鉢合わせしますが、洋子は兄が果歩を裏切り、美沙を傷つけている現実に強い憤りを感じており、完全に無視します。

 

しかし健治は妹が朝帰りしたという事実だけを心配し、まさか結婚を妨害する計画が進行しているなんて想像もしていないのでした。

 

 

洋子の「結婚式、止めてみます?」の発言はビックリしましたが、少なからず共感できるところがありましたね。果歩の事を考えてしまうと「ありえない」となるのですが、兄を懲らしめるという点で40%ぐらいは共感できました。

 

 ストーリー追っかけ考察:愛人の限界

美沙は洋子と一緒に果歩が働く花屋を偵察に行き、ゴミ箱から空の瓶を取って店に向けて放り投げるという暴挙に出ます。※完全に犯罪です・・・

 

その後、計画が思うように進まないことに苛立ちを隠せない美沙は、果歩に直接会いに花屋を訪れ浮気をしていることを全て打ち明けます。

 

それでも果歩は全く動じず「愛人になど負けない」という態度を取ったようです。この部分は映像化されておらず、美沙と果歩それぞれの発言から判明しました。

 

美沙「あの人、全然動揺しないんだよ。どうかしてるって」と洋子に話します。

果歩「私にはあの人に無いものを持っている」とこれまた洋子に話すのです。

 

 

これこそ「愛人としての立場の限界」ではないでしょうか。

そして「婚約者という選ばれし立場」の強みが出ているとしみじみ思いました。

「果歩、強ぇぇ!」です。

 

 ストーリー追っかけ考察:共闘関係の終焉

結婚式妨害計画はある日、破綻します。

それは洋子が美沙に対して「結婚妨害するのやっぱりやめます」と告げた事に始まります。美沙は「やっぱり洋子もそっちの立場なのか!」と激怒しますが、洋子の一言「浮気するほうが悪い!」のド正論で共闘関係は終焉です。

 

 

美沙は洋子という相棒を失って一人になってしまい、落ち込みますが

普通に考えて結婚式を妨害することがどれだけ罪深い事かは分かりますよね。

妨害を辞めるということが、エンディングに向かってどうなるのか益々予想が難しくなっていくのでした。

 

 ストーリー追っかけ考察:兄に対する不満爆発

ある日、健治は美沙とラブホテルで密会しますが、美沙が「次はいつ会える?」という質問に対し、煮え切らない態度を取ります。何度も美沙が問いかけるとついに「もうこれで終わりにしよう」と関係を終わらせることを告げます。

 

嫌だと涙を流しながらすがる美沙ですが、それを振りほどいて健治は出て行ってしまいます。

 

洋子は共闘関係が終わった後も、美沙に対してメールをしていました。

しかし返事が全く来ず、何かあったのかと心配になってしまいます。

 

そうこうしているうちに結婚式が近づいてきて、洋子は健治と一緒に墓参りに行きます。そこで健治は「結婚すれば変わるものもあるが、俺たちが兄弟であると言う事は変わらないからな」と結婚に向けた決意表明を墓の前で宣言します。

 

それを聞いた洋子は何があったか悟ったのか、小さな声で「ふざけんな」といい、その後、「どうして人を不幸にするんだ!」と兄に向って涙を流しながら枯れた花をぶつけ、胸を思いっきり腕で殴り感情を爆発させたのです。

 

その時初めて健治は自分がやってきたことが洋子にバレていたことに気が付き、洋子を深く傷つけたことを認識し、洋子を抱き寄せます。

そうです、健治は果歩を裏切り、美沙を弄び、洋子を傷つけたのです。

 

健治はバーテンダーの真奈美に浮気を辞めるように問い詰められた際に「俺は適当なんかじゃない」と反論しますが、「中途半端なやさしさ方が質が悪いんだ!」と怒鳴られてしまい、言い返すことすらできませんでした。この一言がきっかけで美沙に別れを告げる決心がついたのだと思います。

 

 

それにしても健治クズすぎますし、自分は誠意ある対応をしているつもりで浮気してるんだから、質悪いのは間違いありません。

クズならクズらしく開き直るぐらいがちょうどいいのに、変に誠実さみたいなものを見せようとするから余計に傷口を広げる結果になるのです。

 

只一人の肉親である洋子まで泣かせるとは、兄として人間として最低です。

しかしそんな健治もいよいよ結婚式を挙げることになるのです。

 

そしてエンディングへ

そしていよいよ結婚式当日です。

洋子が紫のドレスを身にまとい、すごい綺麗になって参列します。

白いドレスを着た果歩が入場してきて、健治と共に神父の前に進んで行き誓いの言葉を交わした後、キスをします。

 

洋子は美沙が「結婚式には行くよ」と言っていたのを気にしていて、「来ないで」と心の中で祈っており、気が気ではない状態です。

 

そしてついに神父が祝福の言葉を述べているところに、真っ赤なドレスの美沙がドアを押し開けて入ってきます!

 

場内全体が凍り付く中、健治は驚いた顔をしたまま動けません。

しかし果歩は健治の前に無言で移動し美沙の前に立ちはだかるのです。

まるで健治は私の者であり、美沙には渡さないと言わんばかりです。

言葉にせず態度で示す当たり、果歩の強さというべきでしょうか。

そんな果歩の強さを改めて見せつけられた美沙は自分の場所はそこにはもうないと悟ったかもしれません。

 

そんな時、洋子が美沙の前に立ち手を差し出して「さぁ、行こう!」と声を掛けます。手を握り、ドアを開けて二人が笑顔で振り返って、ドアから消えていきます。

 

果歩は笑顔で健治を見て、健治は呆然自失の状態です。

宗介は美沙と果歩の行動に感動して、泣きながら拍手を送るも空気が読めず小さくなってしまいます。

洋子と美沙は教会を出てひたすら走ります。

教会を遠目に見える場所まで来たところで息切れして立ち止まります。

見上げると教会が見え、祝福の鐘が鳴らされています。

それを見る美沙の目は達成感でもなく、諦めでもなく「傷ついた痛みは抱えて生きていくしかない」と悟ったようでもあります。近くに洋子がいたからこそ、号泣することなくこの後の会話に繋がったのでしょう。


美沙「洋子ちゃん、お腹すいた」
洋子「何食べます?」
美沙「中華」
洋子「中華行きましょう」
 

暗転。

 

 

どうですか、最後の二人の行動は理解できますでしょうか。

私は洋子の優しさがにじみ出ていて良かったなと思いました。もし、あのまま美沙が新郎新婦に詰め寄っていたら、悲惨な結果しか生まれませんから。

 

洋子のファインプレーといったところでしょうか。

それにしてもピンヒールで走るのは相当しんどかったのではないでしょうか。

下手したら転倒して怪我してたかもよ?

 

という二人の行動が注目されるシーンではありますが、最後の最後まで健治はクズだったなというしかないですね。結婚式からしばらくして健治は交通事故に遭い、生死の境をさまよったらしいですが、自業自得という言葉がしっくり来た私もクズなのかもしれません。無事回復したようですがw

 

で、もう一つ結婚式で気になったんですけど、教会のセットがしょぼすぎませんか?参列している人の演技もそうですけど、薄すぎる!と思いました。

それまでのシーンと比べると、エンディングなのに超手抜きじゃん!としか・・・

 

それと新婦花嫁の果歩ですが、もう少し綺麗なメイクはできなかったのか?

