本来、行列に並んでまで何かを買いたいと思うタイプではない。かつて、音楽会や演劇舞台のチケット取りのためにならよく並んだものだが。
しかし、好奇心というものが勝つときもある。「ここの“何”が、人々を行列させるのか?」自分の身をもって経験して、しかと確かめたくなるのである。
昨日は今年初面会のO氏と有楽町でランチとなった。が、行こうとしていた明治安田生命ビル内の豆腐料理レストランはなんと3日前に閉店してしまっていて、扉には「苦渋の選択・・・」の貼り紙。オーナーと長年の友人であるO氏、何も知らなかった、とショックの余り言葉も出ず。
「先日も、とあるビル9階にある取引先の船会社に行ったら、1階から8階までに入っていた会社がひとつ残らず撤退して空っぽになっていたんですよ。これもショックでした」と。不況不況と世間が騒ぎ過ぎなのではなく、本当にかなりやばい状態、ということか・・と怖ろしくなった。
結局、氏行きつけの漁師料理屋へ。なかなかディープである。その後昭和を思わせる喫茶店で珈琲を飲みながら、今後のプランについて意見交換。
さて帰ろう、としたときに、某有名ドーナツ店が目に入った。いつも行列しているが、このときは「15分待ち」の表示。かつて様々なトレンドや流行を世に送り出していたO氏、やはりいくつになっても流行りものを見過ごすことはできないようだ。話のネタに、並んでみますか。ということになり、列の最後にくっついた。
来た来た、噂に聞いていた「並んでいる人にひとつプレゼント」。それでは、とあたたかいそれをぱくっ、・・・
「・・・・」
「・・・・」
「甘過ぎですね」
「ド甘いですね」
「・・・・・。」「・・・・・。」
口の中にいつまでも残る、砂糖の重たい存在感。指の先までお砂糖が浸透していくような気がしてきて焦る。このまま列から抜けてしまいたい衝動にかられたが、それでは食い逃げ?いや、犯罪にはならないが、善良な日本の民はそういうことはできないのだ。
先日だって、とある美術館のお金が戻る荷物ロッカーにて他人様が取り忘れた100円玉を発見し、一瞬目がキラリンとしてしまったものの、ポケットには入れずそのまま受付に届けたというバカ正直者。幼い頃愛読した「ベットタイムストーリーズ」シリーズの影響か?いつもこうなんである。そのロッカーの番号まで告げたのに、受付嬢メモも取らずオートマティック笑顔で受け取った。「ありがとうございます!」
・・いや貴女に差し上げたワケではないのよ・・・、一抹寂しい風が心に吹きすぎたのであった。
はっ脱線脱線。そう、善良な我々はそのまま列に並び続けた。しかもひとつだけ買うなどということはできない小心者だ。「ここまで並んだのだから」というさもしい根性か、「ひとつだけでは申し訳ない」という日本的お義理感覚か(ひとつタダでいただいちゃってるからなぁ)、はたまた「ひとつだけ買うなんて恥ずかしい」という没落貴族的体裁維持なのか(誰に対してなのか意味不明)。
結局、なるべく甘さが少なそうなものを3つ選んで購入。おひとついかが、と氏に勧めるも「僕はいらない」と拒絶され、3つとも持って帰る。
当日、翌朝と濃い珈琲を淹れてがんばってみたが、やはり半分も食せず、私の味覚にはちょいと合わないようであった・・・。人の好みはそれぞれ、であるからして・・・ごめんなさいm(_ _ )m