普段のメイクと変わらないじゃん!

洋子や美沙のほうが綺麗なメイクで、しかも衣装も花嫁を食っちゃってるし

これはワザとの演出なのでしょうか。。

監督のインタビューではこの点について語られておらず、真相はヤミです。。


(C)2019「おろかもの」制作チーム

 

独断と偏見によるクズ度判定と感想まとめ

高城洋子 (健治の妹):クズ度40%

 兄を尾行し浮気現場を写真に収め、兄の浮気相手・美沙に凸してしまう始末。

 挙句に美沙と一緒になって結婚式を潰そうと企む点や、最終的に結婚式を

 邪魔するのはやっぱり無かったことにしようとするところが「美沙」に対し

 クズっぷりを見せてしまっています。クズ度は少し高めの40%としています。

 兄の浮気相手に会う時点でどうなの・・・

 

深津美沙 (浮気相手):クズ度90%

 浮気することを悪いと自認しておきながら、辞めないと言い切るところ

 婚約者である果歩に直接会いに行くところ

 結婚式に派手なドレスで押しかけてくるところ

 など、浮気相手としてやってはいけないことを全部やってしまってますし、

 浮気を自認してる時点で100%クズなのですが、何となく90%にしました。

 

高城健治 (洋子の兄):クズ度99%

 果歩を裏切り、妹を傷つけ、同僚の助言にも従わず、美沙を振り回す

 そんな健治は救いようがない、本作においては№1のクズ オブ クズです。

 100%にすべきか悩みましたが、結婚式の前に美沙との関係を終わらせた

 という点だけで、1%マイナスして99%のクズ度にしました。

 

榊果歩(健治の婚約者):クズ度20%

 洋子と健治の2人の家族という関係性に突如として割って入ってきたこと。

 被害者なので悪い要素が無いように見えますが、健治の浮気に気が付きながら

 自分は美沙には無いモノを持っていて最終的に自分のもとに帰ってくるんだと

 確信し、浮気を放置している点は美沙を完全に見下している証拠だと思います。

 これらを勘案してクズ度20%としました。

 

小梅 (洋子の同級生):クズ度15%

 好奇心旺盛でカワイイ女の子ですが、汚い言葉を覚えて使いまくるのと、

 若いころから人の不幸が大好きなところでクズ度15%です。

 何となく第二の美沙になりそうな要素を持ってる気がする。

 

倉木宗介(健治の先輩):クズ度 8%

 健治の浮気を辞めさせようとする正義マンです。

 行ってる事は正しいのですが、どこか抜けてるところがあって

 ラストで洋子と美沙が教会から出て行ったシーンで一人だけ拍手をするなど、

 ん?なんでそうなるの?という行動があったのでクズ度8%にしてます。

 

安達真奈美(バーテン):クズ度 5%
 宗介と同じく健治の浮気を咎めます。

 浮気をすると最後は女が傷つくだけなのを知っているのです。

 この人のエピソードはないですが、恐らく自分も経験があるのでしょう。

 5%にしたのは、健治を責めつつ強引にキスをしたところでしょうか。

 嫌がらせのキスなのかと思いますが、真相は闇です。

 

吉岡秀子(洋子の担任):クズ度 2%

 学校教師で洋子担任です。

 悪い人ではなくむしろ良い人なのでしょうが、生徒をまとめきれておらず

 完全に舐められています。

 三者懇談での振る舞いもどこか他人事のような接し方をしており、

 教師としてそれはどうなの?ということでクズ度2%。

 

どうでしょうか。

独断と偏見でクズ度を付けてみました。

クズ度0%の人がいないのは、誰しもどこかでおろかなことをしているわけで、

タイトルの「おろかもの」に合わせてみました。

 

清廉潔白で脛に傷がない人なんて世の中には存在しないのでしょう。

それとリアルでも浮気は叩かれまくる風潮にありますし、その通りなのですが

見方によっては「おろかもの」は当事者だけではないのかもしれないですね。

 

斬新な切り口で浮気というテーマを扱った本作と、

世の中の全ての「おろかもの」に「それでも人生は続く!」ってことで・・・

癒されない傷は引きずって生きるしかない!と思いませんか?

 

ハッピーエンドでも、バッドエンドでもない本作はリアルな世界を表現していて、

素晴らしいと思いました。

 

勧善懲悪ではないこんな映画もありだと思わされましたね。

(C)2017 映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

 

 【勝手にふるえてろ】ネタバレ・考察

 

2017年の映画で今更感がありますが、「勝手にふるえてろ」を鑑賞しましたので、ストーリー含めて考察したいと思います。

 

松岡茉優さんの初主演映画で、前情報を入れずに見ました。完成度が高く各賞を受賞しただけのことはあるなという感じです。松岡茉優さんの代表作と言えるでしょう。

 

それではストーリーの紹介と考察をしていきます。

ネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

 作品情報・キャスト

公開:2017年

上映時間:117min
監督:大九明子

原作:綿矢りさ

 

キャスト

絶滅危惧種のOL江藤良香:松岡茉優

片想い彼氏の一宮(イチ):北村匠海

勝手に彼氏面の霧島(ニ):渡辺大知

口軽で性悪女の月島来留美:石橋杏奈

常に川っぺりにいる釣り人:古舘寛治

オカリナを吹いている隣人:片桐はいり
バスの陽気な編物おばさん:稲川実代子

最寄り駅にいる見守り駅員:前野朋哉

長髪三つ編みコンビニ店員:栁俊太郎

ヨシカの味方!居酒屋店員:山野海

カフェのかわいい金髪店員:趣里

マッサージ店の凄腕整体師:池田鉄洋

 

 あらすじ

OL・江藤良香(通称ヨシカ)は24歳で恋愛経験ゼロ、もちろん処女。

中学時代の初恋相手である一宮(通称イチ)に10年間も片思い中で、勝手に脳内で彼氏にしてしまい妄想恋愛を楽しんでいる超がつくほどのこじらせ女子。

ある飲み会で一緒になった会社の同僚で営業部の霧島(通称ニ)から、ラブホの前で人生初の告白をされる。告白されてテンション爆上げのヨシカだが、ニは好みのタイプではないので素気ない態度を取り、イチとの脳内恋愛に花を咲かせまくるヨシカ。

ヨシカはある日の夜、ストーブの消し忘れでボヤを起こしてしまい「人はいつか死ぬのだから、一目でいいから今のイチに会って前のめりで死にたい」と決意し、転校した同級生の名前を勝手に使って同窓会を主催する。そして、同窓会にてイチとの再会を果たすが__。ヨシカの現実世界はどうなるのか・・・

 

 

どうでしょうか、あらすじだけでもちょっと「お?」ってなりませんか?

何も考えずに見れるんじゃないの?と思ったかもしれませんが、その考え方は要注意です!

 

出典:映画『勝手にふるえてろ』予告編

 

出典:出典:映画『勝手にふるえてろ』本編映像編

 

 ストーリー追っかけ考察:ヨシカの日常1

中学生のころから周りの目を気にして、友達を作ろうとしなかったヨシカ。イチに対して恋心を抱いていたものの、気づかれないように視野の端っこで見る「視野見」という特技を編み出し、イチをずっと見ていたのでした。

 

それから10年間、他の誰かを好きになることもなくイチに片想いし、当時のイチを脳内に召喚して妄想恋愛を楽しむ生活を続けています。

 

絶滅した生物に興味を示し夜な夜なWikipediaを読みふけって、寝るのを忘れて朝になっているなんて日もある始末。挙句に博物館からの払い出しでアンモナイトを購入して愛でるなど、お一人様生活を満喫している日々でした。

 

そんなヨシカは同僚の月島来留美とは普通に会話できる友達です。

他にはアパートの隣人であるオカリナと世間話しますが、イチ以外の男性には全く興味を示さないのでした。

 

ある日、会社の経理部と営業部の間で合コンという名の飲み会が開催され、いやいやながら半強制的に参加させられたヨシカは、営業部のニ(霧島)から猛アタックを受け連絡先を交換してしまう。その後、ニから人生初の告白をされるのでした。

 

告白されてテンション激上げのヨシカですが、それでも頭に浮かんでくる相手はイチであり、妄想恋愛は止まらないのです。

 

 

中々のこじらせですね。友達が少ないとかそういうのは普通のことだと思うんですが、中学生の同窓生と脳内で疑似恋愛するのは、それだけ臆病な性格だということを表しているのだと思います。

 

 ストーリー追っかけ考察:ヨシカの日常2

友達が殆んどいないはずのヨシカですが、以下の人たちとは積極的に交流を持っており陽キャな一面もみせるのでした。

 

常に川っぺりにいる釣り人:毎日の出来事を話す
バスの陽気な編物おばさん:自分の考え方を気軽に話す

最寄り駅にいる見守り駅員:感情を爆発させて表現する

長髪三つ編みコンビニ店員:一方的に話しかけて同意を得る

ヨシカの味方!居酒屋店員:よき理解者、アドバイザー的な

カフェのかわいい金髪店員:自分が思ってる事をとにかくぶつける

マッサージ店の凄腕整体師:一方的に悩みを打ち明ける

 

 

これらのシーンが後になって伏線になってくるのですが、中々ぶっとんだ演技で劇場型演出になっていてテンポの良いストーリー展開になっています。

 

 ストーリー追っかけ考察:ヨシカの日常3

二から告白された夜、電気ストーブを付けたまま寝てしまったヨシカはボヤを起こしてしまい、人間の死が間近にあることを身をもって知ったヨシカは、脳内恋愛で終わらせることなく「今のイチに一目会って前のめりで死にたい」と決意します。

 

イチと会うために海外に転向した同級生の名前を拝借し、SNSに登録して同窓会を主催するのでした。まんまと同窓会を開くことに成功したヨシカは、ニのことなど完全に放置した状態で地元で開催した同窓会でイチとの再会を果たします。

 

イチが東京で仕事をしている事を知ると、居酒屋店員からの「持ってかれる前にお取りなさい」という一言に後押しされて「二の手口」を使い連絡先を交換することに成功し、東京でも集まることになりました。

 

その後、東京にある同級生の家で新年会を行うことになり、普段は絶対に履くことのないヒールをはいて、オシャレをして参加するも元々コミュ障なヨシカは「空気が読めない人」扱いされてしまいます。しかしイチが話しかけてくれて、絶滅した生物の話で盛り上がります。

 

しかしイチが自分のことを「君」と呼んでいる事に気が付き、「人の事、君って呼ぶ人なの?」と聞くと、イチから「ごめん。名前何?」と言われ名前を覚えてもらえていなかったという衝撃の事実を知り、ヨシカは傷つきます。

 

ここで今まで陽キャのような振る舞いで色んな人と楽し気に会話していたのは、全てヨシカの頭の中だけの「憧れの妄想」であり、その人たちの誰一人として名前を知らないということが判明します。

 

結局、ヨシカ自身が世間の中ではボッチであり、自分は誰にも見えていないし、誰も見ようとしていない、まるで透明人間のようであると嘆きます。

こんな自分は子孫を残せない絶滅危惧種と同じだとし、「絶滅すべきでしょうか」とやはり妄想の中で歌にのせて絶叫し、号泣するのでした。

 

 

妄想の中でしか自分は生きていないと言う事に気が付いたわけですが、それは元から分かっていたはずで改めてそれをリアルなイチに会ったことで表面化してしまったという感じですね。自分だけが相手の事を想ってただけで、それは正真正銘の片想いでしかなかったわけです。しかも名前すら覚えてもらえていなかった、というのは「僕を見て」という発言をしているので、ヨシカはイチに対して裏切りを覚えたかもしれません。

 

 ストーリー追っかけ考察:ヨシカの日常4

誰に名前も知らない、相手も自分の事を知らない。という現実を目の当たりにしたヨシカですが、ふと「二」は自分のことを「江藤さん」と読んでいてくれたことに気が付きます。そんな単純なことであっても、その時もヨシカによっては希望の灯に感じたのでしょう、二と付き合うことを決めます。

 

ある日、二とデートしている最中に、唐突に二からキスを迫られてしまい「大絶叫」して逃げ出してしまいます。それでも二に対して向き合おうとしたものの、友達だと思っていた同僚の「来留美」が二に自分の秘密を暴露していたことを知り、懐疑心の塊に戻ってしまいます。

 

結婚願望が強いこと

男性と付き合った経験がないこと

 

これが二に知られてしまっていた、しかも二から「そういうところもピュアでカワイイ」などと言われてしまい、ヨシカは馬鹿にされていると感じて心を凍てつかせてしまいます。

 

そして「私には彼氏が2人いて、1人はイチでもう一人があなた。でもやっぱり一番好きな1人に絞ります。だから、、、さようなら」と言い放って二の前から立ち去ります。

 

来留美に対して裏切られた思いから、体調が悪いと思ったヨシカを気遣ってきた来留美へ「つわり」と嘘をついて、挙句会社には妊娠したとして「産休」を申請するも却下されてしまい、「じゃ辞めます」といって会社を辞めてしまうのです。

 

 

とっさの嘘があまりにも突飛推しもない嘘なので、こじらせまくってんなぁという感じで、あっけにとられるシーンの連続でした。でも、確かに自分の秘密をペラペラとひねった蛇口のように、ダダ漏れにする来留美はどうかと思いますね。

良かれと思ってやったことかもしれませんが、漏らしていい秘密とそうでない部分の区別はすべきですし、明らかに一線を越えています。

 

そしてエンディングへ

二とは会社を辞める時にすれ違ったものの、声をかけられることもありませんでした。あんな感じで振れば当然です。

 

ヨシカは

自分の名前を憶えていないリアルなイチも

友達だと思っていたのにペラペラしゃべってしまう来留美も

優しいようでガサツな事をいう二も

みんなどうでもいい!という感情になり、やはり自分には脳内で妄想し続けてきた10年間片想いのイチしかいないんだと脳内に召喚しようとするものの、イチは現れてくれませんでした。この瞬間「本当の孤独」を悟ったヨシカなのでした。

 

ヨシカはようやく二の存在の大きさを認識し、二からの連絡を待つものの着信は来留美からばかりで二からの連絡はなく、自分から二に連絡しようと電話をするも「着信拒否」のメッセージが流れて大絶叫!!!

 

どうしても二に会いたかったヨシカは、またしても他人を装って会社に連絡し二を自宅へと呼び出しました。

 

二を「リアル召喚」したヨシカは二が自分を知ったキッカケになった「赤い付箋」を胸に付けて二を迎え入れます。二はヨシカの体(妊娠していると思い込んでいる)を心配するも、「妊娠は嘘」と言い放ったヨシカに対して、「倫理観が狂ってるだろ!」と激怒します。

 

ヨシカも「来留美が私の秘密をばらしたのが許せなかった!」と激怒しての大喧嘩に発展。

 

ヨシカは「私の事を愛しているなら、すべて受け入れて」と伝えるが、二は「愛してはいない。好きのレベル。俺はかなりちゃんとヨシカを好き」と伝え、部屋の玄関から外に向かって「俺との子供を作ろうぜ!!!!!」と大絶叫します。

 

それを見たヨシカは「霧島君」と初めて名前で呼び、二の体めがけて激突します。ヨシカが胸に付けていた赤い付箋は、二のシャツに落ちて水を吸って張り付いていきます。ヨシカは早口で「勝手にふるえてろ」とつぶやいて、キスを交わし暗転です。

 

 

え???これで終わり?この先のシーンは??と思いましたが、これでいいのでしょう。最後は脳内召喚ではなくリアル召喚であり、妄想の中の片想いではなく現実に自分を認識してくれている相手なわけです。

 

しかしこじらせていると、それを拒否ったり怖がったりするわけで簡単には行きませんよね。この映画にしても最後はハッピーエンドになってますが、リアルでこんな風になるケースも少ないのではないかと思います。簡単じゃないですよね。。

 

あと、ヨシカが二に激突したシーンは、私には激突したようにしか見えませんでしたが、二の腕に飛び込んだのが正解のようです。。。それにしては勢いありすぎじゃないですかね。

 

タイトル「勝手にふるえてろ」と感想まとめ

まず、暴走ラブコメディと銘打っていますが、個人的にこの映画はラブコメディではないというのが私が最初の感想です。見せ方としてコメディタッチになっている部分はありましたけど、中身はそんなもんじゃないですよ。

 

そしてタイトルの「勝手にふるえてろ」ですが、回収タイミングは一番最後でした。もっと早い段階で出てくるのかな?「ふるえてろ」って何だろうな?と思いつつ観てましたが、最後に出てくるんかい!という感じでした。

 

最後の最後にヨシカがキスする前にポツリと漏らした「勝手にふるえてろ」ですが、これの解釈は難しいなぁと思います。人によって全然違いそうですが、私は過去のヨシカに対して、二に対して塩対応をしてきた自分の存在に対して、自分の名前を憶えていないイチへの想いなど複数があるのかなと思いました。

 

こじらせに関しては共感できる部分と、やりすぎな部分がありましたがそこは見せ方ということで納得できました。何よりヨシカ役松岡茉優さんの演技が演技に見えなかったところが随所にあったので、演技するのにあまり役作りしなかったのでは?とか少し思ったりしました。比較的役に入りやすかったのかなと勝手に思ってます。

 

イチに対する先入観と、何としてもイチに再会するために普通ならありえない嘘をついての同窓会開催とか、そしてその想いがイチ自身の一言で崩れた瞬間、そして二に対する自分勝手な振る舞いなどはまさに「こじらせ女子」そのものだなぁと、自分本位であることの体現だと思いました。

 

何も考えずに見てしまうと大火傷するので注意しないとダメな映画ですね。

満足度はかなり高かったです。

前情報も何もなしで見たので、最初の30分ぐらいは「ん?」って思いましたが、これはかなり良い映画です!

 

まだ観ていない方は是非、既に観たよという方ももう一度~♪

(C)2021 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

 

 【かそけきサンカヨウ】ネタバレ・考察

 

今回は「かそけきサンカヨウ」を見ましたので、ストーリーを紹介しつつ考察したいと思います。正直、かなり難しいというか、わざと?曖昧に演出をされている映画なので初見では理解が追い付かず、追加で1回見直しました。私の理解力不足と言えばそれまでですが。。それではストーリーと考察をしていきます。ネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

 作品情報・キャスト

公開:2021年

上映時間:115min
監督:今泉力哉

原作:窪美澄

 

キャスト

国木田陽:志田彩良

国木田直:井浦新

国木田美子:菊池亜希子

三島佐千代:石田ひかり

清原陸:鈴鹿央士

清原夏紀:西田尚美

清原絹江:梅沢昌代

鈴木沙樹:中井友望

有村みやこ:鎌田らい樹

 

 あらすじ

主人公は高校生の「陽」です。

「陽」は幼いころに母親である「佐千代」が家出し、父親である「直」と二人で暮らしていましたが、ある日、父親が「美子」という女性と再婚したことで連れ子である「ひなた」との4人暮らしが始まりました。

 

そんな突然に起こった新生活に戸惑いながら、その思いを同じ高校の美術部にいる「陸」に打ち明けます。「陽」は「ひなた」を妹のように可愛がりながらも、どこか不安を抱えたまま実の母親である「佐千代」への想いを募らせ、「陸」と一緒に絵描きとして生活している「佐千代」の個展へ「陸」と行く約束をするのであった。

 

「陽」と「陸」が交差し、「陽」と「佐千代」が交差し、「陽」と「直」が交差し、

「陽」と「美子」「ひなた」が交差するという、常に「陽」が関係する人間関係の変化を描いた映画です。

 

それぞれの人物がどのように交差し変化していくのか考察してみました。

※この先、見出し以外で人物に「」は付けません。

 

 「陽」と「陸」

陽と陸は同じ美術部に所属し、放課後も仲良しグループで喫茶店に行くなどよく会話する異性としての関係にあります。

 

陸は心臓に病を抱えており、好きなバスケもできなくなるなど思うようにいかない自分に引け目を感じつつ、陽との関係においても同じように自虐的な考えを持ったまま進行していきます。

 

ある日、陽と陸は佐千代の個展に行きますが、陽は絵を見るとすぐに陸に別れを告げて帰ってしまいます。陸は釈然としないままにその日を終えることになります。この展開は陽目線で見れば理解できるのですが、陸目線だと「はぁ??お前が誘っておいてこれはないだろ!」という感じです。

その後は陽が陸に謝罪して受け入れられ、関係は修復されていきます。

 

一緒に家で食事をしたりする親密な関係となり、ある日の朝、陽に呼び出された陸は陽から好きだと告白されるも「よくわからない」と返事して関係がぎくしゃくします。この年齢であれば当然の状態と言えます。

 

しかし陸は自分の気持ちに素直になれず、自分に対して自虐的であるが故に陽に対しても自分じゃダメだという感情が先立ってしまいます。いわゆる「逆行」ですね。

 

それでも陽は諦めず、自分の誕生日パーティがあるからと陸を手紙で誘いだします。下駄箱に手紙を入れるという超古典的な方法ですが。。このシーンは少しほろ苦さを感じました。

 

陸は誕生日パーティに参加するかどうか迷いつつも、最終的に参加しました。そこで陽に対して今の自分じゃダメだという感情を伝え、だから陽に対しても中途半端な態度を取ってしまったことを告げ、誕生日プレゼントとして陸が書いた陽の絵を送ったのです。

 

それを受け取った陽は「ちょっと来て」といって自分の部屋の壁にその絵を貼り、2人で座ってその絵とサンカヨウの絵、もう一人の絵の3つを眺めたのです。

陸は「いつかサンカヨウを見に行こう」といってエンディングを迎えます。

 

何というかアオハルかよ!と叫びたくなるような展開でした。

甘酸っぱいというか、ほろ苦いというか、ちょっとしたことで壊れてしまいそうな人間関係がそこには間違いなくある!と思いました。
 

この展開になるには、陽と他の登場人物の交差が欠かせないわけですが、それにしてもピュアですなぁ。

 

 「陽」と「佐千代」

陽と産みの親である佐代子の交差です。

陽が意を決して佐代子の個展に出向くわけですが、佐代子は陽に気が付く素振りもなく塩対応で向かえます。幼い時に陽を置いて家出したわけですから、成長した陽を見ても気が付かない事もあるでしょうし、当然と言えば当然かもしれません。

 

しかしそんな冷たい態度が陽の心をザクザクに切り刻み、挙句の果てに陽は佐千代の夫からポストカードを受け取り、そのカードにはサンカヨウの絵が描かれていました。それを見た陽は古典を飛び出し陸を置いて帰ってしまったのです。

 

正直、幼い子供を置いて家出し離婚に至るなど母親としては完全に失格です。

しかもこの後の展開で実は佐代子は陽が個展に来ていたことに気が付いていたことが判明するわけです。その判明の仕方もかなり疑問ではあるのですが。。

 

その後、再び実母である佐代子に会いに行きメールの交換までします。

結局、自分を捨てたとはいえ実母であることに変わりはないという演出をしたのでしょうか。このあたりの陽の心情が、最古の記憶、サンカヨウ、母親の絵といったところからしか読み取れないのもあり、この映画を曖昧にしている大きな要素かと思います。

 

個人的に佐代子の取った行動は直との関係を考えても、やはり理解はできず単なる自分勝手な行動にしか見えないのです。なにせ佐代子には再婚相手との間に小学生の子供がいますからね。。行動と結果が矛盾しています。

 

最終的に陽と佐代子は電話をするほどの関係性になったようで、陽の誕生日パーティには「メール見たよ、ありがとう」という電話をしています。

こんな短期間でそこまでの関係が築けるものなのでしょうか?疑問です。

 

 「陽」と「直」

当初、陽が家事全般をする形で直と二人で生活しており、陽は強制的に大人になることを要求されたわけです。この点は強烈な違和感があり、父親であるならば娘にそこまでの事をさせるなどありえない!というのが個人的な感想です。

 

そんな陽と直の関係ですが、直の身勝手なのは家事と学業をこなしている陽に対していきなり再婚すると告げた点にも見られます。再婚するのは自由かもしれませんし、陽の負担を減らすという意味でも再婚はありなのかもしれませんが、そもそも誰のせいで陽が強制的に家事をさせられているのかを考えると、やはり身勝手だと感じてしまいました。

 

そして決定的な違和感が、陽が実母である佐代子の個展に行った日に実は佐代子が陽のことを認識していたんだとメッセージを受け取っていたと直から告げられたことです。

 

ん?ちょっと待って直は佐代子と繋がってるのか?そして佐代子が陽に対してとった行動も知った上で放置していたということか?

ますますあり得ないし、SNSで家出し離婚した元妻と繋がってるのが理解できませんでした。挙句に「いつでも会いに来てくれていいんだよ」というような趣旨のことを佐代子が言ってることを陽に伝えるわけです。

 

この辺りの展開は地獄かよ!って思ってしまいました。

陽の気持ちを少しは考えているのだろうか。

無理やり大人にさせてしまったのは自分の責任だと言っていますが、それ許されない事だからね。

 

結局、佐代子は絵が描きたいという自分の欲求を貫いたことで、育児放棄したわけです。それを「いつでも会える関係なんだよ」というのは理解できない。本当に理解できなかったです。美談のように描きたかったのかもしれませんが、どこら辺が美談なの?という感じでしかないですね。

 

この父親は完全に失格です。

再婚するときの理由も「お前の負担も減るからな」という他人事のような解決策を伝えていますし、なぜか被害者ぶった演出もあって「無いな」と思った次第です。

 

 「陽」と「美子」「ひなた」

陽と美子、ひなたの交差です。

父親の再婚相手とその連れ子との関係になりますが、ひなたは子供なので妹のような存在として迎え入れることは容易だったのかもしれません。

 

でもひなたはちょっと我儘で癖のある性格をしていて、自分勝手なところが見えます。子供だしそんなもんでしょってことかもしれませんが、演出としては過剰かと思いました。陽の気持ちを考えた時に、そこまでテンション高い子って「ウザくない?」って思ってしまいました。

 

美子との関係は義母ということもあり、最初はよそよそしい感じではあるものの家事を代行してくれる点もあって、一定の距離感で生活はスタートできたようです。

 

陽が実母の個展から帰ってきた日に、ひなたが陽の本を破ってしまったエピソードがありますが、唐突感がありすぎです。しかもその本は実母の絵が描かれた本ということで、これまた破ったタイミングも含めて「やり過ぎ感」がありますね。陽は耐え切れずひなたに激怒し部屋に閉じこもってしまいます。

 

結局、直が間に入って美子、ひなたともに陽と関係を修復します。

破れた本はテープでつなぎ合わせ、美子もひなたも陽に謝罪したのでした。

 

陽が佐代子と再びあった後、陽は美子に「お母さんってよんでいいかな?」と質問します。この言葉に美子は感激し陽をハグしました。

 

産みの親、育ての親、その再婚相手とのエピソードをつなぎ合わせることで、陽が新しい家族を本当に自分の家族として受け入れられるようになった瞬間何だなと思いました。いくつか強引な演出や、人としてどうなのよ!ってのはありましたけどね。

 

 サブタイ「淡く、強く、大人になる」

うーん、全体的にもうちょっと丁寧に描いて欲しかったです。

この父親からは娘に対する愛情が伝わってきません。一見すると娘に対して優しさをアピールしているように見えますが、単に迎合してるだけではないでしょうか。

 

「淡く、強く、大人になる」

というのは強制的に大人であることを求められた結果として、強くあるだけです。

淡くの部分は雨に打たれて透明になっているサンカヨウの花をイメージしたものなのか、陽が佐代子と再会していくことで大人になったとしているのかもしれません。

 

結局、陽が置き去りにされ多という事実は消えないわけで、こんな形で大人になるのは望んでいなかったに違いありません。

 

子供は親を選べません、だからこそ親は子供を育てる責任があると考えます!

育児放棄して強制的に家事をさせ、精神的な我慢を強いた挙句「大人になる」では報われなさすぎだと思いませんか・・・?

 

タイトルのサンカヨウとまとめ

かそけきサンカヨウという映画のタイトルですが、サンカヨウは漢字で「山荷葉」と書きます。水に触れると花びらが透明になる、小さな白い花を咲かせる植物です。

「かそけき」とは淡い、薄いといった意味で使われる形容詞的な単語です。
これはサブタイトルの「淡く、強く、大人になる」とも掛かってます。

 

で陽の最古の記憶は、母親の背中に括られて雨の中で山道をあるきながら「サンカヨウ」について語られていたのです。母親は「サンカヨウの白い花は、朝露や雨を吸うとどんどん透明になっていくんだよ」とまだ乳児の陽に言うのです。

 

陽は背負われているので、サンカヨウなど全く見えてませんけどね。

正直、このシーンはどうして背中にあんな無造作な形で背負っていたのか?と思わざるを得ないほど雑に陽を扱っていました。育児放棄という点をこんな形で見せたかったのかなというのが私の答えです。

 

「かそけき」という言葉も弱さを表現したかったのかなぁと思う反面、義母である美子の逞しさに触れた陽の決心という点では、淡い中にある強さを表現しているのかもしれないと矛盾した考えに帰着しました。

 

作品としてのクオリティは高いなぁという感想ですが、いかんせん両親ともに毒親なのは言うまでもありません。陽が成長したことは美談ではありますが、それは陽自身の努力によるものです。

 

だからこそ、陽と陸には幸せになってほしいですね。

陸も父親がいないも同然の生活をしていますし、母親が祖母に責められるシーンなどは見ていて心がぎゅーってなりましたよ。

 

何故か追い詰められているように見てしまった私はスレすぎなのでしょうか。

もう少しピュアな目線で見なければダメな映画なのかもしれません。

(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
 

大ヒットした前作「アバター」から13年たちましたが、続編となるアバター ウェイ・オブ・ウォーターが昨年末に公開になりました。

最初、個人的には「めっちゃ観たい!」という感じではなかったです。

続編が作られているは知ってましたが、あまりに延期が続いて熱が冷めていたのもあると思います。

とはいえ、前作も好きで劇場でみたので今作も劇場でみることにしました。

ネタバレを含んでいますので、注意して下さい。

 

 あらすじ

 

神秘の星パンドラを舞台にした物語。

元海兵隊員のジェイク(サム・ワーシントン)は先住民ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と結ばれ、子供たちをもうけ、幸せに暮らしていた。

しかし、ジェイクたちは再びパンドラに現れたスカイピープル(人間)たちに森を追われてしまい、海の部族のもとに身を寄せる。だが、その美しい海にも侵略者が接近していた。 (シネマトゥデイより抜粋・引用)

 

またしてもスカイピープルがパンドラに侵攻してくるという展開です。

というか、この展開以外でパンドラでの話をしようと思っても中々難しいよね、という感じではあります。

5部作での完結を考えているということなので、推して計れよという感じでしょうか。

 

 作品情報

 

監督:ジェームズ・キャメロン監督

前作:2009年公開の『アバター』の続編

上映時間:3時間16分

 

続編なので前作を見てから、今作を見たほうが話が入ってくると思います。

13年ぶりになるので、前作を見たけど内容を忘れたという人も前作をおさらいしてから見るべきでしょう。

 

 登場人物

 

キャスト

 

ジェイク・サリー(サム・ワーシントン)

 ナヴィと人間のDNAから作り出した「アバター」に意識を移し、前作でパンドラの一員となった。人間としては下半身不随で歩くことができなかったが、アバターを手にすることで歩き走ることもできるようになった。妻のネイティリと結ばれたことで家族が増え子供たちとともに暮らしている。最愛の家族を守るため再び襲い来るスカイピープル(人間)に立ち向かう。

 

ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)

 ナヴィの狩猟部族、オマティカヤ族の族長の娘で、ジェイクと結ばれ子を授かっている。部族の中でも最強の力を持っており、対人間としての重要な戦力である。

 

ネテヤム(ジェームズ・フラッターズ)

 ジェイクとネイテイリの間に生まれた長男。幼い弟たちを守るために奮闘し一族の次期リーダーとなるために父の指導の下、成長していく。

 

ロアク(ブリテン・ダルトン)

 ジェイクとネイティリの間に生まれた次男。未知なる生物との間で積極的なコミュニケーションをとる一方、情緒面での幼さから他の部族と対立することもある。自分の考え方に強い信念を持っている性格に見える。

 

キリ(シガニー・ウィーバー)

 ジェイクが養子として迎えた少女。元人間である前作でグレース博士のアバターとして存在しており、ナヴィにも人間にもない不思議な力を持っている。

 

トゥク(トリニティ・ジョリー・ブレス)

 ジェイクとネイテイリの間に生まれた末っ子。幼いもののしっかりとサリー家の考えを全うしようとする強い意志を持つ。

 

スパイダー(ジャック・チャンピオン)

 ジェイクの養子だが、人間でありクオリッチ大佐の息子である。人間の姿でありながら、パンドラで生活を続けておりナヴィとしての生活様式に溶け込んでいる。

 

トノワリ(クリフ・カーティス)

 パンドラの島しょ地域に住む海洋民族メトケイナ族の族長。

 

ロナル(ケイト・ウィンスレット)

 トノワリの妻であるが、トノワリよりも部族の中では強い権力を持っているように見える。サリー家を受け入れるのに反対の立場を取るなど、メトケイナ族以外のよそ者に対して否定的な立場を取る。

 

アオヌング(フィリップ・ジョルジョ)

 トノワリ一家の長男。部外者であるサリー家を奇形だとして厳しい視線を向けるも、ある出来事から次第にサリー家をフォローするようになる。

 

ツィレヤ(ベイリー・バス)

 トノワリ一家の長女。メトケイナ族とサリー家をつなぐ重要な存在となっている。

 

クオリッチ大佐(スティーヴン・ラング)

 ジェイクの元上官でありジェイクに対する復讐をパンドラ侵攻の最大の目的としている。前作で命を落としたが、アバターのボディを手に入れ復活した。

 

 IMAXで見るべき?それとも4DX?

アバター ウェイ・オブ・ウォーターは是非とも映画館で見て欲しいタイトルです。

というのもパンドラの映像美を十分に堪能できるのは、やはり劇場だと思うからです。

自宅の50インチ等の大画面で見るのも迫力はあるかと思いますが、劇場には敵いません。

 

では劇場でみるとしてIMAXの3Dがいいのか、4DXで見るべきかですが

個人的にはIMAXの3Dで見るのをオススメします。

迫力ある戦闘シーンなどを臨場感ある4DXで楽しみたいと思っている人もいるかと思いますが、

映像美を楽しむことをメインに考えた場合、4DXでは落ち着いてみることができないのでIMAXで見るべきという判断です。

 

4DXで見るなら2回目以降がよいのではないでしょうか。

全く違った映画になりそうな気がします。

私は長尺な映画であることと、3Dでの映像を楽しみたかったのでIMAXで見ました。

 

 ストーリーの見どころ(映像美)

前作でスカイピープルは鉱石を目的にパンドラにやってきましたが、撃退され一部の人を除いて大半は地球へ帰還しました。

そんな人類が再びパンドラに侵攻を開始したのですが、今回の目的は鉱石ではなく完全な移住です。平和的な移住ではなく侵略してナヴィを根絶やしにして乗っ取るのが目的となっています。

 

森林を焼き払い人類が移住できるように、大きな要塞を着々と建設していきます。その傍らでクオリッチ大佐はアバターの体を手に入れて、裏切り者であるジェイクとその家族を皆殺しにすべく動き出します。完全な私怨ですけどね。。

 

スカイピープルが侵略してきたことで、ジェイクは家族の安全が第一だということでネイティリの反対を押し切ってトルーク・マクトを譲り、部族から離脱して新天地を求め旅立ちます。

 

ジェイク達は海洋民族メトケイナ族を訪れて、仲間に入れてもらえるように頼みます。しかし、ジェイク達とメトケイナ族は肌の色も違えば生活様式も全く違う民族同士であったことから、素直には受け入れてもらえません。

しかし元は人間であったジェイクがナヴィとして転生していることを根拠として、メトケイナ族への適応力を族長に認めさせたのです。

 

メトケイナ族との生活にあたっては、海での身のこなしが必要になることから泳ぎ方、潜水の方法、イルと呼ばれる生き物の操縦の仕方など教わりながら徐々に生活に慣れていこうとします。

しかしいくら身体能力が高くても簡単に海での生活を身に着けることは難しく、その過程においてメトケイナ族とのイザコザは絶えませんでした。

 

クジラのような大型の生物とのエピソードや、神聖な場所である「魂の木」へのアクセスなど海の美しさを楽しむためのエピソードと言えるのではないでしょうか。本当に綺麗に描かれているので、臨場感と合わせてIMAXで楽しめました。

 

 ストーリーの見どころ(迫力の戦闘)

美しい映像とは別でストーリーが進んでいくと、対人間との戦闘シーンが増えていきます。問答無用で重火器を使った攻撃を仕掛ける人間に対して、身体能力の高さで応戦するナヴィの戦闘シーンは前作でもほれぼれしましたが、今作でも見どころは十分です。

 

ストーリーとしてはキャメロンらしいというか、「何でそうなるの!」「またかよ!」というツッコミを入れたくなるような展開が続きますし、驚きの展開!のようなひねりは殆んどありません。むしろ多分こうなるよね?という想像ができる展開が待っていますので、そこはご都合主義でもありお約束として目をつぶるべきです。

でないと本気になって物語を見てしまうと、ツッコミどころが多すぎて楽しめなくなってしまいます。

 

前作の戦闘は森の中で空中戦がメインでしたが、今回は海なので水中を含めた戦闘がメインになります。そういう点でも、前作にはない迫力を楽しめます。クジラに似たトゥクルンという生物がキーになるので、そこも注目してみて下さい。

 

ただ戦闘の根本はクオリッチ大佐によるジェイクへの私怨が根本にあるので、部族全員で戦うぞ~!っていうよりは、ジェイク一家がいかに奮闘するかという点に焦点が当てられています。

そしてその中での家族愛も重要なポイントとして描かれているのも、見逃せないところでしょう。

 

心は殆んどナヴィになっているスパイダーが父親であるクオリッチ大佐を救出するシーンなどは、僅かではあるものの家族愛を見た気がしました。

 

 全体の感想

前作同様、3時間以上の長尺映画でしたが今作は前作程の疲れはなく、3時間という時間を感じさせない展開でした。

少し間延びする時間帯はありましたが、それほど気にはなりませんでしたね。

それぐらいテンポよく話は進んでいましたし、何より映像の綺麗さがいろんな角度から見せてくれていたので、飽きはなかったです。この点は非常に評価が分かれるところかもしれませんが、個人的にはそこまでを期待していなかった分だけ見終わったあとの満足感は高かったです。

 

但し「5部作での完結を考えている」ということから、次も結局は助かった「クオリッチ大佐」が絡んでくるんだろうなと、次回作の内容を想像しちゃう終わり方ではありました。

 

コロナなどで公開が遅れたのはありますが、もう少し間隔を詰めて公開できればよかったかなぁと思いました。

三作目の撮影は殆んど終わっているということなので、次の公開までの時間は短くなりそうではあります。

 

あれこれと書きましたが、物語の核心部分にはあまり触れていません。

というのも、物語としてそこまで語るほど内容が濃いわけではないので、そこは自分自身で確認したほうが良いと思ったからです。

 

是非、劇場で「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」を楽しんでみて下さい。

 

私が気が付いていない伏線などもあるかもしれませんので、「こんなところが良かったよ」などあればコメント貰えると嬉しいです。それでは!

(c) 東野圭吾/文藝春秋・テレビ朝日
 

原作は東野圭吾さんです。 映画化もされていますが、今回はドラマ版(2010年)を拝見しましたので考察したいと思います。

 ネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

 登場人物

 

・杉田平介(佐々木蔵之介)電機メーカーに勤務するサラリーマン 

・妻・直子(石田ひかり)専業主婦 

・娘・藻奈美(志田未来)16歳の高校生

 ・相馬春樹(竜星涼)藻奈美の彼氏 

 

志田未来さん若いです。 今もまだまだ若いですが、このころの志田未来さんはびっくりするほど若々しいですね。 

今から13年も前の作品なので当然と言えばその通りではありますが。。

演技も素晴らしいです。

 

 あらすじ

 

物語は夫婦と娘の3人家族の日常から始まります。 妻(直子)と娘(藻奈美)が実家の長野県にバスで帰省するところからストーリーは始まります。 

そしてその二人が乗ったバスが運転手の居眠り運転により転落事故を起こしてしまい、多数の死傷者を出してしまいます。 

直子が娘の藻奈美をかばうようにして藻奈美は一命をとりとめますが、直子は病院へ搬送されたあと 夫である平介に別れを告げて亡くなってしまいます。 

 

しかし藻奈美が目を覚ますと、その人格は直子になっていました。 

直子と平介しか知らない二人の【秘密】を言い当てるなど、平介も直子だと信じるしかない状況になります。 

藻奈美の人格は消えてしまい、見た目は藻奈美ですが中身は直子というややこしい状態が出来上がり、そのことは平介と直子だけの【秘密】として生活をすることになります。

 

 藻奈美として生きる直子の日常

 

藻奈美の体で心な直子という状態での日常が始まります。 

会話の内容が高校生とは思えない大人びた口調になっているので、周囲からは不審がられます。 

そこは徹底して演技しようよと思いましたが、逆に直子の口調を大げさなぐらい前面に出すことによって、ラストに続く展開をよりインパクトのあるものにしたいのかと思いました。 

 

兎に角、高校生なので学校に通わなければならず専業主婦を長くやってきた直子にとっては、かなり厳しかったのではないかと想像します。 

しかしもともと地頭のよく学力のあった藻奈美の頭脳を使って勉強をしているので、 

直子自身では解くことにできないような問題もスラスラ解けてしまう事に戸惑いながらも、藻奈美が戻ってきた時を想定して勉強に励むのでした。

 

 高校生としての恋愛

 

藻奈美は転落事故に遭う前から、同じ高校の男子生徒・相馬春樹と付き合っていました。 

当然、直子も藻奈美として生活するので、相馬春樹ともかかわりを持っていくのですが 自分は平介の妻であるという事実がありつつも徐々にその春樹の事を好きになってしまうのです。 

 

物語としては、バス転落事故の真相解明という形で進んでいくのですが 平介の娘である藻奈美として生きようと決意する直子に対して、平介は娘を直子としてしか接することができないという葛藤が繰り返されていきます。 

 

中でも直子が平介に内緒で春樹と密会を繰り返し行っていることに平介は激怒し、 

関わりを持つなと指示をし挙句に直子の部屋に盗聴器を仕掛けて、【秘密】の会話を聞いたりしてしまいます。 

春樹が「どうして藻奈美と話をしたらダメなんだ!」という主張に対して、 

平介の「藻奈美は同じ世界で生きてはいないんだ!」というセリフは非常に心に刺さるものがありました。 

 

結局、春樹はアメリカへ留学となるのですがプレゼントは渡せず、直子の恋心をしたためた手紙も渡す事は出来ませんでした。

 

 違和感

 

この段階で違和感がありました。 

普通、人格が入れ替わる【憑依】があったとすれば、夫婦間において取り決めをするはずです。 

何せ専業主婦が女子高生として生活をするのですから、どのように振る舞わなければならないか 恋愛事情なども想定するのは当然ことです。そのあたりの話し合いがなされてないままに、ストーリーが進んでいくのは違和感満載です。

 

話し合いになるのかなというシーンがあっても、ただの口喧嘩のようになり建設的な議論はなされないままでした。 

その上でいろんなイベントがあればよりリアリティが出たのではないかと思います。 

映画ではなくドラマなので、そのあたりを説明する回があって欲しかったです。 

 

ストーリーとして運転手がどうして事故を起こしてしまったのか、という点にフォーカスされ真相が見えてきたのは良かったかと思うのですが、もっとしっかり二人の間で考え方の共有をすべきでした。 

しっかりと話し合いがされないままに進めば「そりゃそうなるよね」という展開だったからです。 

 

若い体を手に入れて高校生活をすれば、いくら夫がいたとしても彼氏の存在に傾くのは、人間としてある程度は致し方ない部分もあるからです。 

とはいえ、ラストに繋がる直子の行動は正直理解できないものがありますので、 

その点はこのあとで考察したいと思います。

 

 藻奈美が戻ってきた?!

 

平介と直子の関係は崩壊寸前のところまで行きました。 

直子は平介との関係を修復すべく、心だけでなく肉体的にも一緒にならなければダメだと言い高校生の藻奈美と平介が肉体関係を結ぶ寸前まで行きました。 

が、さすがにダメだろうということで平介が思いとどまったのです。 

 

そして平介も覚悟を決めたのか、今までは直子直子と呼んでいたにも関わらず 

その日の夜は初めて「藻奈美」「藻奈美」と呼んだのです。 

つまりもう直子として認知してはいけないという平介の覚悟です。 

 

その翌朝、平介が起きてくると庭に座り込んでいる直子がいますが、どうも様子が変です。 

平介のことを「平ちゃん」ではなく「お父さん」と普通に呼び、しかも素振りが 

直子ではなく藻奈美そのものになっているのです。 

 

そこで平介は藻奈美の人格が戻ってきたと察し、記憶が消えてしまっている藻奈美に対して転落事故があってからのことを全て話したのです。 

ここから藻奈美と直子の人格がちょいちょい入れ替わって物語はラストへと進んでいきます。

 

 藻奈美?直子?ラストの是非!?

 

平介は直子と藻奈美が入れ替わって出てくる生活がずっと続けばよいと考えていましたが、直子でいられる時間がどんどん短くなっていくのです。 

 

「今日はお母さん出てこないよ、自分の体だからわかるの」という藻奈美の発言。 

逆に直子の時には「私の時間はどんどん短くなる。自分の事だからわかる」と言ってます。殆んど同じような発言をしているのです。 

 

そして藻奈美が「明日デートしたい」と言い出すのです。 

デートで最後に向かった先は「山下公園」でした。 

そうです、山下公園は直子が平介とデートした思い出の場所でもあったのですが、その場所を選んだのです。 

山下公園を選んだのは「お母さんの手紙に書いてあったから」と藻奈美は発言しています。そしてその日、デートの最後に「直子」の人格が表れて平介に「今日が最後」といって別れを告げます。 

その後は藻奈美しか現れることがなく直子は消えてしまったのだと平介は悟ったのです。 

 

そこから8年が経過し、藻奈美は結婚することになりました。 

ひょんなことから平介は藻奈美が結婚指輪を作るのに、平介が直子に渡した指輪をベースにして作った という話を耳にしたのです。 

平介が直子に渡した指輪は人形の中に隠しており、そのことは平介と直子だけの秘密でした。 それを藻奈美が結婚指輪にしたわけです。 

どうして二人だけの【秘密】を藻奈美が知っているのでしょうか。 

 

手紙にでも書き残されていたのか?と推測はできますが、本当にそうでしょうか? 

平介にとっても直子にとっても大事な指輪でした。 

その指輪を結婚指輪として藻奈美が新しく作り直すというのは、平介に相談があってしかるべき重大事項です。 

そのことを平介に黙ったまま【秘密】で行ったと言う事は、藻奈美ではなく直子の人格によるものと言わざるを得ません。 

 

そして藻奈美はバス転落事故の加害者ともいうべき運転手の義理の息子と結婚するわけですが、もはやこれは地獄ではないでしょうか。 

 

最後に平介が「幸せになれよ。藻奈美」といって藻奈美の背中を押します。 

本当は心の中で「直子」と思っていたことでしょう。 

でもそれを口に出せないことの切なさを想像すると、フィクションとはいえ苦しくなってしまいます。 

 

物語としてはここで終わりなのですが、果たしてハッピーエンドと言えるのか、 

個人的にはかなりのバッドエンドだと思ってます。

 

 平介は三度妻を失った

 

【秘密】の中で平介は自分の妻である直子を三度亡くしています。 

 

一度目は、バス転落事故による死亡と葬儀をすましたこと 

二度目は、山下公園で直子の人格が最後だと通告されたこと 

三度目は、直子の人格であると分かっている状態で、藻奈美として第三者と結婚したこと

 

どうでしょうか。 

自分なら耐えられません。

 

直子はきっと平介が「藻奈美」と呼んだ夜に、記憶が戻ったことにして藻奈美として 

生きることが平介にとって最善であると考えたのかもしれません。 

そこで演技を始めたんだと思います。 

 

少しずつ直子の時間を少なくして藻奈美の時間を増やしていけば、直子が消滅しても不自然ではないと平介に思わせることができるからです。 

しかし最後の詰めとして指輪の下りは失敗だというしかないでしょう。 

平介にしっかりと相談して決めておくべきでした。 

 

それをしなかったがために、平介は「藻奈美」ではなく「直子」だと分かっていることを「藻奈美」に伝えないままに結婚式で送り出すという悲劇が生まれたのです。 

 

「今まで長い間お世話になりました」という藻奈美の言葉には、

裏切りという【秘密】が込められていたのです。

 

感想

 

作品としては素晴らしかったです。 

特に志田未来さんの演技には驚かされっぱなしでした。 

高校生と専業主婦の役をここまで見事に演じ切っているのは正直ありえないほどです。演技という面では文句のつけようがないのです。 

 

【秘密】という部分については、いろんなところに散りばめられていましたが、 

最後の指輪は【秘密】ではなく【裏切り】でしかないと思います。 

 

何もなくただ単に結婚して終わりじゃ面白くもない。 

というものあるでしょうが、後味の悪い終わり方なのは間違いありません。 

どんな気持ちで夫以外の男を好きになり、結婚にまで至ったのか 

しかも義理とはいえ転落事故の加害者の親族との結婚というのは、ちょっと理解できません。

 

何だか消化不良です。。。しばらく後を引きそうです。